地域活性化を前進させる! 情報リンクと企業サポートの重要性(前編)
2019/06/06
エネルギーの地産地消と地域活性化を加速させるには、「地域・自治体新電力」「地域発電事業者」「自治体」が協力することが重要だ。今回は、その中でも鍵を握る「情報リンクと企業のサポート」に着目する。エネルギージャーナリストの北村和也氏が、地域電力の本質を解くコラム第6回(前編)。
自治体、地域発電事業者、地域新電力・自治体新電力などの連携で地域活性化を目指す『地域活性エネルギーリンク協議会』を特集する2回目のコラムとなる。
前回のおさらい
地域活性化を目指す立場から見たエネルギーの地産地消の考え方について前回はまとめた。
結論を繰り返すと、「エネルギーの地産地消は、ただその地域に発電所が存在し、その地域の名前を冠した新電力が電気を売っていれば達成できるものではない。発電事業と新電力事業を行う事業体の資本構成が地元主体であることで初めてその付加価値が地元に残り、地産地消を謳うことができる」というものであった。地域活性エネルギーリンク協議会は、その観点から地域の資本を中心とする発電事業者や地域新電力のみを集めている。
そして、地域内での経済循環を達成するために、地域の中のメンバー間での連携を重視している。すでに市町村単位の自治体新電力が県とのコラボを始めたり、地域発電事業者が自治体と協議して地元に新たに新電力を立ち上げたりという動きなどが見られ、協議会ではそのサポートを進めている。
さらに、横浜市と東北の12市町村が「再エネ融通の連携協定」を結んだように、再エネ電力を求めて、今後、地域間のリンクが盛んになるのは必然である。当協議会には、横浜市と協定を結んだ岩手県久慈市が参加し、他の連携自治体も参加検討が進んでいる。
図:地域活性エネルギーリンク協議会がサポートする2つのリンク(連携)の実現
カギを握る
情報のリンク(連携)
地域内と地域間の連携を模式化した前図の中に、エネルギー以外の要素をあえて加えているのに気づかれただろうか。地域間リンクを示す右部分にある青い矢印である。黄色のエネルギーの流れと並ぶこの矢印は、「情報」を意味する。
協議会に参加する地域エネルギー分野の多くのメンバーは、新電力を中心とし設立から余り経たない若い会社である。近年になって電力自由化が進んだ日本では当然のことであろう。これらのメンバーは、ある種、暗中模索で事業を進める一方、新しい電力マーケットの設立など制度自体が流動的なため対応に慣れない面も多い。
協議会では、情報の収集と適切な分析、判断材料の提供などのサポートも役割と考えている。
一方、それぞれの地域エネルギー会社の事業期間はまだ短いとはいえ、新しい取り組みも決して少なくない。協会内の地域のメンバーの活動をさらっていくと、太陽光以外の小水力や木質バイオマスなどの発電事業や新電力ではユニークな料金プランなどがザクザクと引っかかってくる。
ところがインターネットにあふれる情報は実は玉石混交で、その中で役に立つものをどうピックアップできるかが勝負である。仮にうまくいっているものに行き当たっても、それをどうやって成功させたかには「企業秘密」の壁が立ちはだかる。より重要なのは、成功例より失敗例と語る人も多いが、こちらも表(おもて)に出てきにくいのが世の常である。
当協議会メンバーの活動エリアは、東京など大都市の新電力と違い、それぞれの地域の中だけというケースがほとんどである。その結果、他地域の会員を競争相手として警戒をする必要がない。成功事例をお互いに教えあったり、課題やその解決策を共に探ったりの余裕があり、協議会としては積極的に情報交換の場を作る努力を行っている。
プロフィール
エネルギージャーナリスト
日本再生可能エネルギー総合研究所(JRRI)代表
北村和也
エネルギーの存在意義/平等性/平和性という3つのエネルギー理念に基づき、再エネ技術、制度やデータなど最新情報の収集や評価などを行う。
日本再生可能エネルギー総合研究所公式ホームページ