「負担上回る便益あり」JPEA 2050年の太陽光を読む
2017/09/15
太陽光発電協会(JPEA)が『JPEA PV OUTLOOK 2050』を発表した。日本を代表する太陽光発電事業者団体として、はじめて示した2050年への道標。それは、国内外の現状と国際情勢の変化を見据えた、実現可能な未来予想図だ。
エネルギー政策に持続可能性を
「3E+S」から「3E+2S」へ
JPEAは、「2050年200GWは最終到達点ではなく、1つの通過点であり、太陽光発電は200GWを超えて成長していかなければならない」とする。
『JPEA PV OUTLOOK 2050』では、その理由を次の3点に集約する。
Ⅰ「脱炭素社会」の実現
Ⅱ「エネルギー自給率」大幅向上
Ⅲ「持続可能な社会」の実現
とくに「持続可能な社会」については、国のエネルギー政策において、充分には検討されてこなかったテーマだ。
現行の『エネルギー基本計画』(2014年4月閣議決定)では、「安全性(Safety)を前提とした上で、エネルギーの安定供給(Energy Security)を第一とし、経済効率性の向上(Economic Efficiency)による低コストでのエネルギー供給を実現し、同時に、環境への適合(Environment)を図ることがエネルギー政策の要諦である」とされ、「3E+S」が基本となっている。
『JPEA PV OUTLOOK 2050』では、これらに持続可能性(Sustaina bility)を加え、「3E+2S」にすべきだと訴える。まさに、その通りだろう。
▼太陽光発電の最終到達地点 200GWを大きく超えて
国民負担を上回る大きな便益がある
もちろん、低炭素・持続可能社会を実現するためには、太陽光だけでなく、風力・水力・地熱・バイオマスなどの再生可能エネルギーを総動員していかなければならない。それを当然とした上で、JPEAでは、太陽光発電は他の再エネの先導役であり、成長をリードしていくべき電源であるとも考える。
その理由は、「純国産のエネルギー資源として賦存量が最も多い太陽エネルギーを直接活用でき」、「近年、コスト競争力の向上が目覚ましく、将来、最もコスト競争力のある電源の1つになる可能性が高く」、「地域偏在性が少なく、国内のどの地域でも導入が可能であり」、「腕時計やモバイル機器の充電用、住宅用等の人の活動域から、宇宙開発、メガソーラーまでの幅広い用途、またあらゆる場所で活躍できる」とともに、「長期的な観点ではFIT制度等に由来する国民負担を上回る大きな便益が期待できる」からだとする。
いずれも重要な視点だが、とくに「国民負担を上回る大きな便益」には、目が向けられるべきだろう。これまで、一般には国民負担(コスト)ばかりが大きく取り上げられる傾向があっただけに、それを上回る便益(ベネフィット)が明確に示されたことは心強い。
国が進める『エネルギー基本計画』の見直しにあたっても、ぜひ重視してほしい視点である。
▼日本にとって太陽光発電を基幹電源に育てる意義と便益
1)自家消費分を含む発電量。設備利用率を15%(2017年度以降)、出力低下率を年率0.5として算定。
2)国内全電源の総発電量に対する比率。
3)国内全電源の総発電量。自家消費、送配電ロス等を含む。2015年度は実績(資源エネルギー庁のエネルギー需給実績(確報))。2030年度は長期エネルギー需給見通し(資源エネルギー庁、2015年)。2050年度はJPEAが算定(電化推進シナリオ)。
4)太陽光発電による発電時の温暖化ガス削減量。長期エネルギー需給見通し(資源エネルギー庁)の前提を参考に算定。
5)2015年度の国内温暖化ガス総排出量(13.2億CO2トン)に対する、太陽光発電による温暖化ガス削減量の比率。
6)太陽光発電による温暖化ガス削減量を貨幣価値に換算(実質)。長期エネルギー需給見通しにおけるCO2対策費を参考に算定。
7)太陽光発電による一次エネルギーとしての化石燃料の削減を原油換算で表した。太陽光発電1kWhで削減される化石燃料を9.3MJ、原油1KLを38.2GJとして算定。
8)太陽光発電による化石燃料消費削減量を金額(実質)で表した。燃料価格等の前提は長期エネルギー需給見通を参考に算定。
9)自給率向上への貢献の指標として、国内の最終エネルギー消費量に対する、太陽光発電による発電量を比率で表した。
10)固定価格買取制度に基づく太陽光発電による電力の買い取り費用総額(消費税等を除く)。インフレ率1%を前提に、2017年の実質金額で表した。
取材・文/廣町公則
『SOLAR JOURNAL』vol.22より転載