編集部からのお知らせ

なぜ、いま雑草対策なのか? 軽視できない太陽光発電所の“雑草問題”①

太陽光発電所の雑草問題が、近年顕在化してきている。雑草には、どんなリスクが存在するのか。雑草対策のポイントとは? 国内随一の雑草問題シンクタンク「緑地雑草科学研究所」の雑草インストラクター・鎌田弘章氏に聞いた。

見て見ぬふりは許されない

どうして雑草対策が問題になっているのでしょう?

太陽光発電施設の雑草問題は、これまであまりクローズアップされてきませんでした。しかし、FIT制度(2012年スタート)により急増した太陽光発電所が、稼働から数年を経て、いまそのリスクが顕在化してきているのです。

●太陽光発電施設での雑草遷移

以前は雑草が問題になるという認識すらもっていない事業者さんが多かったので、建設時に何の対策も取られていない発電所も少なくありませんでした。そのうえ、雑草が伸びてきてもギリギリまで見て見ぬふりをして、ジャングルのように生い茂るまで放置してしまう事業者さんもいました。

そうしたケースは、管理基準が比較的ゆるい低圧太陽光発電所に多く見られます。低圧太陽光発電所は住宅地の近くに建てられていることもあり、草ぼうぼうの施設は、近隣住民のクレームを呼ぶことにもなります。雑草は、発電量の低下を招くなど直接的な影響だけでなく、社会との共生という観点からも、いま大きな問題となってきているのです。

雑草が太陽光発電事業に与える影響は?

雑草対策を適切に行わないと、太陽光発電施設には様々な問題が起こってきます。私たちは、それを「雑草リスク」と捉え、大きく3つに分けて考えています。1つは発電に直接関わる「設備運用リスク」、2つめは地域社会の関係においてクローズアップされる「環境リスク」、3つめは手間やコストに関わる「管理リスク」です。この3つのリスクを正しく理解し、それぞれの発電所の状況に合った雑草対策を取っていくことが重要となります。

雑草に潜む3つのリスク

雑草の「設備運用リスク」について教えてください。

設備運用リスクには、「草刈り作業による飛び石でのパネル損傷」「草刈り作業による配線切断」「雑草繁茂による光の遮断での出力低下」「野鳥の糞による出力低下」「雑草侵入によるパワコン・接続箱の故障・不具合」があります。これらは、いずれも出力低下や稼働停止などの実害に直結します。

草刈り作業による飛び石でのパネル損傷や配線切断には、草刈り機の取り扱いに不慣れだったり注意不足だったりという作業者に起因する部分と、埋設しているはずの配線がむき出しになっているなど設備状況に起因する部分があります。そもそも草刈りは、作業自体にリスクが伴うことを認識しなければなりません。

●パネルに継続的な影がかかるとホットスポットの原因に

雑草繁茂による光の遮断や花粉や埃・鳥の糞での出力低下は、売電ロスに直結するだけでなく、放置するとホットスポットが発生するなどパネルのダメージにもつながります。

パワコンや接続箱へ雑草が侵入すると、ショートして火災が発生する可能性や、パワコンの排熱用ファンが回らなくなるなどの故障や不具合が起きかねません。草丈が2m近くになるセイタカアワダチソウやススキ、架台やフェンスに絡みつく蔓性雑草には、とくに注意が必要です。

雑草の「環境リスク」について教えてください。

環境リスクには、「特定雑草の温床・拡大」「有毒・有害害虫の温床・拡大」「獣害・鳥害の根源・生息場所」「除草、搬出、焼却作業によるCO2排出」「施設周辺からの雑草害に対する苦情」があります。生態系や植生に影響し、周囲に害をもたらすというリスクです。

雑草が生い茂り、鳥獣の棲み処になってしまうと、点検等の作業中にハチに刺されるなど事故を誘発することにもなります。また、ネズミや蛇が配線を噛んで、漏電に至るケースも見受けられます。

さらに、雑草対策が取られていないような管理不十分な現場は、前述した地域住民からのクレーム以外にも、ゴミの不法投棄や配線の盗難など、社会問題を引き起こす温床にもなりかねません。

雑草の「管理リスク」について教えてください。

管理リスクには、「年々増大する除草コスト」「草刈り作業による事故・ケガ」などがあり、管理上予期せぬ問題・コストアップを招きます。

除草コストの増大は草刈り機による草刈りで顕著なのですが、一般的な年2回程度の草刈りは、除草という狙いとは逆に、むしろ強い雑草を育てることになってしまっているのです。雑草は年々太く逞しくなり、草刈りの回数を増やさないことには、現状を維持できなくなってきます。

草刈り作業による事故・ケガは、斜面や足元が見えない危険な現場、かがみながらのパネル下での作業等で起こりがちです。また、パワコンなど設備付近での作業には、よりいっそうの慎重さが求められます。太陽光発電施設の草刈りは、難易度の高い作業として認知されつつあります。

そのため、「太陽光発電施設の草刈りを引き受けてくれなくなった」「危険作業とみなされ値上げを要求された」「事故により安く草刈りしてくれていた業者が撤退した」など、現状の草刈り業者と値段を維持できないケースが予想されるのです。

雑草対策のポイントは?

雑草のリスクを考えるにあたっては、直接的な設備運用リスクだけでなく、環境リスクや管理リスクも考慮する必要があります。雑草がなければ防げる損害をしっかりと予測し、どう未然に防ぐかを冷静に判断しなければなりません。設備に保険をかけるように、敷地管理にも保険をかけるという発想で、雑草対策に取り組んでほしいものです。

「雑草のように逞しく」という言葉があるように、雑草は刈っても刈っても生えてくるものです。草刈りには、どうしても限界があります。草刈りだけでなく、除草剤散布・砕石敷き・コンクリート舗装・防草シートなど多様な選択肢のなかから、それぞれの太陽光発電所にふさわしい手法を選び、ときには組み合わせて、長期的視点に立った雑草対策を施してほしいと考えています。

次回は、引き続き鎌田氏より「雑草対策の種類」についてお聞きする。

 

Profile

緑地雑草科学研究所 雑草インストラクター
白崎コーポレーション 太陽光O&M特販営業部
鎌田弘章氏


取材・文/廣町公則

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