政策・制度

いま我々が相対するリスクと機会。PPAからエネルギーの意識改革を!

世界の主流は、CO2排出量の削減から再エネを増やすことに移行。日本もCOP28の誓約に賛同しているが、再エネの拡大を牽引する太陽光の導入目標はあまりにも低い状況だ。その突破口が、民間企業の自助努力によるPPAだと、環境エネルギー政策研究所 所長の飯田哲也氏が語る。

再エネ拡大が世界の主流
社会全体の便益を最大化

去年のCOP28では、「世界全体の再エネ発電設備容量を2030年までに少なくとも現在の3倍」にすることが主要なアジェンダになりました。10年ほど前まで、気候危機対策の主眼はCO2排出量の削減でしたが、現在は再エネを増やすことに重点が置かれています。足元の世界の再エネ容量は約3500GWなので、3倍の1万1000GWにするには、これから毎年約1200GWずつ増やさなければなりません。

日本もこの誓約に賛同していますが、再エネの拡大を牽引する太陽光の導入目標はあまりにも低く、国内だけで達成するのは難しいでしょう。日本の電力システムには、太陽光や蓄電池などの分散型エネルギーリソースを受け入れて、社会全体の便益を最大化する制度設計やAIなどのテクノロジーが圧倒的に足りていません。世界ではこの数十年、英国の電力自由化に始まり、カリフォルニアの大停電など苦い経験をして、試行錯誤しながら電力自由化を進めてきました。合理的なマーケットづくりや最先端のテクノロジーを活用した結果、エネルギーの双方向のやり取りが実現されています。翻って、日本は制度改革やテクノロジーの普及で世界に遅れをとり、社会の便益を最大化してCO2を削減する流れに取り残されています。

国内にまん延する規制圧力
停滞する空気を払拭できるか

この先、太陽光導入の最大の可能性を秘めているのは、住宅、駐車場などのデッドスペース、農地です。しかしながら、東京都と川崎市が新築建築物への太陽光設置を義務化したものの、他の自治体への波及は限定的です。ソーラーガレージをめぐっては、建築基準法が大きなハードルになっています。そして問題は、導入のポテンシャルが大きい農地に関して、農林水産省が営農型太陽光の拡大に消極的なことです。

日本はエネルギーの大半を輸入に頼って膨大な貿易赤字を出しており、円安でさらに赤字が膨らむ恐れもあります。再エネ拡大によるエネルギーの自立は、気候危機に劣らない最優先課題なのです。ところが、メガソーラー問題の反動や国民負担の抑制だけに注目した規制の強化に終始して、狭い視野で日本の可能性をつぶそうとしています。太陽光と再エネをめぐる最大の課題は、「日本にまん延する再エネ否定の空気を変えて、エネルギー自給率や気候危機、地域経済の自立と正面から向き合っていけるか」にあります。

個人のエネルギーの自立
ビジネスで意識の変革を

その突破口が、民間企業の自助努力によるPPAです。これからは、企業の電気料金を抑制することに着目したオンサイトPPAから一歩進んで、太陽光と蓄電池による個人のエネルギーの自立を進めるべきです。より多くの人にエネルギーに対する気付きを与えられれば、国内の空気を変えるきっかけになるかもしれません。それには、民間のビジネスベースで個人の太陽光や蓄電池をアグリゲートして、個人でも電力市場に応札できるサービスを始めるなど、暮らしの中でエネルギーを意識するきっかけづくりが重要です。

「スイッチさえ入れればいつでも電気が使える」という時代は終わり、「明日は台風が来そうだから、今夜は蓄電池を充電しておこう」など、エネルギーをより主体的にとらえるべき時に来ています。民間主導で個人のエネルギー意識に変革が起きることを期待します。

PROFILE

認定NPO法人 環境エネルギー政策研究所(ISEP)
所長

飯田哲也氏


自然エネルギー政策の革新と実践で国際的な第一人者。持続可能なエネルギー政策の実現を目的とする、政府や産業界から独立した非営利の環境エネルギー政策研究所所長。X:@iidatetsunari


取材・文:山下幸恵(office SOTO)

SOLAR JOURNAL vol.48(2024年冬号)より転載

4月23日(火)に開催する「第29回PVビジネスセミナー」では、電力広域的運営推進機関 容量市場センターの横谷 亮氏が登壇し、長期脱炭素電源オークションの仕組みや今後の展望について講演します。


2024年、再エネの新規開発スキームは、固定価格買取制度に頼らないオフサイトPPAが主流になりつつあります。今回は2024年度の国の政策動向や、蓄電池を活用した新たなビジネスモデルを徹底解説します。また、今年1月にスタートした長期脱炭素電源オークションの仕組みや今後の展望、東京都が取り組む事業者向け再エネ導入事業を紹介します。

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