2040年、CO2排出車の販売が終わる!? 米国の覚悟
2017/10/11
今年3月には風力と太陽光発電が米国総発電量の10%以上を充たすという快挙を遂げた米国。化石燃料支持のトランプ政権下でも、確実に再エネへの転換は行われている。そのカギを握るのは、連邦政府ではなく州政府だという。
連邦政府による100%転換への提案
今年4月、ジェフ・マーケリー上院議員は、「米国を2050年までに再生可能エネルギー(再エネ)100%」に転換するための「2050までに100 (100by’50)」という法案を提出した。マーケリー上院議員によると、2050年までに再エネ100%を実現することは可能であり、今必要なのは政治的意志である。
「100 by’50」法案は、米国を2050年までに化石燃料から100%クリーンな再エネに転換するためのロードマップであり、既存のテクノロジーと今後の投資をもとに、長期ビジョンを経済的に可能にする政策・規制を整えることになる。この法案は2050年までに100%を達成するために、7つの要点を含む。
「100 by’50」 法案 7つの要点はこちら
2040年時点でCO2排出車の販売ゼロに
提案されている再エネ100%への段階的な転換は、2022年の総電力発電量に占める化石燃料発電の最高許容比率が70%、その後毎年比率が2.5%ずつ下がり、2050年に0%になるようになっている。この時点で、全ての電力会社は化石燃料で発電した電力を販売することができないようになる。さらに、CO2排出ゼロ自動車100%への段階的な転換は、2030年の総新車販売に占めるCO2排出ゼロ自動車の最低比率が50%、その後毎年比率が5%ずつ上がり、2040年に100%になるようになっている。つまり、この時点で自動車メーカーはCO2排出ゼロ自動車のみを販売することになる。
独自の政策で州政府が引率
「100 by’50」は、化石燃料から太陽光、風、地熱などの再エネによるクリーンなエネルギー資源へ転換する新たな「国家目標」と掲げられているが、今まで米国では気候変動対策や再エネ導入政策は、連邦政策ではなく、州政府が率先してきた。実際、再生可能エネルギー・ポートフォリオ基準(RPS:renewable portfolio standard)法やネットメータリング制度などは州レベルで設定され、実施されている。
連邦政府が今まで再エネ導入に無関心だったというわけではない。過去に何度も連邦レベルのRPS法案は国会で上がった。オバマ政権下でも 低炭素化国家を目指す「クリーンパワー計画(Clean Power Plan)」が考案されたが、どれも国会を通らなかった。
これは米国の統治の仕組みを反映していて、各州は独自に法律を制定・施行し、概して連邦政府や他の州の介入を受けずに業務を実施する権限を有する。
既に29州が独自のRPSを設定しており、ハワイ州は「2045年までに100%」という連邦政府より積極的な目標を掲げている。
カリフォルニア州やバーモント州なども連邦政府よりも再エネ拡大の加速化に意欲的である。実際、6月に米トランプ大統領が気候変動枠組条約「パリ協定」からの離脱方針を表明した時、カリフォルニア州、ニューヨーク州、ワシントン州を含む全米9州知事は 、州レベルでパリ協定遵守を公約し、「United States Climate Alliance(米国気候連盟)」を設立した。さらに、ハワイ州は、パリ協定を州として履行を目指す州法も成立した。このように州政府が迅速、かつ積極的に気候変動対策を行っているので、連邦レベルの法案である「100 by’50」が国会で可決されるチャンスは低いと言われている。
州、連邦政府主導にかかわらず、米国の2050年のエネルギー像は一体どうなっているだろうか?
国立再生可能エネルギー研究所(NREL:The National Renewable Energy Laboratory)によると、既存のテクノロジーで、2050年の電力需要の80%を再エネで満たすことが「実行可能」、となっている。さらに、50%は変動性のある風力と太陽光発電で満たすことができるとも研究結果が出ている。
ちなみに、80%の電力を賄うためには880〜1040 GWの再ネ設置容量が必要で、うち風力は390〜560 GW 、太陽光発電は280〜440 GWとなっている。
文/モベヤン・ジュンコ
※『SOLAR JOURNAL vol.22』より転載