政策・マーケット

コロナ禍で広がる経済への影響。世界と再エネの展望は「安全、安心」が開く

新型コロナウイルス感染拡大により緊急事態宣言が出された今、経済への影響が全国的に広がり、その影響は新電力にも届き始めている。今後の社会や再エネ運用に必要なのは、どのような取り組みなのだろうか。エネルギージャーナリスト・北村和也氏による連載コラム第15回。

※本記事は、4月20時点の情報に基づいて執筆されたものです。

コロナ自粛が地域にもたらすもの

4月といえば、普通は新しいことが始まる明るい季節である。

ところが、今年はコロナ禍で一変してしまった。少しだけ個人的な筆者の話をする。4月2日に会計事務所で会社の経理チェックをするために都内に出る機会(ちなみに私は神奈川在住)があり、合わせて地域新電力立ち上げなどの複数の打ち合わせをした後は、神奈川県を出ていない。電車にも乗っていない。

この間に、緊急事態宣言が全国に及び、感染者も1万人を超えた。仕事はすべてWEB会議などに取って代わった。これはこれで、移動時間が無駄にならず悪くはない。コロナ後にも一定割合の打ち合わせは、WEBになる予感がする。

既に、いくつかの地域新電力関連との協議と情報収集を行ったが、そこでわかったことがある。

最初に緊急事態宣言が出た人口の大きな都市圏や感染者が激増している地域だけでなく、ほぼ全国で経済的な影響が進んでいる。また、電気料金の支払い猶予の相談が小売電気事業者に届き始めている。

筆者が行ったヒアリングの地域はまだ一部であるが、前述したように、感染者のやや少ない東北地区、特に現時点で感染者ゼロの岩手県でも料金支払い猶予を求める声が聞かれている。

これは、ある意味当然のことで、都市部での外出激減と違って、地方では気を付けながらも人と会う機会は無くなっていないが、飲食店などの売り上げは全国に広げられた緊急事態宣言を待たずして同様に激減している。

筆者が関与している地域新電力でも、支払い困難な場合の相談を受け付けるなど対応を始めている。問い合わせのほとんどが飲食店関係で、客足が大きく減っている状態が地方にもかなり及んで来ていることが十分想像できる。


新電力の支払い猶予対応と課題

ご存知のように、経済産業省は電気料金の支払い猶予に関して迅速かつ柔軟対応にするよう3月27日に要請し、4月7日の緊急事態宣言を受けて再度行っている。

経産省が対象としているのは、「国が設けている緊急貸付制度の利用者で、一時的に電気・ガス料金の支払いが困難となっている人」で、まず、「1ヶ月繰り延べた後も、電気・ガス使用者の状況に応じて柔軟な対応を実施」するとなっている。旧一般電気事業者(いわゆる大手の旧来からの電力会社)では、WEBサイトで、これに合わせた告知を行っている。

政府が進めている緊急貸付制度は、窓口の人員不足、複雑な手続きなどで使い勝手が悪く、実際に融資にたどり着いたケースは必ずしも多くないと聞く。この辺りも、地域の新電力では杓子定規の適用は難しいし、それでは、地域の要請とずれてしまう。

一方で、支払い猶予の要求は今後確実に増えていく。もともと、地域の新電力はその基盤が強くない。今は、まだ余裕があっても、電力調達の支払いとのバランスを考えていくと、猶予をただ広げていくことはじわじわとリスクになりかねない。

地域の要請に適切に答えることは望ましいが、運転資金の余裕を拡大するなど事前にできる安全策は今から取っておく必要がある。

また、地域の新電力には、可能であれば、電気料金以外の地域サポートも検討してもらいたい。既に行われているとも聞く、子ども食堂や学童施設への金銭的な援助、細かいが妊婦のタクシー代(感染防止の観点)の支援などがある。コロナで売れ残りがちな地域の農産物など地域産品の販売や融通策なども一緒に考えられるといいだろう。

困難な状況だからこそ、地域の重要な一員としての役割を工夫し、果たしてほしい。
 

コロナ後の世界とエネルギー

コロナのような感染症は、根絶されることはほぼ不可能で、いったん収まった後も繰り返し警戒しなければならない状況はやってくるだろう。つまり、もう、コロナ前には戻れないということである。

エネルギーの観点から見ると、経済活動の停滞から全体の消費量が減ったり、原油価格が暴落したりするなどの影響がすでに出ている。一部から、経済的余裕が見込めない今、再エネ拡大の勢いが弱まるとの声も聞かれる。実際に太陽光発電施設などへの投資が減少しているという数字も出てきた。

筆者の考え方は、逆である。今回のコロナ禍は、多くの物理的なグローバル化を抑制する方向に働かせるであろう。目に見えるところでは、例えば、今後、海外旅行などの移動は全世界的に控えめに推移するのは確実である。

海外からの数千万人の来日を目指してきた日本政府の観光政策は大きく見直され、一種バブル的に稼いできた観光ビジネス業はとん挫する。人々は家での食事に慣れ、外食産業の完全復活は難しい。これらは、すべて「安心、安全」を強く求める心理が強く今後も残ることが予想されるからである。

コロナ禍は、一義的には平等に訪れている。もちろん、弱者や観光や外食、コンサートなどのエンタテインメント産業へのダメージはさらに計り知れない。しかし、いくらお金を持っていようと自由に外で遊びまわれるわけではない。自粛はすべての人に降りかかる。そして、感染するリスクはだれにでもある。

このような状況下では、安全、安心が第一の価値となる。今後、様々な選択が迫られるとき、決定的に重要なポイントは「安全、安心」になる。

無理矢理結びつけるつもりはないが、エネルギーも同様である。地球温暖化のリスクは、コロナ禍と同様にすべての人々に降りかかる。そのリスクに対応することは、コロナのリスク対応で私たちが経験していることと心理的に共通するのではないだろうか。

現在、コロナには、解決策はない。よって、自粛で耐えるしかない。再エネは、地球温暖化の決定的かつポジティブな解決策となりうる。

再エネのよって立つところは地域である。人々の目は、グローバルから地域に移りつつある。私たちは、自信を持って、地域で再エネを拡大し利用するというこれまでの取り組みを続けるべきである。そして、それは間違いなく強い支持を得ることができる。



プロフィール

エネルギージャーナリスト。日本再生可能エネルギー総合研究所(JRRI)代表。

北村和也

エネルギーの存在意義/平等性/平和性という3つのエネルギー理念に基づき、再エネ技術、制度やデータなど最新情報の収集や評価などを行う。
日本再生可能エネルギー総合研究所公式ホームページ

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