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都市部の地域脱炭素に解決策! 伊丹市がCO2ゼロ庁舎を実現した「ソーシャルクレジット」とは?

再生可能エネルギーの拡大にハードルを感じている都市部の自治体にとって、脱炭素をどのように進めていくのかは大きな課題だ。兵庫県伊丹市は、自然豊かな飯南町、阪南市と連携し、CO2削減だけでなく、地域経済の好循環を生み出す取り組みをスタートした。

地域活力につながる新たな価値
「ソーシャルクレジット」がカギ

兵庫県伊丹市、島根県飯南町、大阪府阪南市は、それぞれの地域資源を活用した資源循環・環境保全などの交流によって、地域経済の好循環とCO2削減の両立を目指している。取り組みのカギを握るのは、新たな価値をもったカーボンクレジットだ。

そもそも、カーボンクレジットとは、太陽光発電の導入や森林の保全などによるCO2削減量・吸収量を、証書という形に変えて取引する仕組み。カーボンクレジットとして広く取引されているものにはJクレジットがあり、Jクレジットを創出し、売却することで収益が得られ、新たな取り組みの原資にできるなどのメリットがある。

伊丹市、飯南町、阪南市では、それぞれの地域資源を活用して創出した新たな価値をもつカーボンクレジットを「ソーシャルクレジット」と呼んでいる。クレジットの創出や活用によって、CO2削減だけでなく、環境保全活動やエコツーリズムなどの地域交流という新しい社会的価値を生み出すことができるからだ。
 

税金ではなくクレジット売却収益で
伊丹市庁舎のR5年度CO2ゼロを実現

(令和5年度のCO2ゼロを達成した伊丹市庁舎。出典:伊丹市)

伊丹市、飯南町、阪南市は今年8月、ソーシャルクレジットを活用した第一弾の取り組みとして、官民共創プラットフォームを提供するソーシャル・エックス(東京都渋谷区)の仲介によって、伊丹市庁舎のCO2ゼロ化を実現した。

昨年11月に開庁した伊丹市庁舎は、太陽光発電の導入をはじめ、建築物省エネルギー性能表示制度(BELS)によるZEB Ready認証の取得、再エネ100%電気の調達、電気自動車と再エネ電気を同時活用したゼロカーボンドライブなどによってCO2削減に取り組んできた。

(伊丹市庁舎のCO2ゼロ化の取り組みイメージ。出典:伊丹市)

これらの取り組みでどうしても削減できないCO2排出量に対して、飯南町の植林活動や阪南市の海洋保全活動によって共同創出したソーシャルクレジットを活用することで相殺。これによって令和5年度の伊丹市庁舎のCO2ゼロ化を達成したという。

ソーシャルクレジットの購入資金には、住宅用太陽光発電の共同購入プロジェクト「たみまる太陽光クラブ」で伊丹市が今後創出するJクレジットの売却収益を充てる。「税金や補助金ではなくJクレジットの販売収益を財源としたのは、取り組みを持続可能なものにするため」と伊丹市総合政策部グリーン戦略室の齋藤槙吾氏は説明する。
 

地域活力につながる社会モデルに
民間企業との共創にも挑戦

(ソーシャルクレジットの取り組みの関係図。出典:伊丹市)

都市部の伊丹市では、太陽光発電の導入などのCO2削減に取り組んでいるものの、CO2吸収源の確保に課題を感じていた。その一方で、姉妹都市である飯南町は豊富な森林資源をもち、大阪湾に面した阪南市は海洋資源に恵まれている。「それぞれの自治体がもつ地域資源は異なるが、CO2削減と地域経済の循環を両立させたいという思いは共通だった」と齋藤氏は振り返る。

伊丹市は、飯南町で利用する植林用の苗木を保育するほか、阪南市の海草保全活動、それぞれの地域の特産品の発信なども行うという。「地域脱炭素に不可欠なCO2吸収の取り組みを、森林や海などの自然に乏しい当市だけで行うのは不可能。飯南町や阪南市の豊かな地域資源を活用して新たな地域活力の創出・拡大に貢献し、お互いにウィン・ウィンとなるモデルを作りたい」と齋藤氏は語る。

今後は、第二弾の取り組みとして、民間企業とソーシャルクレジットの共創・創出にもチャレンジしていくという。「森林や海の保全には課題も多く、都市部の自治体と自然豊かな地域が連携することによる新しい地域脱炭素のモデルを作っていきたい。関心のある企業はぜひ問い合わせてほしい」と齋藤氏は力を込める。
 

話を聞いた人

兵庫県伊丹市
総合政策部グリーン戦略室
齋藤槙吾氏
 


取材・文:山下幸恵(office SOTO)

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