来年度政府予算案 需要家主導型事業に前年度並み 98億円を計上
2025/01/08
2025年度の政府予算案が昨年12月27日に閣議決定された。経済産業省では、需要家主導型太陽光発電・蓄電池導入支援事業に98億円、系統用蓄電池などの電力貯蔵システム導入支援事業に国庫債務負担行為を含めて総額400億円を計上している。
再エネ利用の需要家に
太陽光・蓄電池導入を支援
需要家主導型太陽光発電及び再生可能エネルギー電源併設型蓄電池導入支援事業(出典 経済産業省)
経産省の再生可能エネルギー関連の事業では、需要家主導型太陽光発電及び再生可能エネルギー電源併設型蓄電池導入支援事業に前年度比2億円減の98億円。この事業は、再エネ利用を希望する需要家が、発電事業者や需要家自ら太陽光発電設備を設置し、 FIT/FIP制度によらず、再エネを長期的に利用する契約を締結する場合などの、太陽光発電設備の導入を支援する。さらに需要家に対して需給バランスに応じた再エネ電力の供給を推進するため、一定規模以上の蓄電池併設支援を行う。
系統用蓄電池などの電力貯蔵システム導入支援事業に、国庫債務負担行為を含めて総額400億円とし、25年度分は前年度比65億円増の150億円を計上している。この事業では、電力系統に直接接続する系統用蓄電池などの大規模電力貯蔵システムを導入する事業者などへ、導入費用の一部を補助することで、再エネの大量導入に向けて必要な調整力などの確保を図ることを目的とする。
太陽光発電大量導入への課題解決に向けた技術開発事業(出典 経済産業省)
太陽光発電大量導入への課題解決に向けた技術開発事業に前年度と同額の32億円。次世代型太陽電池の開発を目指して、多様な多接合型太陽電池などの開発と屋外曝露による実証評価や、設置場所に応じた太陽電池システムの開発を行う。さらに既存発電設備の長期安定稼働のため、発電事業のトータルコスト低減に向けた技術開発、設置場所に応じた安全ガイドラインの策定、資源循環を目指したリサイクル技術、日射量予測技術、次世代型太陽電池の評価技術を確立するための技術開発などを行う。このなかでは、ガラス基板によるタンデム(積層)型太陽電池や、フィルム型ペロブスカイト太陽電池の設置・施工手法についても技術開発に取り組む。
また、福島県における再生可能エネルギー等の導入促進のための支援事業でも52億円を計上し、このなかで阿武隈山地などへの再エネのさらなる導入拡大に向け、ペロブスカイト太陽電池や風力発電などの事業可能性調査の実施を支援する。
次世代全固体蓄電池材料の
開発事業に20億円
次世代全固体蓄電池材料の評価・基盤技術の開発事業(出典 経済産業省)
次世代全固体蓄電池材料の評価・基盤技術の開発事業に前年度比2億円増の20億円。この事業は、現行の液系LIB(リチウムイオン電池)を超える性能を引き出した次世代全固体LIBの早期社会実装と普及に向け、電池材料の製品化に必要なセル作成・評価を行うための標準電池モデルの開発など、材料評価共通基盤の構築を目指す。電気自動車用革新型蓄電池技術開発に前年度比2億円減の22億円。この事業は、次世代自動車用蓄電池を早期に実用化し、自動車や材料などのサプライチェーンでの大きな付加価値を獲得するとともに、電気自動車の普及による大幅な省エネ化を目指す。
住宅・建築物需給一体型等省エネルギー投資促進事業に前年度比2億円減の55億円。この事業は、大幅な省エネ実現と再エネの導入により、年間の1次エネルギー消費量の収支ゼロを目指す住宅・建築物のネット・ゼロ・エネルギー化を中心に、民生部門の省エネ投資を促進することを目的とする。
再エネの大量導入に向けた次世代型の電力制御技術開発事業に前年度と同額の72億円。この事業では、再エネの大量導⼊を進める際に、電力網(系統)の安定化を図るため、電源側の開発に加えて、系統側での安定化対策に向けた技術開発などを行う。これまで、ノンファーム型接続の導⼊や、マスタープランの策定など、系統課題に対応するための制度整備・技術開発を進め、再エネの早期導⼊を進めてきた。25年度は、さらに再エネの導⼊を進めつつ、電力システム全体の最適化を図る上で必要な技術開発などを行う。
次世代太陽電池の導入支援に
環境省も50億円を計上
また、環境省でもペロブスカイト太陽電池の社会実装モデルの創出に向けた導入支援事業に50億2000万円が計上された。この事業は、ペロブスカイト太陽電池の国内市場立ち上げに向け、社会実装モデルの創出に貢献する自治体・民間企業を支援する。
導入初期における発電コストの低減のため、将来の普及フェーズも見据えて、従来型の太陽電池では設置が難しい建物への施工の横展開性が高い場所、需要地と近接した場所や自家消費率が高い場所、緊急時の発電機能が評価される場所などへの導入を支援することで、社会実装モデルの創出を目指す。
DATA
取材・文/高橋健一