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水面だけで40GW!? ため池ソーラーがブームとなるか?

太陽光発電所の新たな設置場所として注目される水上ソーラー。環境コンサルタントの村沢義久氏が、そのメリットとポテンシャルを追求した。

前記事:水上ソーラーに注目! 全国21万ヶ所・フラットで造成不要

水上ソーラーが持つ
多くのメリット

溜め池など、水上設置のソーラーは事業者、地主の双方にとってメリットが大きい。メガソーラーでは山林を使うことが多いが、木の伐採、抜根が必要な上、造成に時間とコストがかかる。さらに、地球温暖化防止のためとはいえ木を切ってしまうので環境面からは痛いところだ。

対する水面はフラットであり、造成の必要はない。水面上に障害物はなく、また、ため池の周辺は農地なので、邪魔な樹林や建物もない。そこにフロート式の太陽光パネルを敷き詰めるだけで完成。工期も土地置き型よりかなり短くできる。

次に、パネルの温度上昇を抑える効果も無視できない。一般に、太陽光による発電量は5月ごろが一番多く、気温の一番高い7月、8月にはパネルの温度が上がり過ぎて、かえって発電効率が落ちてしまう。

水上ソーラーの場合、水面の温度が地面より低いために、パネル表面の温度を下げ、特に夏場における発電量を増加させる効果がある。さらに、池の水を使って散水することにより発電量を15%程度増加させた例がある。

水面の中でも特にため池の使用には法的規制が無く、基本的には管理組合との話し合いだけで済むため、工事を速く進めることができる。例えば、林地開発は開発許可の申請に時間がかかる上、調整池の設置などで時間とコストがかかるのだが、ため池の場合どちらも必要ない。さらに、池には固定費産税がかからないという利点がある。

水利組合にとってもメリットは少なくない。池に降り注ぐ日射を遮ることにより、貴重な水の蒸発を抑え、また、水草、藻、アオコなどの発生を抑えるという効果もある。さらに、水面利用料と、場合によっては維持管理費が入る。

もう一つ、太陽光パネルが目障り、という景観上の理由で地元の反対を受けることがあるが、ため池に限らず池や湖は土手で囲まれているので、外からは水面は見えないという利点もある。

水面だけで
40GWのポテンシャル

水上ソーラーには量的にも大きな期待がかかる。なにしろ、ため池だけで全国に21万ヶ所もあるのだから、その全部に太陽光発電が導入されたら、その発電量は膨大なものになる。

たとえば、100m四方の小さな池でも、その面積は1万m2(1ha)であり、1,000kW(1MW)の設置が可能だ。池面積の20%にパネルを設置するにしても、200kW。その21万倍だと、実に 4,200万kW(42GW)にもなる。

実際には、導入の難しいため池もあると思うが、ため池以外に湖沼やダム湖もある。NEDOの再生エネルギー技術白書(第2版2014/10/29)でも、「湖沼・ダム水面」の太陽光発電導入ポテンシャルを約39GWと想定しているので、水面が大きな可能性を持っていることは間違いなさそうだ。

筆者は、2030年までに、1億3000万kW(130GW)の太陽光発電の設置を提唱しているが、ため池など、水面だけで3割も賄えることになる。これから瀬戸内地方を中心に、ため池ソーラーブームが起こりそうだ。

プロフィール

環境経営コンサルタント(合同会社 Xパワー代表)

村沢義久

東京大学工学修士。スタンフォード大学MBA。経営コンサルティング会社日本代表、ゴールドマンサックス証券バイスプレジデント(M&A担当)などを歴任の後、2005年から2010年まで東京大学特任教授。2010年から2013年3月まで同大学総長室アドバイザー。2013年4月から2016年3月まで立命館大学大学院客員教授。現在の活動の中心は太陽光発電と電気自動車の推進。Twitterは@murasawa。

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