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再エネ電源が武器になる! 進化する地域、進化する自治体新電力

パリ協定をベースとした脱炭素社会化へ向けて、エネルギーの「地産地消」に注目が集まっている。そこで自治体や地域新電力はどのような行動を取るべきだろうか。エネルギージャーナリストの北村和也氏が再エネ業界の先を読む、好評連載コラム第11回。



「地域活性化のための連絡会」を
環境省と資源エネルギー庁が共催

10月18日、東京・新橋で『地域における温暖化対策を通じた地域活性化の推進のための連絡会』という名の会合が開かれた。環境省と資源エネルギー庁が共催をして、今年度は環境省が事務局を務める。最近は省庁間の垣根を越えての協力体制が進んでいて大変結構である。一方、連絡会のタイトルはお役所らしいとも言える分かりにくさだが、目的は次のように書かれている。少し長くなるがまとめたうえで引用しておく。
 
前提は、『今年6月、政府は「パリ協定にも続く成長戦略としての長期戦略」を閣議決定している。その最終的な到達点は「脱炭素社会」であり、取り組みとして地域の脱炭素化をビジネスベースで実現していくことが重要である』としている。
 
そのうえで、『(本連絡会は)、地域に根差した事業体である自治体が関与する地域新電力会社が地域の再生可能エネルギー事業の実施にあたっての課題等について意見交換を行う場を設け、地域の再生可能エネルギーのビジネスを後押しし、地域循環共生圏づくりを推進することを目的とする』と記されている。
 
つまり、パリ協定をベースにした成長戦略の実現には地域の脱炭素社会化へのビジネスが欠かせず、自治体が関与する地域新電力が地域の再生可能エネルギーのビジネスを押し進める存在となるので、意見交換の場を環境省と資源エネルギー庁が作ったという構図である。
 
さらに言い換えると、地域新電力が地域の経済循環の鍵であり、長期的な成長のための重要なプレイヤーであることを、政府機関が認めたということである。エネルギーの地産地消による地域経済循環こそ地域活性化、ひいては日本全体の活性化のポイントであるという考え方は、筆者をはじめ、地域や自治体新電力に関わる多くの関係者がこれまで主張してきたことでもあった。
 
連絡会には、自治体、および自治体が関わる地域新電力の関係者を中心に100名近くが参集した。筆者は、自治体が関わる地域新電力をサポートする組織、具体的には、このコラムで何度か紹介している「地域活性エネルギーリンク協議会」の代表理事としてオブザーバー参加した。
 


地域の主役の1つとしての存在感

参加者名簿が配られていないため私的に数えただけであるが、自治体が関与する地域新電力(ほとんどに自治体が資本参加している)三十数社に加え、自治体からも同じ数に近い参加があったと思われる。中には、市長自ら参加したところもあった。ちなみに、コラムでも繰り返し取り上げた久慈市と同市も出資する久慈地域エネルギーは、台風19号の被害対応で欠席した。
 
少し驚いたのは、すでに自治体新電力が一定数あって、上京してこの会に参加したことと、そのうち10社ほどがこの1年以内にできたかこれから設立されようとしているということである。新電力ビジネスが厳しさを増し、例えば、旧一般電気事業者による取り戻し営業が激しくなっているにもかかわらず、である。
 
連絡会は仕切りの悪さから、最後になって「自己紹介」が付け加えられるバタバタぶりであった。しかし、これによって参加者の顔がやっと見えた。事業性について課題とする声も聞かれたが、それよりも多くの参加者が地域サービスや地域貢献という目的をはっきり掲げていたのが印象的であった。地域新電力の役割が、単に電気を小売りするだけではないことを証明する集まりにもなったといってよい。地元に根を張る新電力は、すでに新しい段階に入った。顧客獲得で安売りに疲弊する電気の小売会社としての新電力と地域活性化の旗を掲げる地域、自治体新電力とに大きく二分化されようとしているのかもしれない。
 

自治体、中小企業版の
RE100誕生

連絡会の10日ほど前、同じく東京の新橋で、再エネに関して大変重要な記者発表が行われた。「再エネ100宣言 RE Action」の発足に関するプレス発表である。
 
この「再エネ100宣言 RE Action」は、RE100の自治体、中小企業版というのが最もわかりやすいであろう。RE100とは、ご存知のように、企業活動に使う電気を2050年までにすべて再エネ電力で賄うことを目的とする企業の集まりである。世界で200社を超え、そのうち日本企業はほぼ8分の1の25社にまで増えている。RE100には自治体や中小企業、学校、病院は入れないため、今回の組織立ち上げを心待ちにしていた向きも少なくないという。
 
発足時メンバーは28団体。内訳は、自治体2つ、非営利団体6団体、中小企業20社となっている。自治体は2つと意外に少ないが、RE Actionの支援団体となるアンバサダーに、外務省や環境省、横浜市やさいたま市、浜松市、京都市の6団体が参加している。アンバサダー制度は、都市型の自治体や都道府県や中央官庁のみが入れるもので、あえて言えば、存在が大きすぎて再エネ電力100%の実現が簡単ではないという特徴も持っている。
 

参加自治体が示すこと

先に述べたように、スタート時にRE Actionに参加した自治体は2団体であった。
 
1つはさいたま市で、ここはアンバサダー制度にも参加している。人口130万人の大都市である。もう1つは、岩手県の久慈市、3万人余の地方の小都市である。いまだに紹介するときにNHKの朝の連ドラの「あまちゃんの舞台となった」と語られることが多い。ただし、コラムを読んでいただいている方には少しなじみがあるかもしれない。久慈市と市内に本社のある民間会社とが共同で出資して作った自治体新電力「久慈地域エネルギー株式会社」が存在している。このコラムの前段で書いた連絡会にも呼ばれていた。
 


進化する地方都市と自治体新電力

久慈市と久慈地域エネルギーは、再エネを中心フィールドとしてじわじわと進化を遂げてきている。
 
今回、久慈市が「再エネ100宣言 RE Action」に参加した2つの自治体の1つになったのは、決して偶然ではない。RE Actionに参加してもRE100同様に使用する電力を2050年までに再エネ電力100%にすることを約束しなければならない。久慈市は、自らが出資した久慈地域エネルギーの協力を受けながらその実現を図ることができるという強いメリットを手に入れている。実は、具体的な第一歩をすでに踏み出しているのである。
 
岩手県では県の企業局が多くの水力発電施設を持っている。発電した電気は、これまでは長期契約で東北電力だけが購入していた。しかし、電力自由化によって新電力もそれを扱うことができる道が開かれた。今年の夏、県はプロポーザル形式の入札を行って水力発電からの電力を県内の新電力にも開放した。久慈地域エネルギーは、これに応札して岩手県企業局が保有する1つのダムからの電力を来年の春から購入することになったのである。ダムは久慈市内にある500kWに満たない小型のものであるが、列記とした再エネ電源である。地域の新電力が地元の水力発電施設からの電気の購入を入札で落としたのは全国で初めてではないかと思われる。
 
かくして、久慈市は自治体新電力を通して堂々と再エネ電力を使うことができることになる。久慈市は、今後、久慈地域エネルギーとともにPPA(電力購入契約)やTPO(第三者保有の再エネ施設)などのシステムをうまく使いながら、地域での再エネ拡大も進めることにしている。
 
一方、今年の2月には久慈市は横浜市と「再エネの融通に関する協力協定」を結んでいる。大都市横浜市で不足する再エネ電力を将来久慈市が一部でもカバーし、その代わりに大都市の保有する力である「人口」や「ファイナンス」のメリットを久慈市にもたらす相互互恵を目指している。お分かりだと思うが、横浜市のちょうど100分の1の人口しかない久慈市が互恵協定を結べている理由のひとつは、エネルギーの仲介ができる久慈地域エネルギーを有しているからでもある。
 

電力小売事業から
地域活性化事業へ

「安売り合戦」で疲弊する新電力間の戦いなど、ここにはとっくの昔に存在していない。地域の新電力は、再エネを武器として進化しているのである。
 
久慈市が久慈地域エネルギーを拠り所とするように、久慈地域の民間会社も地元の地域新電力を頼りにし始めている。民間企業にとって、RE100やRE Actionに参加することは、いずれ当たり前になる。というより、そうでない企業は落ちこぼれていくだろう。実は、久慈近隣地域であるものを生産し、全国的に販売しているある企業からRE100化の相談を受けている。その企業は、「久慈地域エネルギーがあるから、RE100化が考えられる」とはっきりと私に言った。
地元振興を目指す地域、自治体新電力は、新しいステップを確実に踏み出し、地域に対して明らかにポジティブな影響を与えているのである。
 


プロフィール

エネルギージャーナリスト。日本再生可能エネルギー総合研究所(JRRI)代表。

北村和也

エネルギーの存在意義/平等性/平和性という3つのエネルギー理念に基づき、再エネ技術、制度やデータなど最新情報の収集や評価などを行う。
日本再生可能エネルギー総合研究所公式ホームページ

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