環境省の新年度事業を徹底解説! 工場や事業場の脱炭素化支援策のポイント
2025/04/11

産業部門における脱炭素化の取り組みが重要度を増す中、環境省は今年度、工場・事業場に向けてどのような施策を行うのか。環境省地球温暖化対策事業室の鈴木一馬氏にわかりやすく解説していただいた。
中小企業を対象にした
SHIFT事業の手応えは?
2024年度は約40件を採択
産業部門によるCO2排出量は日本のCO2排出量の約3分の1(2022年度)を占めており、産業部門における脱炭素化は極めて大切だと考えています。24年度の「工場・事業場における先導的な脱炭素化取組推進事業(SHIFT事業)」では、二酸化炭素(CO2)削減計画策定支援などの補助を行いました。対象は、年間のCO2排出量が50トン以上・3000トン未満の工場・事業場を保有する中小企業などです。
環境省に登録された支援機関が、工場・事業場の現状と課題を整理して対策の提案を行い、目標を明示した「CO2削減計画」の作成を支援しましたが、24年度には約40件を採択しました。この補助事業は長年にわたって継続しており、一定の需要があると認識しています。
2025年度のDXを用いた
省CO2の支援とは?
複数年度でデータ取得から実行まで支援
24年度補正予算・25年度当初予算には、「DX型CO2削減対策実行支援事業」を盛り込んでいます。これは、DX(デジタルトランスフォーメーション)システムを導入して、設備の稼働状況などをデータで可視化し、運用改善や設備の効果的な改修の設計などを促進することでCO2削減を目指すものです。この事業は、これまでは単年度事業として実施していましたが、25年度から2年間の複数年度事業も可能になります。
複数年度事業にすることで、1年目に年間を通じたデータを蓄積し、2年目にそれを基にした改善の取り組みを支援したいと考えています。季節や天候によるデータの変動を考慮して、より実践的なCO2削減に取り組んでいただきたいと思っています。
Scope3排出量削減
のための施策とは?
事業者間の連携の拡大に期待
近年は、大企業だけでなく、中小企業の間でも「脱炭素化に取り組まなければ」という意識が高まっているように感じます。25年度当初予算では、「Scope3排出量削減のための企業間連携による省CO2設備投資促進事業」を実施します。Scope3排出量とは、自社の事業活動に関連する他社の排出量を指します。例えば、原材料の調達、輸送、製品の使用や廃棄などによるものです。世界的に脱炭素化の流れが強まっていることを踏まえて、Scope3排出量を削減することの重要性が増しています。この補助事業では、代表企業と取引先である中小企業などが連携して、CO2削減効果が高い設備の導入を支援します。
最近は、中小企業と金融機関などが協力して脱炭素化に取り組むケースもあります。この先、こうした事業者間の連携が広がることによって、先進的な取り組みが増えることを期待しています。
取材・文:山下幸恵(office SOTO)
SOLAR JOURNAL vol.53(2025年春号)より転載
4月22日(水)に開催する「第33回PVビジネスセミナー」では、環境省地球環境局地球温暖化対策事業室の鈴木一馬氏が「工場・事業場の脱炭素化に向けた環境省の取り組み」というテーマで講演します。
新たに策定された「第7次エネルギー基本計画」では、2040年度の再生可能エネルギーの導入目標を大幅に引き上げる必要に迫られており、そのためには特に導入が容易な太陽光発電と蓄電池の普及を加速させる必要があります。いま注目のコーポレートPPAの最新動向や、2025年度の環境省の政策方針、国内外で開発された最新テクノロジーを紹介します。