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世界の入札、日本の入札。出力抑制がコスト低減を阻む

世界の入札、日本の入札
出力抑制がコスト低減を阻む

価格低下を後押ししているのは、世界各地で実施されている太陽光や風力の入札で、最安値は驚くべき水準になっています。太陽光を例にとれば、昨年10月にサウジアラビアで1.78セント/kWhという入札価格がでています。もちろん、中東と日本では、日射量や土地代等の違いがありますから、日本と安易に比較できませんが、ドイツや英国などと、日本の自然エネルギーのコストについては比較が可能でしょう。

そして、そういった国と比べても、日本の価格は2倍から3倍、洋上風力では6倍です。例えば、日本で2017年度から導入された2MW以上の太陽光の入札結果では、落札額は最安値17円台でした。日本の自然エネルギーが国際水準と比べて高いのは、紛れもない事実です。しかし、そこには様々な理由があります。まず、効率的な入札制度実現のためには、事業リスクをできるだけ排除し、公平公正に競争できる環境を整える必要があります。

日本では、系統利用が制限されていたり、たとえ事業化しても、無制限無補償の出力抑制などがあるため、思い切った価格を提示することはできません。また、太陽光の将来的な大量導入の見通しが示され、安定した量の継続した入札が告知されていれば、次回、次々回も見通して競争的な応札ができるのですが、そういった大きな見通しもありません。

さらに、日本の場合は、土地の造成などの工事費が非常に高く、欧米に比べ人件費は安いのに、より多くの人数や長い工期がかかり、設置コストが高くついているという状況もあります。産業そのものが成熟し、民間が努力する余地がでてくれば、土地造成や設置にかかるコストについては効率化されるでしょう。

しかし、出力抑制や系統利用、安定した入札制度の実施などは、市場を支える政策的・制度的枠組なので、政府が事業環境整備に取り組むことが必要です。入札で安値を更新している国や地域は、立地条件の違いだけでなく、事業安定性を確保した制度を導入しているのです。

PROFILE

公益財団法人 自然エネルギー財団 事業局長
大林 ミカ氏

2011年、公益財団法人自然エネルギー財団の設立に参加。財団設立前は「国際再生可能エネルギー機関(IRENA)」で、アジア太平洋地域の政策・プロジェクトマネージャーを務めた。


撮影・取材・文/廣町公則

SOLAR JOURNAL vol.24より転載

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