編集部からのお知らせ

地域の価値を上げるために本当に必要なことは? 「RE Action」に参加する意味

「地方創生」や「地域活性化」といった言葉を掲げるだけでは、地域を変えることはできない。では、地域の価値を上げるために、本当に必要なことはいったい何だろうか。エネルギージャーナリストの北村和也氏が地域の価値の本質を解く、好評の連載コラム第12回。

地域の価値を上げるということ

『地方創生』は、5年前に国が「東京一極集中の是正と地方人口減少の歯止めで日本全体の活力を上げることを目的とした一連の政策」である。同様に、『地域活性化』は、地域を元気にすることを目的とした言葉で、筆者も地域や自治体新電力などの立ち上げなどで実現につなげることを目指している。

ただし、地方創生という言葉を掲げるだけでは、何の効果もない。また、予算をたくさんつければそれが達成されるわけでもない。政府が肝いりで進めた地方創生が実際に地方の何を変えたのかを見ればよく分かる。それは地域活性化も同じである。

このところ筆者が確信をもって感じるのは、地域活性化の本質は「地域の価値を上げること」だということである。そして、再エネをはじめとして、近年この地域の価値を上げるツールが特にエネルギーの分野で増え続けている。「再エネ」、「自治体新電力」、「RE100」など流行りのアイテムについて、地域の価値上昇にどう結び付くかという観点から捉えなおしてみたい。それが本コラムの主旨である。少し長くなりそうなので、12月分のコラムと分けて前後編二回でお届けしたい。

地域の価値とは何だろう

ところで、地域の価値とは何だろうか。

10月中旬に、日経BP総研運営のウェブサイト「新・公民連携最前線」が、2018年度の行政視察の受け入れランキングを発表した。全自治体へのアンケート調査の結果を「視察件数ランキング」として取りまとめたものである。

結果に興味ある向きもあるだろうから、第一位だけは紹介しておく。岩手県紫波町の駅前開発事業「オガールプロジェクト」が3年連続で栄冠を勝ち得た。余計なことだが、筆者も同じ地域で進めるエネルギー関連事業のプロジェクトで何度も同地を訪れている。

その他のランキングはリンクから見ていただきたい。官民連携の都市整備や文化複合施設の運営などの事業が並んでいる。

例えば、このようにたくさんの視察が訪れること自体が「地域の価値」と考えることもできるし、何より、視察先となったプロジェクトが地域に実質的な利益をもたらしているかどうかがポイントとなるであろう。

つまり、地域に経済的などのメリットをもたらすことが「地域の価値」であり、人口減少や高齢化の波にさらされ地域の疲弊が課題となる中、地域、自治体は何とかその価値を上げようとしているのである。

具体的に言うと、観光などでその地域を訪れたり、その地域の物品を買いたいと思ったりすること。個人や企業がそこで何らかの仕事を行いたい、またはその地域に移り住みたいと考えることが思いつく。

もちろん、今住んでいる人たちが住み続けたいと感じることも重要である。観光客が増えすぎたことによる地元住民の生活環境悪化や、地域外資本によるメガソーラーのための山野の乱開発などは、実際に起きている地域の価値を貶める悪例である。

目的とツールを見直すと
地域がとるべき道が見えてくる

少し回りくどい説明から入ったが、今、エネルギーをきっかけとして起きているいくつかの流行の中には、地域の価値を上げるのに役立つツールとなるものがたくさんある。

これは地域にとってチャンスである。この機会を見逃すことなく、これらツールの導入目的を「地域の価値上昇」にフォーカスすることが、最初に示した地方創生、地域活性化の重要なポイントであることをまず肝に銘じてほしい。

例えば、RE100で考えてみよう。

すでに何度も取り上げているが、RE100は再エネ電力100%で企業活動を行うことを目指す大企業を中心とした集まりである。基本的に、地方にはRE100の参加条件(莫大な電力使用量など)を満たす企業はいないと考えられ、地域の価値とは無関係に見える。

しかし、RE100に参加した企業を地元に誘致することやRE100参加企業のサプライチェーンに地元企業が入ることを目的に設定すれば、全く見え方が違ってくる。

RE100企業の誘致には何が必要か、サプライチェーンにはどうやったら入ることができるのかは、再エネが持つ付加価値をきちんと把握さえすれば、必ず正しい回答にたどり着くことができる。

RE Actionへの参加は
地域の価値を高めることである

前項の答えはこうなる。
RE100企業を誘致するには、その地域の工業団地などで再エネ電力を供給することが必須である。そして、サプライチェーンに入るためには、自らが再エネ電力で企業活動をすることである。つまり、RE Actionに参加することがサプライチェーン入りの1つの条件になりうるのである。RE Actionとは、繰り返すが『再エネ宣言 RE Action』が正式名称で、これまでRE100には実質的に参加できなかった省庁や自治体、中小企業、病院、学校に間口を広げた組織である。(HP:再エネ宣言 RE Action )

企業誘致に関しては、多くの自治体が血道をあげて競い合っている。固定資産税の減免、水道ほか光熱費の割引などが多いが、特典での呼び込みはそろそろ限界ではないだろうか。そこで、新しくそして決定的な好条件として、再エネ電力の供給が急激に魅力を見せ始めている。今年、横浜市が再エネ電力の広域融通を目指して東北12市町村と連携協定を結んだ。その背景にあったのは、再エネ電力供給のポテンシャルが低い横浜市から将来企業が逃げ出していくことへの恐怖である。

もう一度整理しておく。

自治体がRE Actionに参加するのは、自らが再エネ電力100%で活動を行うことをアピールするだけではない。その地域で再エネ電力が使いやすい環境を整えることを広く宣言することである。つまり、再エネを求める企業への呼び水になることでもある。また、地域の民間企業のRE Action宣言は、再エネ電力使用を基本とするサプライチェーンへの参加資格を得ることでもある。

これらは自治体と地元の民間企業の価値が上げることにつながる。その結果、地域全体の価値が上昇し、結果として地域活性化が進んで住みよい街を創り出すベースができることになる。

後編に向けて

次回のコラムでは、遡って再エネの価値、温暖化対策、さらにいま最も流行っているSDGsの達成と地域の価値について考えていきたいと思う。

本コラム内でそう書いてしまっているが、「地方の疲弊からの脱却」などという言い回しは、地域にネガティブなイメージを置いていると言われかねない。しかし、横浜市が地方の再エネに頼らざるを得ない例でわかる通り、必死の生き残りを模索しなければならないのは、大都市の方である。

現状の把握と手法を間違えない限り、地域の価値は必ず上げられることをここでは強調しておきたい。

プロフィール

エネルギージャーナリスト。日本再生可能エネルギー総合研究所(JRRI)代表。

北村和也

エネルギーの存在意義/平等性/平和性という3つのエネルギー理念に基づき、再エネ技術、制度やデータなど最新情報の収集や評価などを行う。
日本再生可能エネルギー総合研究所公式ホームページ

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