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出力制御量の低減対策、火力発電の最低出力30%に引き下げなど。年度内とりまとめ

再エネの出力制御低減に向けて、経産省が火力発電の最低出力の引き下げなどの対策に乗り出す。電力エリア間で余剰電力を融通するルールも見直す。今年度中に対策パッケージをとりまとめる見通しだ。

新設火力の最低出力を30%へ
最新鋭設備のスペックを反映

(各月ごとの出力制御の実施量及び率について。出典:経済産業省)

再生可能エネルギーの出力制御を低減するため、経済産業省が火力発電の最低出力を引き下げるなどの対策をとる考えを明らかにした。昨年以降、再エネの出力制御を実施するエリアが急速に拡大していることなどを受け、5月29日に開催された経産省の有識者会議で制御量を低減する対策を議論した。

発電量がエリアの電力需要量を上回る場合には、優先給電ルールに基づいて出力制御が実施される。優先給電ルールでは、火力発電の出力を下げるなどしても発電量が需要量を上回っている場合に、太陽光・風力の出力制御を行うことになっている。そのため、火力発電の出力をさらに低下させれば、太陽光・風力の出力制御を低減できる可能性がある。

今回の有識者会議では、新設の火力発電所の最低出力を現状の50%から30%に引き下げることを検討するとされた。30%の根拠としては、LNGコンバインドサイクル(ガスタービンと蒸気タービンの複合発電方式)による最新鋭の火力発電所の最低出力が25%程度であることを挙げている。既存の火力発電所の最低出力は50%のままとし、発電設備を更新する際に30%を適用する考えだ。

最低出力の引き下げにあたってはガイドラインを改定する必要がある。会議では、今年度内に検討を進め、ガイドラインなどの改定を経て、早ければ2024年度中の施行を目指すとされた。

エリア間の電力融通も強化
広域で再エネ余剰を受け入れへ

(優先給電ルールに基づく対応。出典:資源エネルギー庁)

このほかに、電力エリアの垣根を超えた取り組みも検討された。現在の優先給電ルールでは、あるエリアで発電量が需要量を上回る場合、他エリアへの送電を行うが、その際、受電する他エリアでも火力発電などの出力を制御する。今回の議論では、他エリアでの出力制御の対象をさらに拡大することで、再エネによる送電を受け入れやすくしてはどうかと提案された。

また、今後の検討事項として、出力制御時間帯において蓄電池やEVの充電などを促進することなども挙げられた。今年度内をめどに、再エネの出力制御低減に向けた新たな対策パッケージをとりまとめる見通しだ。

DATA

経済産業省ホームページ

「太陽光義務化元年」と呼ばれる2023年。パネルの屋根設置や制度の見直し、蓄電池の導入促進といった国の新たな政策にどのように対応するべきか?来年度に導入される発電側課金はどのような仕組みなのか?地方自治体の政策担当者や再エネシステムの専門家を登壇者としてお迎えし、今後のビジネスチャンスを読み解きます。

 


文:山下幸恵(office SOTO)

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