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太陽電池モジュールを巡る、米国における”貿易摩擦”と”輸入制限”

太陽電池モジュールを巡る"貿易摩擦"が深刻化している。ソーラー事業は国外との取引きが多く、それによって事業が大きく左右されるが、今回は特に日本と関わりの深いアメリカでの貿易摩擦について考察する。資源総合システムの貝塚泉氏が、世界の再エネ情勢を読み解くコラム第1回(前編)。

太陽電池を巡る貿易摩擦

2017年の世界における太陽光発電システムの新設導入量は前年比約31%増の98GWであり、100GW目前となったが、2018年は中国での5.31問題(2018年5月31日に公布された太陽光発電の導入抑制策)と一部の地域における貿易摩擦の影響により前年よりも縮小する可能性がある。

図に示すように、太陽電池を巡る貿易摩擦がさまざまな地域で生じている。

太陽電池を巡る貿易摩擦の概況
出典:株式会社資源総合システム「太陽光発電海外市場レポート 2018年版」(2018年9月)

米国における貿易摩擦

米国通商法201条に基づく太陽電池
セル・モジュールへのセーフガード措置

米国では2018年2月7日に太陽電池セル・モジュールへのセーフガード措置が発動された。太陽電池セル・モジュールに初年度30%のセーフガード・タリフ(関税)が適用される。期間は4年間、主な太陽電池生産国が対象である。太陽電池セルの輸入には2.5GW/年の免除枠がある。この措置により、太陽電池モジュールの価格が上昇するために米国における地上設置型プロジェクトのコスト高につながるとの予測が出ている。

ただし、トルコをはじめとした対象外の生産国での製造により関税を回避する動きもあり、米国に生産拠点を構築して関税を回避しようとする動きも続いているために影響は短期的とみられる。

韓・Hanwha Q CELLSは、ジョージア州に生産能力1.6GW/年以上の太陽電池モジュール工場を設立する計画、中・JinkoSolarは2018年第4四半期までにフロリダ州の太陽電池モジュール工場(生産能力600MW/年)の稼働を開始する計画である。韓・LG Electronicsは、アラバマ州に生産能力500MW/年の太陽電池モジュール工場を設立する計画を発表している。

なお、同措置を巡っては世界貿易機関(WTO)を通じ、これまでに韓国、台湾、中国、EU、シンガポール、日本、フィリピン、マレーシア、ベトナムが米国との二国間協議を実施している。また二国間協議で紛争解決に至らなかった韓国政府はWTOに対し、紛争解決パネルの設置を要請している。米国通商代表部(USTR)は、対象外となる要件を発表しており、米・SunPower CorporationのIBC太陽電池セル・モジュールは同年9月19日より同措置の適用が除外された。

米通商法301条に基づく
米中貿易摩擦

2018年3月にトランプ大統領は、中国の知的財産権侵害を理由として、米通商法301条に基づく制裁措置発動を決定した。これに反発した中国が報復措置を発動すると、米国は追加の制裁措置発動を決定、貿易摩擦が深刻化している。措置の対象品目に太陽電池セル・モジュールやインバータなどが含まれているが、中国から米国への太陽電池セル・モジュールの輸出量は減少しており、影響はさほど大きくない見通しである。

インバータに関しては、中・Huawei Technologiesをはじめとした中国系企業への影響がある。中国に大規模な生産拠点を持つ米・Enphase Energyや米・SolarEdge Technologiesが影響を受けるとの報道もあったが、既に生産拠点をメキシコや東欧に移し、対策がとられている。

米通商法301条に基づく米中貿易摩擦
出典:株式会社資源総合システム「太陽光発電海外市場レポート 2018年版」(2018年9月)

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