【リサーチ】住宅向けの太陽電池市場は成長軌道にあるが、人口減少に伴って縮小傾向になる⁉
2025/01/21
株式会社富士経済は新しい動きがみられる太陽電池と関連市場を調査し、その結果を「2024年版 太陽電池関連技術・市場の現状と将来展望」にまとめた。結果紹介の後編では、住宅関連に関する項目を中心にリリースを引用しながら概要を紹介する。
減少する住宅用
拡大する総市場
2024年度の太陽電池市場における住宅用は継続して成長するだろうが、2026年ごろから減少に転換。住宅用の長期的なトレンドは頭打ちが予想されている。太陽電池関連の市場規模自体は縮小傾向となるとしているが、住宅用と入れ替わるように非住宅用の出荷が増えることで2040年度に向けて市場は拡大していくとしている。
住宅用の2024年に関する詳しい分析を紹介しよう。電気料金高騰対策として住宅用の需要が増えるだけでなく、ZEH(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)や蓄電システムとのセット販売の増加、そしてPPAサービスの普及などが市場を後押し。2025年4月からは東京都で新築住宅(延床面積2000㎡未満の中小規模新築建物)への太陽光パネルの設置が義務化される。東京をはじめ、地方自治体による普及促進策の広がりが普及の追い風になるとみられる。しかし、長期的には人口減少で新築住宅の着工件数が減少することに伴い市場は縮小していくと富士経済は読んでいる。
カーポートに占める
シェアは10%程度へ
続いて、カーポートの市場予測を紹介しよう。なお、言及するカーポートは屋根部分に太陽光パネルを設置した発電設備であり、住宅用と非住宅用を含む。
2024年度のカーポート市場は、市場の約8割を占める非住宅用が伸び、前年度比4.3%増の360億円が見込まれる。今後も非住宅用が市場をけん引し、2040年度の市場規模は962億円と予測している。
住宅用は主に戸建住宅に設置され、現状ではカーポートの総設置台数の2%程度がソーラーカーポートと推測されている。競争激化によって価格が下落しているため、価格で見る市場は短期的には縮小するとみられる。しかし、将来的にはソーラーカーポートからEVに直接充電するなどの用途拡大が期待され、全カーポート台数の約10%にまで設置台数は拡大すると予想している。
出典:富士経済
非住宅用は、2021年度から始まった建築確認申請の簡略化などの各種規制緩和によって本格的に市場が立ち上がった。電気料金高騰の影響もあり、2023年度から2024年度にかけては自家消費を中心としたPPA(第三者所有モデル)による導入が増加。現状の設置場所は、郊外型の大型商業施設の駐車場や大規模事業所などが多い。
富士経済は、市場拡大の要因を以下のように分析している。CO2排出削減に向けた取り組みの一環として、企業や地方自治体などによるソーラーカーポートの導入が活発化。環境省による「二酸化炭素排出抑制対策事業費等補助金」の一環として政策的な支援が進められている。将来性については、駐車場敷地内でのソーラーカーポートと屋根設置や垂直設置型太陽光発電を組み合わせることで大規模化が進む可能性があると示唆している。
設置義務化により
市場は拡大を継続
屋根や窓ガラスなどの建材に組み込まれた太陽電池である建材一体型太陽電池(BIPV)も注目市場の一つだろう(ただし、フィルム基板系BIPVは含まない)。
2021年度ごろから大手ハウスメーカーが大容量BIPVと蓄電システムを標準搭載した新築戸建住宅の販売を増やし、屋根材一体型BIPVを中心に市場は拡大。政府が、2030年までに新築住宅における太陽光発電設備搭載率を現状の2割程度から6割へ引き上げることを目標としているのも追い風になるだろう。先述したように東京都で新築住宅における太陽光発電設備の設置義務化が開始されるなど、市場は拡大基調で推移するとみられている。ただし、一般的な据置型の太陽光発電システムより高価であり、価格の問題でBIPVの取り扱いに消極的な事業者も多いようだ。
出典:富士経済
非住宅用BIPVは、日本では先進的な建築物で部分的に導入されているものの、市場へのインパクトは限定的と分析している。政策目標では新築公共建築物等のZEB化について言及されていることを考慮すれば、中長期的には公共施設からBIPV導入が浸透し、脱炭素対策ニーズの高い大手企業などによって民間施設への広がりが期待されると富士経済は推察する。
■ワード解説
垂直設置型太陽光発電
従来型の太陽光発電システムが太陽の南中高度に合わせて太陽光パネルを設置する(傾斜型)のに対し、東西向きに設置。太陽高度が低い朝夕の時間帯を発電量のピークとすることが可能な上、設置に必要な単位面積が非常に少ないことや積雪による過重の影響を受けにくいことなどが利点である。
DATA
取材・文/四谷陽晴