出力制御、全国で“無制限無補償”に統一へ。対象拡大で抑制の低減なるか
2020/09/07
FIT事業者を悩ませる出力制御の機会が減るかもしれない。資源エネルギー庁は対象エリアを全国に拡大し、無制限無補償ルールに統一する方針だ。東京・中部・関西の中三社エリアでの接続量が可能量を超過する可能性があることから、ルール変更に踏み切る考えが示された。
「指定電気事業者」を廃止
無制限無補償を全エリアに拡大
資源エネルギー庁は7月16日、第26回系統ワーキンググループにおいて太陽光などの出力制御のルールを無制限無補償で全国統一する方針を固めた。これまでは、一般送配電事業者が「指定電気事業者」に認定されることで30日の枠を超えた無制限無補償が認められていた。今回は「指定電気事業者」という制度を廃止し、東京・中部・関西を含む全エリアに対象を拡大する。
無制限無補償に踏み切ったきっかけは、東京・中部・関西のいわゆる中三社エリアの再生可能エネルギーの導入拡大だ。現在、中三社合計の接続量と接続申込量は、太陽光が4,500万kW、風力が770万kW。算定条件によっては、接続可能量を超える可能性が指摘されている。将来連系する事業者の負担軽減のため、全エリアで無制限無補償ルールを適用する方針に統一された。
新しいルールが適用されると、出力制御の対象が拡大される。そのため、制御機会が広く浅くなるイメージだ。例示された九州のケースでは発電所あたりの制御日数が、現在のルールの8.5日に対し、新ルールでは5.9日と約-31%低減される見込みが示されている。
(出典:資源エネルギー庁)
求められるのは、公平な制度設計
新たなルールでは、すべての一般送配電事業者に出力制御見通しの公表を求める。これまでは指定電気事業者に限られていた。導入時期は明らかにされていないものの、“可能な限り早期に”適用される見通しだ。
指定電気事業者のあり方は、これまでもたびたび議論されてきた。2019年10月の「出力制御の公平性の確保にかかる指針」では見直しの方向性が示され、前回の同ワーキンググループでも、その必要性が言及されていた。(参考:『“無制限無補償”の出力制御の在り方について検討スタート! 東京電力パワーグリッド・中部電力・関西電力の「中三社」エリアの扱いはどうなる?』)
今回の見直しが適用されれば、制御対象が拡大されることで発電所あたりの制御機会は低減する。つまり、すでに制御対象のFIT事業者にとっては、事業予見性が高まると見られる。一方で、これまで対象ではなかった発電所も新たに対象となる可能性がある。公平性の確保に向け、詳細な制度設計が求められている。
DATA
文:山下幸恵(office SOTO)