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快進撃を続けるドイツの太陽光発電の課題、日本でも参考となるその対策とは

ドイツの太陽光発電新設の勢いが止まらない。2023年の政府目標9GWを3か月以上前倒しで達成し、暗い材料が続いたドイツのエネルギー情勢で、ひたすら明るいニュースとなっている。今回のコラムでは、最新データに基づくドイツの再エネ電源の現状と今後の課題についても触れる。圧倒的に太陽光発電の割合が高い日本で起きた課題は、追いかけるようにドイツでも発生することになる。再エネ先進国として蘇るドイツの苦闘とその解決策を日本でも参考にしたい。

109日早く年間目標を達成した
ドイツの新規太陽光発電

 下の折れ線グラフは、ドイツ政府の太陽光、風力発電施設の2023年の年間導入目標に対する日々の達成率を示している。

ドイツの太陽光と風力発電の導入、政府目標の達成率(9月17日現在) 出典:ZEIT Online

 今年の目標は、太陽光発電(黄色)が9GW、風力発電(水色)が3.9GWである。太陽光発電の達成率は9月17日現在102%となり、前述のとおり年末から3か月以上も早い達成となった。このままいけば、過去最大の年間10GW越えとなる可能性が高い。一方、風力発電導入の達成率はいまだに45%で、目標に届かないと見られている。
 背景は、このコラムでも書いてきたように、2年前から続いたエネルギー費の高騰である。電気代は、家庭で2倍近く、企業向けでは倍以上の値上がり時期があった。防衛策として、技術的に確実で導入時間が短い太陽光発電に目が向いたのは、ある意味で必然であった。

太陽光発電の推進力で
再エネ電源率の高止まり

ドイツの原発と太陽光、風力発電の発電量の推移 出典:Fraunhofer ISE

 2023年は、ドイツが脱原発を実現させた象徴的な年でもあった。
 上図のように、この数年はドイツのVRE(太陽光+風力発電)の発電量は、かつての原発の最大発電量をほぼ越えている。発電量の面でも、再エネが原発からのバトンタッチを実現したことが確認できる。
 ドイツでの脱原発は化石燃料の復活をもたらすことなく、再エネの拡大と相まって、再エネ全体の電源率を押し上げることになった。

ドイツの再エネ電源率の月別推移 出典:ZEIT Online

 グラフは、月間の再エネ電源率の推移を示している。
 今年の5月以降は4カ月連続で60%を越えている。これまでの6割越えは、非常に風が強かった202年2月に一度記録しただけであった。

ドイツが直面する
今後の課題とは

 下の図は、ドイツの太陽光発電施設の導入実績と2023年以降の目標値を示している。
 2012年に一度ピークがあり、その後2015年前後のどん底を経て、今年10GW越えを見通す復活を見せている。2013年からの落ち込みは、ドイツ版FIT制度であるEEGの2012年の大幅改正が原因であることはよく知られている。

ドイツの太陽光発電導入の実績と2023年以降の目標 出典:ZEIT Online

 2035年に全電力の脱炭素化を目指すドイツは、さらなる太陽光発電の拡大目標を掲げている(上図参照)。2026年からは、毎年22GWという高い数値である。
 空前のブームといわれた今年の2倍程度の導入達成は簡単ではない。すでにソーラーシェアリングや水上太陽光などの工夫が取りざたされている。
 一方で、急激な太陽光発電拡大の弊害も表に出てきている。太陽光発電の出力制御が起き始めているのである。これまで出力制御は先に普及した風力発電が主であったが、太陽光発電の急増によって、昼間のピーク需要を超える供給が目立ち、制御に結び付いている。

日本が参考にすべき
いくつかの解決策

 日本と違い、ドイツでは、風力発電が先行し太陽光発電とのバランスを取ることで、発電量の「昼と夜の差」や「季節の差」を埋めることができていた。しかし、再エネ電源が6割を超え、新たな解決策が必要となっている。
 まずは新設のボリューム維持である。風力発電も含む今後の高い導入量達成のため、設置での規制緩和が進められている。
 またドイツでは、北部が再エネ発電の大生産地、南部が大きな需要地とされていて、南北で電力を融通するための太い系統線の必要性が訴えられていた。計画はたてられたものの、なかなか実施に至らなかったが、ここにきてやっと実現に動き出している。
 この他、水素への投資も急激に盛んになっている。主要な目的の一つは余剰再エネ電力を使った水素製造で、長期間、大量のグリーン水素を貯蔵することである。
 最後に一つ、先述した再エネ発電施設の出力制御であるが、ドイツでは制御された分も原則として発電側は対価を得ることができる。これは再エネ投資を冷やさないためにも大変重要な仕組みである。

 ドイツは、自ら誤った対ロシアのエネルギー政策で、経済的にも大きなダメージを受けた。しかし、もがきながらも脱炭素に向けての新たな大胆な政策を取り始めている。
 脱炭素は、地球環境のために必須なだけでなく、すべての国の将来の経済活動を左右する重要事項となった。エネルギー高騰の先にどんな未来を描くことができるのか、今、まさに正念場を迎えている。

プロフィール

エネルギージャーナリスト。日本再生可能エネルギー総合研究所(JRRI)代表。

北村和也

エネルギーの存在意義/平等性/平和性という3つのエネルギー理念に基づき、再エネ技術、制度やデータなど最新情報の収集や評価などを行う。
日本再生可能エネルギー総合研究所公式ホームページ

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