ポストFIT時代の太陽光発電ビジネスとは? 2019年は転換期に
2019/07/18
国のロードマップには、2020年度末までに「FIT制度の抜本的な見直し」を行うことが記されている。2019年度、いよいよそのための議論が始まる。FIT終焉への道筋が描かれることになるだろう。
まもなくやってくる
「ポストFIT時代」
FITがすぐになくなることはないが、フェードアウトに向けて法整備は着実に進んでいく。FIT価格の下落は、そのための規定路線でもある。しかし、それはもちろん太陽光発電の収束を意味するものではない。FITという補助輪が外され、自立した電源として独り立ちの日を迎えるのだ。
政府も、第5次エネルギー基本計画において、「再生可能エネルギーの主力電源化」を打ち出している。世界的な脱炭素化の流れの中で、再エネはますます重要な存在になっていくだろう。この流れは、誰にも止められない。太陽光発電は再エネの主軸として、成長していかなければならないのだ。
卒FITビジネスは、ポストFIT時代に向けた試金石になるだろう。その先には、初めからFITに頼らない成熟した太陽光発電ビジネスがあるはずだ。既に、その萌芽は生まれつつある。ビジネスチャンスは、果てしなく広がっている。
需給一体型モデルで
FITからの自立を!
FITからの自立モデルには様々なタイプがあるが、その筆頭に挙げられるのは「需給一体型モデル」だ。そこには、再生可能エネルギーによる電力供給と、それを使う需要側を一体的に考えていく発想がある。
自家消費もその1つだが、需給一体型モデルは、それだけに留まらない。例えば、より広範なエネルギーの地産地消。地域の特性に合わせた再生可能エネルギーで電力を生み出し、地域の農業施設でその電力を使うといった「地域内消費モデル」も考えられる。そこで生まれるメリットは、たんに電気代を削減するということではなく、地域の活性化にも結びつくものとなるだろう。
また分散型電源である太陽光発電の特性は、地域のエネルギー安定供給にも貢献する。広域電力系統から独立した地域内ネットワークを構築することで、災害時のレジリエンスは飛躍的に高められる。広域停電などのリスクを減らすことにつながるのだ。
電力の大口需要家である企業を巻き込んだ取り組みにも期待がされる。通常は敷地内(オンサイト)に太陽光発電設備を設置し、自家消費を行うモデルを考えるが、敷地外(オフサイト)に設置された再エネ発電設備から電力供給を受ける、という選択肢もあり得る。オフサイトから自営線で引き込むことで、自家消費の可能性は格段にアップする。再生可能エネルギーを事業運営に用いることは、今日では、RE100に象徴されるように企業評価を高めることに直結する。
再生可能エネルギーを積極的に選択していく動きが、大口需要家の間に着実に広がっているのだ。こうしたニーズに応えることは、FIT電源では不可能なことだった※。それは、非FIT電源(卒FIT電源を含む)だからこそ、創出し得る価値なのだ。
※FIT電源を使っても、それだけでは再エネを使っているとは認められない。FIT電源の再エネ価値は、「再エネ賦課金を支払っているすべての国民に帰属するもの」と定義されており、実際に使う電気とは切り離されてしまっている。
PPAモデルは
成長の可能性を秘めたスキーム
これからの成長が期待される取り組みに、「PPAモデル」がある。PPAとは、「Power Purchase Agreement」の略で、直訳すると「電力販売契約」。広義には、大手電力会社と需要家との一般的な契約(UtilityPPA)も含まれるが、いま注目されているのは発電事業者と需要家の間で個別的に結ばれる契約(CorporatePPA/コーポレートPPA)のこと。電力会社を介さず、企業が再エネ発電事業者から直接電力を購入できる仕組みだ。
上述のように、再エネ電力を調達したい大口需要家は、自ら発電設備をつくって自家消費をするか、何らかの形で再エネ電力を購入することを考える。その主要な手法として、欧米で広まっているのがコーポレートPPAなのだ。再エネ発電事業者にとっては、経済的確実性が担保され、FITからの脱却を図ることが可能になる。欧州における2018年のコーポレートPPAの成約容量は、1.9GWに上っている。
PPAには、いわゆる「第三者所有モデル」も含まれる。発電事業者が契約相手の建物に太陽光発電設備を無償で設置し、一定期間それを所有し、そこで発電した電力を契約相手に販売するというスキームだ。この場合も、FIT制度に依存することなく、経済的確実性を得ることができる。なお、通常、契約期間を終えた発電設備は、契約相手に無償譲渡される。
日本においては4月18日、イオンがPPAモデル導入開始を発表して注目を集めた。イオンがイオンタウン湖南の屋根スペースを提供し、PPA事業者が1MWを超える太陽光発電設備を設置。そこで発電された電力をイオンタウン湖南が自家消費分として購入・活用するという契約だ。
●イオンのPPAモデル概略図
出典:イオン
イオンはRE100加盟企業であり、2050年までに店舗で排出するCO2を総量でゼロにすることを目指している。また、中間目標として2030年までに店舗で排出するCO2等を総量で35%(2010年比)削減することを定め、省エネの推進と、再エネの活用拡大に努めている。今回のPPAモデルの導入は、目標達成に向けた取り組みの一環だ。イオンでは、「グループ各社の商業施設のスペースを有効活用し、太陽光発電電力の利用拡大を進めていく」としている。
PPAモデルは、再エネを求める需要家のニーズに直接応える、ポストFIT時代ならではの発電・売電スキームなのだ。
経産省と環境省が
連携チームを発足!
分散型エネルギーシステムは、まちづくりと一体的に進められることで、地域の活性化に貢献し、地域循環共生圏の形成にも寄与する。こうした観点から、経済産業省と環境省は連携チームを発足し、下記について検討することとなった。
出典:環境省
②再エネ主力電源化に向けたコスト低減、地域への普及拡大、環境アセスメントの効率化
③地域や個別需要家等のエネルギー需要サイドの脱炭素化
FITからの自立に向けても、両者の連携は画期的なことだ。
取材・文/廣町公則
SOLAR JOURNAL vol.29(2019年春号)より転載