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2024年も続く世界の太陽光発電の急拡大と見劣りする日本

太陽光発電の世界市場は2023年に過去最大の伸びを見せた。それと比較すると、日本の導入速度は劣って見える。原因はどこにあるのか、政府の対応も含めてまとめてみた。

2023年新規導入容量の6割が中国、
全施設の4割近くを占める

世界の太陽光発電は、昨年2023年に過去最大の急伸(+447GW、+87%)を見せたが、その勢いは衰えていない。2024年も500GWを越える新規導入が見込まれ、各国とも順調に増加で推移している。脱炭素を目指すとともに、化石燃料高騰の痛手を経て、安定的な自国の電源を確保する動きが加速しているからである。

一方で、日本での導入は一言でいって“冴えない”。年末には、総導入容量でインドとドイツに抜かれて世界5位に転落することは確実である。

下のグラフを見ると、太陽光発電の2023年の450GWに迫る新規導入のうち、中国一国で6割近くを占めていることがわかる。今や、世界の太陽光発電は製造から設置まで中国を中心に回っていると言って過言は無い。

2023年の世界の太陽光発電施設の新規導入容量(国別) 出典:SOLARPOWER EUROPE 2024

また、世界のトータルの設置容量は1,624GW(1.62TW)となり、全体の容量としても前年を38%も上回った。実際の発電量も大幅に増加している。

太陽光発電急増の背景は冒頭でも触れたが、脱炭素電源や自国電源としての高い価値に加え、各種のデータで、太陽光を中心とした再エネ電源が化石燃料や原発に比して確実に安価になったことが、最大のポイントであろう。また、蓄電池の普及が進んできて需要に対して柔軟な対応が可能になってきていることも大きい。

今年は500GW超の追加で、
世界の総容量2TW越え確実

2024年も後半に入ってしばらく過ぎたが、太陽光発電に関するデータの多くが昨年の勢いの持続を示している。下記グラフ、「SOLARPOWER EUROPE 2024」の年間予測でも、低位461GWから高位の647GWまでと昨年実績を上回って成長が見込まれている。

2024年以降の世界の太陽光発電施設の新規導入量の予測(単位:GW) 出典:SOLARPOWER EUROPE 2024

仮に中位の544GWとすると、昨年比プラス22%となる。おととし2022年に、初めて太陽光発電の施設容量が1TWを越えたことがニュースとなったが、わずか2年で倍増の2TWを越えることになる。

ドイツは2024年末までに
総導入容量100GWを目指す

2012年のドイツ版FIT制度での買取価格低下を期に一時期太陽光発電が停滞していたドイツが、エネルギー高騰を経て再度太陽光発電がブームとなっている。昨年には、年間目標の10GWを大きく上回るおよそ100万か所、15GWの導入があった。

ドイツの太陽光発電施設の新規導入容量の推移と目標 出典:ZEIT ONLINE

今年に入っても好調はキープされている。IWR(再生可能エネルギー国際経済フォーラム)の統計では、8月末までに今年の目標10MWを越える設備がすでに導入されている。件数で見てもここまで73万件超で、昨年の15GWを上回るペースになる。

ちなみにドイツの1件当たりの平均設置容量はおよそ14kWと年々小さくなっており、これは近年、家庭用の屋根上への設置が増加していることによる。昨年に続き年間目標を大幅に超えることが決まったドイツでは、年末にはトータルの導入容量100GWの大台越えをうかがっている。

勢いに欠ける日本の太陽光発電、
ついに世界5位に転落へ

一方、日本の導入容量であるが、太陽光発電協会の統計で見ても、この3年間は毎年およそ6GWを越える程度で推移している。中国の250GW越えは別次元としても、世界の伸びを考えるとあまりにも貧弱である。世界全体に占める割合も、8年前に10%を割り込んだ後急落しており、今年は2%を下回る可能性が十分ある。

この結果、長年、太陽光発電施設の総導入容量で保持していた世界3位以内の位置から脱落することが確実となった。2023年末時点での順位は、1位:中国、2位アメリカ、3位日本90.4GW、4位インド90.1GW、5位ドイツ5位83.0GWであった。昨年末にはすでに4位のインドにほぼ並ばれており(別の統計ではインドが3位)、急成長するドイツはこのままいけば日本を上回り、日本の5位転落は決定的である。

では、なぜこんなことになってしまったのであろうか。発電施設の適地の縮小、出力制御の拡大、系統連系の不足などいろいろ考えられるが、政策によって解決できる点は決して少なくない。

FIT/FIPによる再エネ導入容量 出典:資源エネルギー庁

上のグラフを見てもらいたい。これは、第7次エネルギー基本計画の策定のため、政府が今年8月末の会議で示した一番目の資料『我が国のグリーントランスフォーメーションの加速に向けて』の12ページに載せられたものである。

同ページでは、「DX による電力需要増に対応するため」と条件づけられたうえ、お決まりの「再エネと原子力への転換を推進する必要」と書かれている。しかし、グラフの注釈には、「FIT/FIP制度等により再エネの導入拡大を進めてきたが、足元では導入速度がやや鈍化」とあり、“再エネに頼れないこと”を強調している。
実は、この右隣に原発の将来の設備容量(特に2050年から急減)が示されている。

つまり、「電力の急増には、(政府が頑張っても増えない)再エネには頼れず、原発でカバーしなければならない」ことを“データ”でわからせる意図がはっきり見て取れる。知る人が見れば、このグラフには最近急増している非FIT電源が抜けていることがすぐにわかるのだが。

系統や出力制御の問題など、再エネ拡大に対する政府の取り組みが遅れていたり、サポートが不足していたり、を感じることは少なくない。つまり、政府の再エネ主導に対する本気度の不足である。仕事柄、政府の委員会などに出る専門家や学術経験者などと議論する機会が多いが、ある方は今政府が進める系統用蓄電池の推進も、真意は原発の余剰分の融通のためだと話す。

世界は、自国で生産でき、より安く、技術が確立した、安全な電源として再エネ電源をさらに大きく取り入れようとしている。その中で、わざわざ高く、柔軟性が無く、さらにSMR(小型モジュール炉)やアンモニア発電のような開発途上のものを優先することはまったく理解できない。
それによって、太陽光発電などの再エネが停滞するようなことがあるならば、まさに本末転倒である。

プロフィール

エネルギージャーナリスト
日本再生可能エネルギー総合研究所(JRRI)代表
埼玉大学社会変革研究センター・脱炭素推進部門 客員教授

北村和也

エネルギーの存在意義/平等性/平和性という3つのエネルギー理念に基づき、再エネ技術、制度やデータなど最新情報の収集や評価などを行う。
日本再生可能エネルギー総合研究所公式ホームページ

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