2030年度にはオフサイトPPAが最多、次いでオンサイトPPA。FIT制度活用の太陽光発電(住宅用及び事業用)は縮小を予測
2024/09/24
株式会社矢野経済研究所は、日本の太陽光発電市場の現状分析と見通しを発表した。この記事では同研究所のリリースを引用しながら、概要を解説する。
FITによる導入が縮小
PPAの導入は拡大継続
矢野経済研究所は、国内における2023年度単年度の太陽光発電導入容量を5,040mW(ACベース)と推計。2012年7月に創設されたFIT(Feed-in Tariff。再生可能エネルギーの固定価格買い取り制度)による太陽光発電設備の導入容量が縮小したため、前年度からの大幅な減少を見込んでいる。FIT制度により導入された太陽光発電設備の中でも事業用の減少は著しく、2021年度以降、導入容量の縮小が続いている。特に低圧区分は、2020年度より自家消費型の地域活用要件が設定され、発電電力量の少なくとも30%の自家消費等が求められるようになったため、認定容量の減少幅が大きくなっている。
一方、FIT制度に依存しない事業形態であるPPAの導入は拡大している。オンサイトPPAは脱炭素化の潮流や電気代高騰を背景に導入が進み、2023年度の非住宅オンサイトPPA導入容量は870mW(見込)と全体の17.3%まで拡大すると見ている。また、オフサイトPPAについても、環境価値を重視する需要家による導入が進展したため、2023年度の非住宅オフサイトPPA導入容量は445mW(見込)と全体の8.8%を占めると推計した。
需要家の脱炭素志向が
PPAの導入を後押し
■オンサイトPPA
事業形態別に太陽光発電導入容量を見ていこう。オンサイトPPA(非住宅)の導入容量は日本国内での導入が本格化した2020年度以降、順調に拡大を続けており、その増加ペースは年々加速。企業等の需要家による脱炭素に向けた取組みの活発化に加えて、近年の電気代高騰が拡大の要因となっているようだ。オンサイトPPAでは、電力を使用する建物の屋上や敷地内にPPA事業者が太陽光発電設備を設置・所有し、運転管理を実施。需要家は太陽光発電設備の初期費用や運転管理などが不要というメリットがある。
■オフサイトPPA
2022年度頃から国内での導入が本格化してきたオフサイトPPAは、環境価値に対するニーズの高まりを背景に導入容量が増加。オフサイトPPAは、需要家が電力を利用する拠点から離れた場所にPPA事業者が太陽光発電設備を設置・所有し、運転管理を行う。需要家は、オンサイトPPAと同様のメリットを享受できるほか、PPA事業者が施設規模の制限を受けずに大容量の太陽光発電設備を設置できるため、長期にわたり大規模な再生可能エネルギー由来の電力導入が可能となる。
なお、オフサイトPPAでは、大規模な太陽光発電所を設置し需要家に電力を供給するモデルのほかに、分散設置された低圧などの小規模な太陽光発電所から電力を供給するモデルがある。
出典 矢野経済研究所
2030年の導入容量は
6,049mWと予測
国内における2030年度単年度の太陽光発電導入容量は、6,049mW(ACベース)になると予測。オンサイトPPAやオフサイトPPAなどのFIT制度に依存しない事業形態での導入が増加することで、太陽光発電導入容量は2030年度にかけて徐々に拡大していくと分析している。特に、1案件あたりの導入規模が大きくなる傾向のあるオフサイトPPAの導入容量は増加ペースが早く、2026年度には単年度でオンサイトPPAの導入容量を越えるとしている。
一方で、FIT制度による太陽光発電設備導入容量の減少が続くことで、2030年度のFIT/FIP(Feed-in Premium)制度を活用した太陽光発電(住宅用及び事業用)導入容量は850mWと全体の14.1%まで縮小すると予測する。
【キーワード】
PPA(Power Purchase Agreement)とは、PPA事業者が自己資金等によって再生可能エネルギー発電所を開設して所有・運営・維持し、発電所で発電した電気を需要家に対して長期・固定価格によって供給する仕組みを指す。需要家以外の第三者が発電設備を保有することから第三者保有モデルと呼ばれている。PPAの契約期間は20年などの長期にわたるケースが多く、需要家は契約期間中、電力と環境価値などに対して固定単価の料金を支払う。
DATA
取材・文/四谷陽晴