売電と自家消費を両立「次世代ソーラーシェアリング」農作物も全量買取
2018/08/10
売電と自家消費を組み合わせた「次世代型ソーラーシェアリング」が登場。新規就農のリスクを減らし、新たな雇用とエネルギーを生み出して、地域に貢献するという新たな試みがスタートした。
4つの新たな試みで
地域貢献の「場」を創出
スマートブルー株式会社(静岡県静岡市葵区)が、ソーラーシェアリングの設備を活用した「次世代モデル農場」の運営を開始した。次世代に向けた意欲的な試みを、4つも同時に実施しているのがポイントだ。1つずつ見ていこう。
①自家消費用蓄電池
ソーラーシェアリングでは、発電した電力をすべて売電する「全量売電」のケースが多い。しかし、このモデル農場では、自家消費用の蓄電池を設置。売電するだけでなく、一部の発電設備をオフグリッドにして自家消費も行う。同社はこれを「FIT法による全量売電とオフグリッドが合わさったハイブリッドソーラーシェアリング」と呼んでいる。
②ICT
作物の栽培を補助するために、施設内の気温や湿度などを監視・制御する最新の農業ICT機器を採用。無線カメラや、灌水(かんすい)装置の制御盤、井戸水の電動汲み上げポンプ、ハウス側面のビニール開閉装置などのほか、太陽光発電の発電量や故障の監視まで、1つのシステムで完結している。これらの機器は、太陽光発電の自家消費分の電力で動作する。
③低リスク
設備の導入コストは、すべて発電事業者が負担。上記の太陽光発電システム、自家消費用蓄電池、農業ICT機器だけでなく、高単価作物の苗木や、それを育てるためのポットに至るまで、通常であれば就農者が負うコストを、太陽光発電事業に投資する出資者が負担する。さらに、収獲された高単価作物は、全量を買い取るスキームを実現。新規就農者が低リスクで事業参入できる。
④防災拠点機能
自家消費用の太陽光発電システムと蓄電池を組み合わせることで、災害時の停電など有事の際にも、井戸用ポンプや夜間照明、コンセントが利用可能。非常時には、これらを地域の住民に対して無償開放する。これにより、農場が地域の防災拠点としての役割を担える。
新たな試みを開始したソーラーシェアリングのモデル農場(出典:スマートブルー株式会社)
この農場は、長らく耕作不能な状態が続いていたが、今回のシステムを導入することで新規就農を実現。また、農作物の収穫時には、地域の子供などにも体験してもらい、農業学習の場としても利用していく予定だという。農地として使われていなかった土地を有効活用し、雇用とエネルギーを生みだして、学習の場、さらには非常時の防災拠点としての場を、地域に創出した形だ。
同社はこれを「コミュニティ型次世代ICT農業モデル」と名付け、さらなる取り組みを推進していくとしている。