再エネ創出に向けた「ダイナミックプライシング」を実現! グローバルエンジニアリングが上げDRの独自サービス
2023/10/27
小売電気事業者のグローバルエンジニアリングは9月、再エネ出力制御時に蓄電池に充電することで、電気料金を値引きする新サービスを開始する。再エネ電気の有効活用とともに、需要家の電気料金の低減にも貢献する。
初期費用ゼロで蓄電池を設置
独自システムで出力制御時に充電
全国で小売電気事業を展開するグローバルエンジニアリング(福岡県福岡市)は今年9月、再生可能エネルギーの出力制御が実施される時間帯に蓄電池を充電する運用によって、電気料金を割引する新サービスを開始した。
同社が電気を供給している需要家の敷地内に蓄電池を設置し、独自のシステムによって充放電を最適に制御する。蓄電池の設置費用は同社が負担し、蓄電池の運転監視や保守・メンテナンスも行う。エネルギーの供給だけでなく、エネルギー関連設備の設置や運用保守などを一貫して提供するエネルギーサービスプロバイダ(ESP)事業と位置付けている。
蓄電池による「上げDR」
需要創出で再エネを有効活用
(出力抑制時の電力量料金の割引イメージ。出典:グローバルエンジニアリング)
新サービスの概要は次の通り。一般送配電事業者によって再エネの出力制御を実施する時間帯が公表されると、同社が需要家に設置した蓄電池に対して充電を指示する。蓄電池が充電を行うと電気の需要が新たに生まれるため、再エネの電気を有効活用できるとともに、出力制御量の低減にも役立つ。
電気の供給に合わせて需要を増やすことを「上げDR(デマンドレスポンス)」といい、再エネを無駄なく使うための新しい需要のあり方として注目されている。これまでも、九州などでは電気が余る昼間に工場の稼働を増やすといった「上げDR」が実施されてきた。蓄電池による「上げDR」は、生産調整などの必要がなく取り組みやすいのがメリットだ。
ダイナミックプライシングを実現
非化石証書付き有料オプションも
日本卸電力取引所(JEPX)のスポット価格は、出力制御が実施される時間帯には1kWhあたり0.01円となる。同サービスではこのメカニズムに着目し、出力制御の実施時に蓄電池に充電した電力量(kWh)に対して、電力量料金単価を1kWhあたり1円割引するという。
電気の需要と供給のバランスに応じて電気料金を柔軟に変動させる仕組みを「ダイナミックプライシング」という。電気の需要が多いときには電気料金が上がり、需要が少ないときには電気料金が下がる仕組みだ。
「再エネの出力制御時に電気料金を割引することによってダイナミックプライシングを実現します。蓄電池を最大限活用して、再エネ電気の有効活用と顧客の電気料金の抑制に貢献していきたい。今回の第一弾に続き、今後も第二弾、第三弾とサービスを企画していく」と、同社の企画担当者は力を込める。出力制御時に蓄電池に充電した電力量に対しては、非化石証書を付帯してCO2排出量を実質的に相殺する有料オプションサービスも用意しているという。
来年4月には、蓄電池を設置していない需要家に対しても、出力制御時に電力量料金を値引きするサービスを開始する。斬新な電気料金サービスによって需要家に付加価値を提供し、再エネの普及促進、カーボンニュートラルの実現に向けた取り組みを推進していく同社から目が離せない。
DATA
取材・文:山下幸恵(office SOTO)