エネルギーの未来を拓くカギは『柔軟性』にあり
2017/09/04
蓄電池だけではない
柔軟性の確保手段
日本ではVRE増加の対処法として蓄電池しか考えられない人が多過ぎる。そういう方々に限って、蓄電池は高くてペイしないと言い、短絡的に出力制限を主張する。
柔軟性確保の手段は多岐にわたる。コスト論から言うと、2年前のIEA(国際エネルギー機関)レポートで示されたように、先進国でVREを30%まで入れるのは大きな投資なしに可能というのが常識である。送電線を使った電力の地域間やり取りや既存の大型揚水発電所の利用、デマンドレスポンスに代表される需給管理などである。これらもすべて柔軟性の方策となる。
より広く先進的な柔軟性
『セクターカップリング』
今、ヨーロッパで盛んに議論されている柔軟性は、『セクターカップリング』である。この言葉もインターソーラーで何度も聞かせられることになった。
ご存知のように、最終的にエネルギーは、電気だけでなく熱や交通として使われる。この3つのセクター間でエネルギーを融通しようというのがこのセクターカップリングである。
例えば、風力発電の電気が余った時、蓄電池に貯めるのではなく、温水などの熱に変えて使ったり貯蔵したりすることが「電気⇒熱」のカップリングとなる。電熱線で水を沸かすという単純なものからヒートポンプを使った方法もあり、後者はデンマークで実用化されているのを視察した。
一方、「電気⇒交通」はどうかといえば、EVの急拡大が思い浮かぶはずである。フランスでは2040年までにガソリン、ディーゼル車禁止を打ち出した。ドイツ、オランダなどの国々もEVにシフトする方針を打ち出し始めた。ブルームバーグニューエナジーファイナンスの最新の調査では、2040年にはハイブリッドを含むEV車が新車の半分を超えるとしている。一方で、EV(Vehicle・自動車)だけではなくEM(Mobility・移動手段)としてとらえる向きも多く、ドイツでは電気自転車の普及も進んでいる。
強調しておきたいのは、柔軟性もセクターカップリングもいずれもビジネスになるということである。過去の成功体験だけに捉われていると有望なチャンスを失うことになる。
北村和也 Kazuya Kitamura
エネルギージャーナリスト。日本再生可能エネルギー総合研究所(JRRI)代表。エネルギーの存在意義/平等性/平和性という3つのエネルギー理念に基づき、再エネ技術、制度やデータなど最新情報の収集や評価などを行う。
HP:日本再生可能エネルギー総合研究所
『SOLAR JOURNAL』vol.22より転載