太陽光発電

「雲の上の町」高知県梼原町 八百万のパラドックスとは

「八百万(やおよろず)」の世界観、美意識を持つ「和」文化が本来の力を失いつつある。取り入れた文化の文脈に自らが埋もれてしまうリスクのほうが際立ってきているのだ。「雲の上の町」高知県梼原町を取り上げ、「八百万のパラドックス」に注目する。

梼原町:「エコタウン」?

「八百万(やおよろず)」の世界観、美意識を持つ「和」文化は、異質で多様なものを取り入れて、それらを自らの文脈の中で上手く生かすことに長けている。それは結果的に、アバンギャルドなものを生み出し、日本ならではの豊かな生活を育んできた。
だが、いま和文化は本来の力を失いつつあり、その大らかさの利点よりも、むしろ取り入れた文化の文脈に自らが埋もれてしまうリスクのほうが際立ってきている。

以前にも取り上げた高知県梼原町。東京から670km、人口4000人、標高1456mに及ぶ四国カルストに抱かれ、森林と四万十川を頼りに1100年の歴史を刻んできた「雲の上の町」。そこは、八百万の粋な趣とそれが孕はらむリスク、その両方が明瞭に感じられる場所だ。梼原は2基の風車に加えて、設置世帯割合全国トップレベルという太陽光発電や、小水力発電、木質バイオマス発電など、再生可能エネルギーの設備を、棚田をはじめとする日本の昔ながらの原風景の中にしのばせ、エネルギーの100%自給を目指している。

「環境モデル都市」「エコタウン」「低炭素な町」――町が纏うこれら〝旬な〞言葉と町の取り組みとの間に違和感を感じる人は少ないだろう。
だが、もう少し町の深層へと足を踏み入れてみると、この町では、昔ながらの生々流転の感覚、日本古来の人と自然の関係が大切にされた町づくりが代々受け継がれてきており、そうした流れの上に今の梼原の姿があることがわかってくる。

この町を「エコタウン」と呼ぶことは、日本人自身が理解を失いつつある日本文化の真価と可能性を、一見魅力的な西欧文明の包装紙ですっぽりと覆い隠してしまうことにつながりかねない。
八百万のパラドックス、それは、雲の上の町にも潜んでいるのだ。

太陽光パネルのふたつの顔

世界にもまれな、穏やかで豊かな自然環境を背景に、日本人が育んできた人と自然の関係とは、「人も町も自然の一部」というもの。この世界観、あり方は、人も自然も潤し豊かにすることを目的とする日本ならではのイノベーションを生み出し、人・町・自然がひとつの生命体として発展してゆく、独自の文明を創り上げてきた。

この文明は本来、自然の姿そのものから叡智を受け継ぎ、サステナビリティや共生をはじめから内包している。たとえば梼原町の太陽光パネルは、この叡智の表れとして、自然に溶け込んだ町の循環を強化するために採用・活用されているのだ。
一方で、西欧文化の根底にある世界観は、その原点に厳しい自然環境との「戦い」を持つがゆえの宿命か、人と自然は乖離し、自然を人のためにある資源と考える。この世界観のもとでは、人が自然と共にあることを「未開」と捉え、自然の影響を遮断しその利用価値を追求する文明が育まれてきた。

自然の摂理から「外れた」この文明においては、周知の通り、サステナビリティや共生が実現困難な大きな課題となっている。
同じ太陽光パネルだが、ここでは自然をより賢く利用し、あるいは保護し、サステナビリティの確保を図るための道具として使われることになる。

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真価が目覚めるとき

梼原町が、サステナビリティや共生のトップランナーであることに間違いはない。だが、自然との関係性や今後の町の可能性において、海外の環境先進都市とは大きな違いがある。

同町では風力発電から得た収入を森林整備や太陽光パネルの普及に活用するなど、「自然からいただいたものは、自然にお返しする」という美意識、「全体を潤すための循環」の強化といった発想が町づくりの基盤にある。

この町が、「自然の一部」としてのあり方を深化させて、独自の価値を深層から捉え、真価を守り、伸ばし、世界にむけて解き放つことができたとしたら……それは、サステナビリティや共生という今の人類の切迫した課題に対してこれまでの延長線上にはないソリューションが提示されるときだ。

八百万のパラドックスを越えて

日本ならではの世界観、美意識を軸に創造されたものが、いつの間にか西欧文化ベースの現代文明的な基準や価値観で書き換えられ、そのうちに発案者や運営者も含め皆がそのものの真価を見失う……日本の社会に蔓延するこの現象、八百万の異変は、「和」そのもの、本来の日本なるものの喪失につながっていることを忘れてはなるまい。

八百万のパラドックスを乗り越え、和文化の本来の良さ・豊かさが日本を、そして地球を潤す時代が来ることに期待したい。


※『SOLAR JOURNAL』vol.14 より転載

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