編集部からのお知らせ

雑草対策にはどんな種類がある? 軽視できない太陽光発電所の“雑草問題”②

近年、避けては通れない問題となってきた太陽光発電所の雑草問題。太陽光発電所には、どんな雑草対策がふさわしいのか? 国内随一の雑草問題シンクタンク「緑地雑草科学研究所」の雑草インストラクター・鎌田弘章氏に聞いた。

前回記事:『軽視できない太陽光発電所の“雑草問題”①』はコチラ

雑草対策のタイプと特長

雑草対策には、どんなやり方があるのでしょうか?

雑草対策は、一般的に「人的防除」「機械的防除」「化学的防除」「生物的防除」「物理的防除」の5つに分類することができます。

人的防除とは、手で雑草を抜き取ったり、鎌などで手刈りをすること。機械的防除とは、肩掛け式や自走式の草刈り機を使用して草刈りをすること。化学的防除とは、除草剤を撒くこと。生物的防除とは、クローバーなど被覆植物の種をまき、その植物で地面を覆い、雑草よりも優位に立たせることをいいます。物理的防除とは、防草シート、砕石敷き、コンクリート舗装などのことです。

今日、雑草対策がとくに問題となっている低圧太陽光発電所においては、草刈り機(肩掛式刈払機や自走式草刈り機)を使った草刈り、除草剤の散布、防草シートの敷設が主な選択肢となってくるでしょう。
 

それぞれのメリットとデメリットについて教えてください。

●草刈り
草刈り機による草刈りは、もっとも多く行われている雑草対策といえるでしょう。メリットは1回あたりのコストが安く、見た目が自然であること。デメリットとしては、刈り取ってもすぐに生えてきてしまい、効果が持続しないこと。草刈り作業の際に、配線やパネルを傷つけてしまう恐れがあることなどが挙げられます。

作業は、最低でも年2~3回は必要です。費用は、年間100円〜200円/㎡(50円〜100円/㎡×年2回)から、といったところでしょう。



●除草剤
除草剤による雑草対策も、1回あたりのコストが安く、散布が容易であることがメリットです。デメリットは、周辺環境に十分な配慮が必要であり、近隣住民や隣接する農地への影響等を考えないと、思わぬトラブルを引き起こすことにもなりかねないこと。

また、散布時期を間違えると、期待した効果は得られません。作業頻度は、草刈り同様に最低でも年2~3回。費用は、年間約60円〜/㎡(20円~/㎡×年3回)程度でしょう。

●防草シート
防草シートは、施工が容易で、効果が大きく、維持管理の手間も大幅に軽減することができます。これは、他にはない大きなメリットです。しっかりした製品を正しく施工すれば、FIT期間中に張替えの必要もありません。

ただ、様々な製品があり、性能も価格もまちまちで、設置作業のクオリティも業者によって大きく違うので注意が必要です。

そのため、シートの性能や施工の丁寧さによって、防草効果が左右されるという点がデメリットとなります。劣悪なケースでは、敷いて2~3年でシートが破れて草ぼうぼうになってしまった、などいう事例も報告されています。

また、クルマが乗ると防草シートは大きなダメージを受けてしまうので、管理車両が乗り入れる場所には敷設できません。コスト的には、分割払いができる場合を除いて、導入時にまとまったお金が必要となります。製品や施工業者によって異なりますが、初期費用は概ね1,000円~1,800円/㎡位でしょう。


長期的・安定的な雑草対策を

結局、どの雑草対策を選べば良いのでしょう?

必ずしも、どの雑草対策が良いと断言することはできません。太陽光発電施設の立地や、予算によっても違ってきます。また、1つの方法にこだわるのではなく、草刈りと除草剤を組み合わせたり、部分的に防草シートを敷くというようなことも考えて良いでしょう。

高圧太陽光発電所なのか、低圧太陽光発電所なのか、によっても変わってきます。管理者が常駐している高圧の場合なら、管理者が時間を見つけて適宜草刈りをすることもできるでしょう。コストを抑えながら、できるだけ効果的な対策をとろうと思うなら、パネル下やパワコン回り、フェンス回りだけに防草シートを敷くという手もあります。

一方で、管理者のいない低圧の場合だと、人を雇って定期的に草刈りをするよりも、防草シートを全面に敷いてしまった方が、20年間トータルでは割安ということにもなってきます。草刈り・除草剤・防草シートがそれぞれ、どんな場所、どんな人にお薦めなのかを整理した表がありますので、参考にしていただければと思います。

これまでは雑草問題を意識していた事業者さんが少なく、雑草が生えてきたから、とりあえず草刈りをするというケースが多かったのではないでしょうか。とくに低圧太陽光発電所において、その傾向は顕著です。

しかし、それでは決して雑草には勝てません。“とりあえず”の対処法だけでは、効果は持続しませんし、長期的にはコストも高くなってしまいます。

太陽光発電所においては、雑草対策に掛けられる手間もコストも限られているでしょう。だからこそ、効果とコストのバランスをトータルに考え、その施設にふさわしい雑草対策を打っていかなければならないのです。

そのためには、現場ごとに最適な雑草対策を提案してくれる、信頼できる業者を選ぶことも重要になってきます。いずれにしても、一時しのぎではなく、長期的・安定的に雑草を抑えるという発想が大切です。

次回は、引き続き鎌田氏より、雑草対策の本命「防草シート」についてお聞きする。

 

Profile

緑地雑草科学研究所 雑草インストラクター
白崎コーポレーション 太陽光O&M特販営業部
鎌田弘章氏


取材・文/廣町公則
写真・表/白崎コーポレーション

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