EVシェア倍増!CEV補助金で加速する日本の脱炭素化|北村和也さんの再エネの達人
2026.11.05
世界で大きくシフトが遅れていた日本で、EVが急速な伸びを見せ始めている。一時的な出来事なのか、本格的な転換か。世界の動き、支援策などと併せてまとめる。
1.中東危機が拍車をかけたBEVの拡大
2.日本でもBEVの新規登録が倍増
3.「5%ルール」と揺れるEV支援策
中東危機が拍車をかけたBEVの拡大
エネルギーに関する国際的なシンクタンクEmberは、10月中旬に2026年の世界のBEV(バッテリーEV)の導入に関するリポートを発表した。
それによると、Emberが追跡している世界の56カ国のうち49カ国で、2026年のBEVの販売比率が過去最高を記録した。8月までの世界の新車販売に占めるBEVの割合は前年同時期の16%から18%に上がっている。

中東危機以前と以後の、過去6か月間でのBEVの導入台数変化(ニュージーランド、オーストラリア、チリ、インド) 出典:Ember、「how EVs are reducing oil import vulnerabilities」2026/10/14
変化に最もインパクトを与えたのはホルムズ海峡の危機で、上記グラフでは特に伸びが大きかった4か国の新規登録の拡大を取り上げている。
例えば、トップのニュージーランドでは、中東危機以前(2025年9月~2026年2月)の6か月間でBEV58%の伸び率は11%であったが、危機以後(2026年3月~8月)には+165%と激増している。オーストラリアでは、+5%⇒+136%、インドでも、+17%⇒+58%の急拡大を見せた。この現象は全く新しい動きというわけではなく、これまでのBEVへの流れが加速したというのが正しい見方である。
また、リポートでは、BEVの増加を石油代替効果に換算している。8月までの6か月間に200億ドルの巨額の効果で、そのうち、中国が140億ドル、欧州が31億ドルの節約となっている。
日本でもBEVの新規登録が倍増
今回のEmberのリポートには、特にEVの統計ではあまりポジティブな取り上げ方をされていなかった日本が登場している。
「日本は長らくBEVの導入が遅れていた」と前置きした上で、1月から拡大されたEV購入時の初期費用のサポートに触れ、この結果、「2026年にはBEVの販売が倍増した。」とまとめている。

月毎のBEVのシェアの推移 出典:Ember、前グラフと同じ
ここでは、日本の例を、主要な自動車製造国でもBEV販売が大幅に増加している証左として取り上げている。上のグラフのように今年の1月までシェア2%前あたりをうろうろしていた日本のBEVが、9月のある統計で1万6,074台の登録でシェア4.5%と(オルタナによる自販連と全軽自協の公表データまとめ)、5%に迫ってきた。これまでにない新しい動きと言える。
「5%ルール」と揺れるEV支援策
拡大された支援は、経済産業省の「CEV補助金」(クリーンエネルギー自動車導入促進補助金)で、2026年1月1日以降の新規登録車から、普通EVの上限が90万円から130万円に引き上げられた。トヨタのbZ4Xは満額、テスラ モデルS/Xは100万円越えの一方で、BYDなどの中国車は35〜45万円程度にとどまるなど車種間での“差別”は広がったが、いずれにせよ、日本でのEVの伸びに大きく貢献していることは違いない。
Bloomberg NEFによれば、新しい技術の導入が始まりそのシェアが5%を越えると、その後数年で急激な拡大が進むとされる。北欧の各国、ドイツ、中国などはこの好例である。一度5%を越えると、5%から15%までに3年以上かかった国はないという。
(2024年3月記事:https://redcloudfs.com/electric-cars-pass-the-tipping-point-to-mass-adoption-in-31-countries/)。
このまま進めば、早ければ来年2027年には日本でもシェア5%を超え、その後、さらに伸びる可能性があると、筆者は考えている。
背景には、これまで取り組みが遅れていた日本のメーカーのEVのラインアップが増加してきたこともある。外国車も含むが、1月から10月までに日本で発表・発売された新型車57件のうち、BEVが設定されたのは21件あった。

スズキの軽EV「新型e SKY」 出典:スズキWEBサイト
特に、日本では軽EVが重要なポイントとなる。先行した中国BYDのラッコは2026年10月18日時点で、国内累計受注台数が2,002台を突破と発表されている。そして、日本の軽自動車の本命として、スズキの「新型e SKY」が登場した。日本でのBEV拡大のゲームチェンジャーになるかも、と期待を込めて書いておく。
一方で、水を差すようなニュースも入って来ている。
拡大したばかりの、EV補助金を減額するというのである。現行の6割から8割まで補助を減らす方向で、130万円の上限は一気に50万円下げられる可能性がある。報道によると、財務省幹部はそれどころか「いつまで補助を続けるのか、出口戦略が必要」と語っているとされる。補助を続けたい経産省と消費減税の財源を探す財務省のバトルにも見える。
しかし、兆単位のガソリン補助を続けてきた化石燃料支援策から、脱炭素化施策への重要なターニングポイントである。単なる補助とひとくくりせず、化石燃料依存からの脱却に資する、明らかに質の違う施策として堂々とEV拡大を進めてもらいたい。
プロフィール
エネルギージャーナリスト
日本再生可能エネルギー総合研究所(JRRI)代表
北村和也
エネルギーの存在意義/平等性/平和性という3つのエネルギー理念に基づき、再エネ技術、制度やデータなど最新情報の収集や評価などを行う。
SOLAR EXPO ONLINE
RANKING
MAGAZINE
PRESS















