政策・制度

シリーズ「太陽光義務化元年」欧米で先行する住宅義務化。先例に学びきめ細かな政策を

日本でもようやく始まった太陽光義務化。欧米ではそれよりも前に義務化が始まっている。義務化をする一方で、細やかな配慮がなされたり、新しいプログラムが導入されたりするなど、さまざまな政策が展開されているのが特徴だ。どのような取り組みが実施されているのだろうか。

東京都の太陽光義務化は朗報
今後は蓄電池も組み込むべき

東京都の太陽光義務化では、日本の政策をリードしてきた東京都らしく今回もしっかりとイニシアチブが発揮されました。発案にとどまらず、条例案が議会で採択されたことはよかったと思います。今後、川崎市が東京都を追随する形になりますが、全国の自治体でも同様の動きが広がってほしいと考えています。特に、電気料金が高騰する今、太陽光を導入することは経済的にもメリットがあります。こうした施策は積極的に拡大するべきです。

米国に目を向けると、カリフォルニアは日本より約2年早く住宅用太陽光の義務化に取り組み始めました。ギャビン・ニューサム州知事のもと「ソーラーマンデート」と呼ばれる住宅とマンションの太陽光義務化を進め、その実績は合計約150万戸に上ります。カリフォルニアは電気料金が高く、太陽光を導入するメリットが大きい東京都の太陽光義務化は朗報今後は蓄電池も組み込むべきのです。太陽光発電システムのコストも下がっているため、採算も取りやすくなっています。戸建住宅だけでなく集合住宅のビルダーも義務化の対象に含めている点が特徴的です。その一方で、市民主導のコミュニティソーラーに参加する事業者に対しては義務を免除するなど、細やかな配慮が施されています。

また、カリフォルニアよりさらに電気料金が高く住宅用太陽光が普及しているハワイでは、6千戸に蓄電池を導入する全米最大級のVPPに取り組むといった自主的なプログラムを地元のハワイ電力が行っています。ハワイでは、太陽光が普及したことによって、発電量が減る夕方から電力需要が伸びるダックカーブ現象が顕在化しています。そのため、2022年から「スマート逆潮流」というプログラムを導入しました。これは、太陽光と蓄電池をセットで導入し、余った電気を朝夕は高値で買い取る一方で、日中は買い取らず、無料で引き取るというプログラムです。蓄電池を組み合わせることで、朝夕の系統への逆潮流を分散できるメリットに加え、需要家は高値で買い取ってもらえるため、蓄電池と太陽光の費用回収が可能になります。このように、世界では蓄電池と太陽光を組み合わせることが急速に広がっているのです。

参考:「スマート逆潮流」の時間帯別買取価格


(2023年1月11日現在) 出典:ハワイ電力

その一方で、欧州では、ロシアによるウクライナ侵攻の影響から、ドイツ政府は2022年7月、再エネをさらに強化する「イースターパッケージ」を採択しました。太陽光と風力により力を入れ、2030年までに再エネ80%、2035年までに100%にするという方向性を示し、加速しています。再生可能エネルギー法(EEG)では、通常の野立て太陽光には入札などで制限を厳しくしているのに対し、住宅用太陽光や市民が主導するコミュニティソーラーは高値で固定価格買取を行うなど、きめ細かな政策を展開しています。ドイツの地方自治体でも、東京都と時を同じくして太陽光義務化が始まりました。ドイツ政府は、太陽光を現在の60GWから2030年までに215GW、2040年までに400GWという非常に野心的な拡大目標を掲げています。気候危機に加え、今般のエネルギー危機をバネにして再生可能エネルギーの導入を加速しています。

こうした海外の施策に学び、日本も早急に義務化の対象に蓄電池も組み入れるべきです。FIT制度の余剰買取の仕組みを応用し、ハワイ電力のように昼間はゼロ円、朝夕は高値で買い取り、蓄電池と太陽光を合わせて約10年で採算がとれる買取価格に設定すれば、住宅用蓄電池の市場も拡大します。日中の太陽光による逆潮流も抑えられるため電力市場にも貢献し、夕方からの電力ひっ迫という課題も解決できるでしょう。日本は今こそ、太陽光に加えて住宅用蓄電池の義務化によるスマート逆潮流、そして自治体の太陽光義務化に取り組むべきです。

PROFILE

認定NPO法人 環境エネルギー政策研究所(ISEP)
所長

飯田哲也氏

自然エネルギー政策の革新と実践で国際的な第一人者。持続可能なエネルギー政策の実現を目的とする、政府や産業界から独立した非営利の環境エネルギー政策研究所所長。
Twitter:@iidatetsunari


取材・文:山下幸恵(office SOTO)

SOLAR JOURNAL vol.44(2023年冬号)より転載

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