政策・制度

太陽光発電、盗難保険金が急増 持続的な保険提供が困難になる可能性も

日本損害保険協会は今年2月、太陽光発電設備の事故発生状況に関する調査研究をとりまとめた。金属ケーブルなどの盗難による保険金が、5 年前の約20 倍に急増し、持続的な保険提供が困難になる可能性もあることがうきぼりとなった。

<目次>
1. 多発する 太陽光発電設備の事故
2. 盗難事故による 発生保険金が急増
3. 再発防止策・復旧支援サービスの活用で 安全管理の向上を

 

多発する
太陽光発電設備の事故

太陽光発電設備の事故発生状況に関する調査研究結果(出典 日本損害保険協会)

脱炭素社会の実現に向けて、設置が進む太陽光発電設備。屋外のさまざまな場所に設置されているが、「屋外設置」という特性から多くのリスクにさらされ続けているのも事実だ。台風や豪雨などの自然災害に加えて、金属ケーブルの盗難なども後を絶たない。

日本損害保険協会は、損害保険会社7社における「企業向けの太陽光発電設備向け火災保険」の事故発生状況について調査した。今後も事故の増加傾向が続いた場合、持続的な保険提供が困難になる可能性もあるとして、事故発生自体を未然に防ぐ取り組み(ロスプリベンション)の重要性がより一層高まっていると指摘している。

盗難事故による
発生保険金が急増

発生保険金の年度別推移(出典 日本損害保険協会)

日本損害保険協会がとりまとめた調査報告書の主なポイントをチェックしていこう。最も重要なポイントは、近年、「発生保険金」が急増傾向にあるということ。たとえば「発生保険金の年度別推移」における2021年度の結果を見ても、4年前の4倍近くに増えている。(2017年度を1.0とした場合の比率値)。発電量を示すグラフが緩やかに上昇しているのに対し、大口と大口以外を合わせた保険金は2018年度の段階で前年比2倍、2019年度には2017年度に比べて3倍におよんでいる。

盗難事故による発生保険金の年度別推移(出典 日本損害保険協会)

さらに注目すべきは、「盗難事故による発生保険金の年度別推移」の結果だ。グラフは2017年度から2020年度まで緩やかな上昇を見せているが、2020年度から2022年度にかけて急上昇。2017年度に比べて、約20倍もの水準に達している。自然災害による発生保険も増加するなか、“直近の動向”として盗難による発生保険が急増した点に注意を向けるべきだろう。

再発防止策・復旧支援サービスの活用で
安全管理の向上を

ロスプリベンション対策の例(出典 日本損害保険協会)

日本損害保険協会が作成した調査報告書には、統計データに加えてロスプリベンションの対策例もまとめている。損害保険会社やそのグループ会社によっては、事故発生防止のための調査、改善提案を行うサービスや、発生した事故に対する再発防止策の提案・早期復旧を支援するサービスなどを提供するとともに、“安全管理の向上”のための選択肢にもなっている。

日本損害保険協会では、引き続き防災・減災意識の向上に役立つ取り組みを推進していくとしている。自然災害・盗難による事故を未然に防ぐ対策を講じることを、これまで以上に求められる時代と言えそうだ。

盗難対策として注目
盗難補償も味方につける守り神

太陽光発電所でのケーブル盗難が深刻な社会問題となっている現在、注目を浴びている商品がある。アースコム社が独自開発した「サンキーパー」だ。高い耐食性を誇る特殊素材スーパーダイマを採用したサンキーパーは、一号柱を完全に覆うことで物理的な盗難を防止するとともに、堅牢さを感じさせる外観は高い抑止力を発揮する。さらに、盗難保険に加入できなかった事業者でも、サンキーパーの導入によって補償制度を活用できる可能性が大幅に広がるのも強みだ。

ケーブル盗難対策と補償の充実を通じて、太陽光発電事業の安心と持続可能性を支えるソリューションであるため、中古市場においても価格を高く保つことができ、再び活況を呈することになるだろう。

DATA

日本損害保険協会
太陽光発電設備の事故発生状況に関する調査研究結果


取材・文/椚山啓治

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