脱炭素

世界で躍動を始めた、蓄電池の持つ再エネ拡大のパワー

蓄電池の役割が強くクローズアップされ始めている。今回のコラムでは日本だけでなく、導入量が格段に多く、実際の運用実績が目に見えて現れているアメリカ・カリフォルニア州の例などを取り上げ、蓄電池の役割とその実力に触れてみたい。

G7の閣僚会合で設定された、エネルギー貯蔵6倍の目標

 2050年ゼロカーボンへの重要なカギとして、4月末からイタリアのトリノで行われたG7の気候・エネルギー・環境大臣会合で、2030年に再エネ発電施設の3倍増と並び、蓄電池などのエネルギー貯蔵施設の6倍導入が目標として定められた。日本でも特に系統用蓄電池の導入、利用の積極的な支援が検討されている。背景には、九州地方から全国に広がる急激な再エネ発電施設の出力制御があり、実際に蓄電池の系統接続申込等の件数がここにきて大幅に増加している。 

カーボンネットゼロに必要な貯蔵容量(GW) 出典:IEA、資源エネルギー庁

 目標は、上図にあるIEAの大幅な導入予測に沿ったもので、世界全体で1,500GWの貯蔵容量を想定している。内訳は、全体の3分の2が系統用蓄電池、残りを揚水発電と家庭用など需要家用の蓄電池とされている。
 大幅な増加が必要ということは、現在の導入量がかなり不足しているということでもある。特に日本では、ここにきて系統用蓄電池の接続検討は確かに急増してきているが、3月末の契約申し込みレベルでやっと3.3GW程度に過ぎない。

 一方、世界に目を向けると、蓄電池を自治体レベルで実際に活用している例もある。最も先進的とされるのが、アメリカのカリフォルニア州である。

蓄電池の積極導入を進めるカリフォルニア州

カリフォルニア州政府は、再生可能エネルギーによる電力利用を拡大する重要なツールとして、2018年に蓄電池の積極的な導入を決めた。

アメリカ・カリフォルニア州での蓄電池導入(累積) 出典:州公式サイト

 その結果、2018年に0.5GWに過ぎなかった蓄電池の容量が、わずか数年で20倍以上の10GWを越えるまでに増加した。州政府はさらなる拡大を続ける方針で、2024年末までに3.8GWの上積みを予想している。また、2045年には合計52GWが必要だと考えている。
 10GW越えの導入の効果は、すでにはっきりと見えている。
 次のグラフは2024年6月20日のカリフォルニア州の電源構成である。

カリフォルニア州の電源構成(2024年6月20日) 出典:Engaging-Data

 さっと見ると、日中の大半の需要(黒い点線)のほとんどを、再エネ電源、太陽光(黄)、風力(オレンジ)、水力(青)で賄っていることがわかる。残りの2割程度は化石燃料(黒)、原子力(グレー)である。ちなみに、カリフォルニア州の主力電源である3つの再エネをWWS(Wind、Water、Solar)と呼んでいる。
 取り上げたこの日は決して特別な日ではない。この手のグラフは需要の低い週末でのものも多いが、この日は木曜日で、個別の増減はもちろんあるが、だいたいどの日もこのようなグラフに近い。

 さて、ここから蓄電池の役割である。まず、電源構成のひとつとし、色分けされていることに気づく。日本でもやっと大型の蓄電池を『電源=発電施設』として扱うように規定されたことはご存じのとおりである。
グラフ中の蓄電池は、濃い目の青もしくは紫に近い色で示され、特徴的な現れ方をしている。まず、朝6時前くらいに需要の黒点線の下にちょこっと登場する(左上の水色の円の中)。太陽光発電が始まる前の電力を、わずかであるが放電によってカバーしている。そして、7時前からは、発電の縦軸0より下に移り(下の水色楕円)、18時前まで蓄電側に回っている。その時間帯は太陽光発電が15~20GWと活発で、黒い需要の点線を上回る余剰分から充電を行っていることになる。18時から蓄電池は再び、発電の役割を果たし始める(右上の楕円)。太陽光発電の急速な低下に合わせるように最大数GWの放電を行っていることがわかる。
 蓄電池の基本的な役割がカリフォルニア州では体現されている。いずれ、日本も含めてこのような利用が行われるようになる可能性が高い。わかっていると思いながら、このグラフを見ることで筆者もやっと納得した。

数値化する蓄電池のメリット

 下の図は、欧州のシンクタンクEmberによるもので、蓄電池を併設することによる太陽光発電の価値増加を示している。

蓄電池導入による太陽光発電の各国での価値上昇 出典:Ember

 細かい説明が、本コラムの意図ではないので簡略化するが、100MWの太陽光発電に2時間充電可能な60MWの蓄電池を併設すると仮定されている。
 緑色の折れ線は蓄電池なしの時の価値で、黒の折れ線は蓄電池ありで、年間の平均で数%から20%弱の価値上昇が見込まれている。
 国によってかなり数値が違うのは、太陽光発電の導入、ネガティブプライスの発生、
出力抑制の状況などが異なるためである。日本でも欧州と同様の状況に近づくことは確実で、一定の参考になると考える。
 ちなみにEUでは2030年までに200GWの蓄電池の導入が必要だとされている。

蓄電池だけでなく、広い柔軟性向上を

 せっかく設置したテーブルをひっくり返すわけではないが、今回のコラムでは蓄電池だけが再エネ導入拡大の方法だと言うつもりはない。EU各国も、デマンドリスポンスや系統の効率的な利用などをまず行っている。何より、それらのやり方の方が圧倒的に低コストで実現できるからである。しかし、確実に、かつ大量の再エネを入れるためには、蓄電池の力も借りることが必要になる。
 日本でも太陽光発電での余剰電力を見越して蓄電池を検討する機会が増えているが、まだ計算すると合わないと導入を断念することが多い。AでなければB、オールオアナッシングではなく、複数の選択肢を持ち、国の状況に合わせた工夫が必要になる。

プロフィール

エネルギージャーナリスト
日本再生可能エネルギー総合研究所(JRRI)代表
埼玉大学社会変革研究センター・脱炭素推進部門 客員教授

北村和也

エネルギーの存在意義/平等性/平和性という3つのエネルギー理念に基づき、再エネ技術、制度やデータなど最新情報の収集や評価などを行う。
日本再生可能エネルギー総合研究所公式ホームページ

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