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“非効率”の定義とは? 石炭火力のフェードアウトについて議論スタート

7月初旬、にわかに石炭火力にスポットが当たった。政府は、非効率石炭火力を「2030年に向けてフェードアウトを確かなものにする新たな規制的措置」を導入する考えだ。第1回目の議論では、さまざまな意見が飛び交った。

事務局案は、規制的措置
“非効率”の対象発電所とは?

7月3日の梶山弘志・経済産業大臣の発言を受け、新たに石炭火力検討ワーキンググループが指導した。第1回目の8月7日は「非効率石炭火力のフェードアウトを巡る状況について」と題し、今後の方向性を定める議論が開始された。

事務局が打ち出したのは、規制的措置。ある程度の強制力を持たせ、非効率石炭火力を制限することでフェードアウトを狙う。しかし、この規制の対象となる“非効率”の定義はあいまいだ。省エネ法を基準とすると、現在、5割超の事業者がすでに石炭発電効率目標である41%を達成しているからだ。8月下旬以降、事業者への2回のヒアリングを通し、10月以降に基本的な方向性を整理する考えが示された。

省エネ法では、発電事業者に対し燃料種に応じた効率目標を設定している。2030年度に向けたベンチマーク指標は、石炭火力が41%以上、LNG火力が48%以上、石油火力が39%以上だ。

省エネ法上の発電効率は、バイオマス燃料などの混焼発電の方が発電効率が高く算出される。バイオマス燃料などのエネルギー量を、算出式から除外してよいとされている。このため、混焼発電の多い小型発電所の効率が高く、逆に大型発電所では低く算出される。

規制だけでなく補助策も
厳しい意見が相次ぐ

事務局の案に対し、委員からは厳しい意見が出た。2030年に石炭火力のフェードアウトという目標に対し、省エネ法を基準にするのは不適とする考えが多かった。そもそもフェードアウトの目的はCO2排出量の削減のため、石炭火力のCO2排出量を基準にすべきという声があがった。

さらに、個別に状況が異なる発電所に対し、一律に制限する規制的措置に疑問を投げかける動きもみられた。規制だけではなく、高効率発電所に更新するための促進策や補助策についても要望があった。

オブザーバーからは、石炭火力の多様な役割について言及された。新電力にとっての競争電源という側面や、停電などのトラブルから鉄鋼業などを守る自立電源としての顔も持つ。

方向性が定まったとは言い難い第1回目の議論となった。発電事業者に過度の負担を課すことなく、目標達成を促す制度設計になることを期待したい。2030年がゴールではなく、その後も見据えた長期的な議論が必要とされる。

DATA

第1回 総合資源エネルギー調査会 石炭火力検討ワーキンググループ


文:山下幸恵(office SOTO)

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