【補助金】住宅の省エネ基準適合義務化 国の新たな補助金・支援制度まとめ
2025/05/07

今年4月に改正建築物省エネ法が施行され、原則として住宅を含む全ての建築物を対象に、新築・増改築の際に省エネ基準への適合が義務化された。国の新たな補助金や支援制度をわかりやすく解説する。
国交省、経産省、環境省連携で
脱炭素志向型住宅を支援
省エネ基準への適合義務化の改正内容(出典 環境省)
これまで国内では、延べ床面積300㎡以上の建築物だけが省エネ基準への適合対象となっていたが、今年4月からは原則として住宅を含む全ての建築物を対象に新築・増改築の際に省エネ基準への適合が義務づけられた。住宅の場合は「外皮性能(外壁・窓等の熱損失量)」と「一次エネルギー消費量基準」に適合する必要がある。こうしたなか、建築物の省エネ基準を達成する、あるいはそれを牽引するような建築物への補助事業が、省庁連携のもとで進められている。
国土交通省は経済産業省、環境省と連携し、2024年度補正予算の事業として①脱炭素志向型住宅の導入支援事業、既存住宅の断熱リフォーム支援事業、②断熱窓への改修促進などによる住宅の省エネ・省CO2加速化支援事業、③建築物などのZEB化・省CO2化普及加速事業を実施している。
脱炭素志向型住宅導入支援の対象イメージ(出典 環境省)
このうち、「脱炭素志向型住宅導入支援事業」は、ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス(ZEH)基準の水準を大きく上回る省エネ性能を有する新築住宅(脱炭素志向型住宅)の導入を支援するもので、事業費は500億円。家庭部門のCO2排出量削減を進め、くらし関連分野のGXの実現に向けて、50年ストック平均でZEH基準の水準の省エネルギー性能の確保を目指す牽引役となる、新築の戸建て住宅および集合住宅を支援する。補助額は1戸あたり160万円。高性能断熱材や高断熱窓、高効率給湯器の導入などにより、一次エネルギー消費量の基準(BEI)≦0.65(省エネのみ)、一次エネルギー消費量削減率100%以上(再エネ含む)、断熱等性能等級6以上などを要件とする。
「既存住宅の断熱リフォーム支援事業」は事業費が9億4000万円。既存戸建て住宅の断熱リフォームでは120万円を上限に3分の1を補助する。集合住宅では1戸あたり上限15万円で補助率は同じく3分の1。「断熱窓への改修促進などによる住宅の省エネ・省CO2加速化支援事業」は事業費が1350億円。窓(ガラス・サッシ)の断熱改修工事の2分の1を補助する。「建築物などのZEB化・省CO2化普及加速事業」は事業費が48億円。業務用施設のZEB・省CO2化普及のため、新築および既存建築物のZEB普及促進支援と、非住宅建築物ストックの省CO2化改修調査の支援を行うほか、省CO2化と災害・熱中症対策を同時に実現する施設改修などを支援する。
集合/戸建て住宅で
省CO2、高断熱などを支援
集合住宅の省CO2化促進事業イメージ(出典 環境省)
環境省と経済産業省の連携事業としては、24年度補正予算(9億4000万円の内数)および25年度当初予算(29億5000円)で「集合住宅の省CO2化促進事業」を実施する。災害時でも電力が確保でき、ヒートショック対策にもなる健康で快適なZEHの普及や高断熱化の推進、住宅の高断熱化による省エネ・省CO2化を促進し「ウェルビーイング/高い生活の質」の向上につなげる。そのうえで、30年度の家庭部門からのCO2排出量を13年度比で約7割削減することを目指す。
具体的な事業内容は、集合住宅の省エネ・省CO2化、高断熱化のための支援として①新築低層ZEH-M(3層以下)への定額補助(上限40万円/戸)、②新築中層ZEH-M(4、5層)への定額補助(上限40万円/戸)、③新築高層ZEH-M(6~20層)への定率補助(補助率1/3以内、上限40万円/戸)、④上記に蓄電システムを導入、低炭素化に資する素材(CLT「直交集成板」)を一定量以上使用、先進的再エネ熱利用技術を活用する、またはV2Hを導入する場合に別途補助する。蓄電システムで2万円/kWh(上限額20万円/台、一定の条件を満たす場合は24万円/台)。
戸建住宅ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス(ZEH)化等支援事業イメージ(出典 環境省)
戸建て住宅でも同様に「ZEH化などの支援事業」を展開する。24年度補正予算(9億4000万円の内数)および25年度当初予算(55億5000円)で、①戸建住宅(注文・建売)において、ZEHの交付要件を満たす住宅を新築する者に対する定額補助(55万円/戸)、②ZEH以上のさらなる省エネと断熱等級性能6以上の外皮性能を満たした上で、省エネ機器の制御や設備の効率的運用などにより再エネの自家消費率拡大を目指す戸建住宅(ZEH+)に対する定額補助(90万円/戸)、③上記①~②の戸建住宅のZEH、ZEH+化に加え、蓄電システムを導入、低炭素化に資する素材(CLT(直交集成板))を一定量以上使用、または先進的再エネ熱利用技術を活用する場合に別途補助する(蓄電システム2万円/kWh、上限額20万円/台)、上記②の戸建住宅のZEH+化について高度エネマネ、おひさまエコキュート、 EV充電設備を導入する場合も別途補助(高度エネマネ定額2万円/戸など)。また既存戸建て住宅の断熱リフォームでは3分の1を補助する(上限120万円/戸、蓄電システム、電気ヒートポンプ式給湯機などに別途補助)。
省エネ基準への適合義務化と国などの支援策により、太陽光発電および蓄電池、高効率給湯器、断熱材などの市場が活発化しており、特に太陽光発電では施工業者の不足が顕著化している。業界全体のリソース拡充が必須となっている。
DATA
環境省 2025年度予算、2024年度補正予算 脱炭素化事業一覧
脱炭素志向型住宅の導入支援事業(経済産業省・国土交通省連携事業)
集合住宅の省CO2化、戸建住宅のZEH、ZEH+化/高断熱化による省エネ・省CO2化
取材・文/宗 敦司
6月10日(火)に開催する「第34回PVビジネスセミナー」では、環境省地球環境局地球温暖化対策事業室の畑 裕幸氏が「脱炭素志向型住宅の導入支援事業に関する背景と概要」というテーマで講演します。
新たに策定された「第7次エネルギー基本計画」では、2040年度の再生可能エネルギーの導入量を大幅に引き上げる目標を掲げています。そのためには特に導入がしやすい太陽光発電と蓄電池の普及を加速させる必要があります。経済産業省や環境省の2025年度の政策方針とともに、産業用の自家消費やPPA、系統用蓄電池の最新動向、国内外で開発された最新テクノロジーなどを紹介します。