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バイデン新大統領が目指す再エネ政策|米国太陽光発電の需要供給はいかに?

バイデン新政権が誕生し、温暖化懐疑派であるトランプ前大統領によって後退してしまった米国の環境政策の復活、進展が期待されている。新大統領は、温室効果ガス排出量のネットゼロを目標に、クリーンエネルギーへの投資拡大に意欲的である。

※トップ画像:第46代アメリカ大統領に就任したジョー・バイデン氏 出所:The White House

脱炭素化へ期待高まる
バイデン新政権の誕生

2021年の年頭の挨拶では、「ハッピーニューイヤー!」の代わりに「ハッピーニュープレジデント!」と米国新政権成立と共和党から民主党への政権転換に期待が高まった。その期待を背負い、1月20日、ジョー・バイデン氏(民主党)が第46代アメリカ大統領に就任した。就任式後、新大統領は、初仕事として気候変動対策の国際的枠組みである「パリ協定」に復帰する署名を行い、過去4年間のトランプ前政権によって後退してしまった米国環境政策の「復旧」、そして「脱炭素化」へ、一気に舵を切り出した。


初仕事としてバイデン新大統領が著名した気候変動対策の国際的枠組みである「パリ協定」に復帰 出所:The White House

バイデン新大統領の選挙公約に「クリーンエネルギー革命のための計画の9つの主要要素」がある。その一つ目には、「トランプ氏が環境政策に与えた損害を元に戻すだけでなく、さらに速くより前進すること」を掲げている。また、他の主要要素には「2050年までに経済全体のネットゼロ排出量を達成する」、「クリーンエネルギーとイノベーションに10年間で4000億ドルを投資する」、「設備の電化・効率・およびオンサイトのクリーン発電などへの助成を通して2035年までに米国の建築ストックのCO2排出量を50%削減する」ことなどが含まれる。

アナリストが分析する
米国環境政策の経緯

太陽光発電産業に特化した市場調査を行う米SVPマーケットリサーチ社でチーフマーケットアナリストを務めるポーラ・ミンツ氏は、新大統領の環境政策についてこう述べている。

「トランプ前政権下では、すべての機関で反環境主義・気候変動懐疑的行動がとられました。これによって受けた損害から回復するには、何年もかかる可能性があります。損害の回復には、科学捜査研究分析と、着実で迅速なアクションが必要です。バイデン新大統領は、クリーンエネルギー、イノベーション、風力、太陽光、バッテリー、水力、炭素回収、原子力に10年間で4000億ドルを投資すると公約しています。

しかし、これらの行動を強化する法律が可決されない限り、トランプ前政権のように1回の選挙で目標を取り消し、進行を遅らせたり、逆転させたりすることができてしまいます。また、新政権がイノベーションへの意欲が高い点は、少し懸念しています。イノベーションに焦点を当てることは重要ですが、現在機能しているテクノロジーと合理的かつ迅速に実行可能なテクノロジーに投資することも重要なのです」。

ミンツ氏はこのコメントで、オバマ政権下で5億3500万米ドルもの融資保証を出しながら最終的に破綻してしまった米太陽電池ベンチャー、ソリンドラ(Solyndra)社の失敗例を教訓として取り上げている。

セル生産の拠点化復帰には
悲観的な見解

新政権が米国太陽光発電産業へ与える影響について、ミンツ氏は「モジュールの組み立て活動が増える可能性があります」と述べる。

「革新的な結晶および薄膜セル技術への資金投資は高く評価されますが、輸入関税の有無にかかわらずセル生産の増加は期待できません。その理由は世界的なセルの低価格と痛々しいほど薄いマージンのためです。太陽光発電業界が過剰生産能力の期間に入っているという事実は、しばらくの間セルの価格を低く抑えるでしょう。現在、化合物型太陽光パネルのトップメーカーである米ファーストソーラー(First Solar)は米国で唯一の主要なセルメーカーです。米国に十分なセル生産の基盤ができるまで、国内設置導入量の90%以上を輸入に頼ることになります。ですが、米国にセルの生産拠点を設立するには、数年かかるでしょう。

COVID-19のワクチンが記録的な速さで開発・生産されるのを見たばかりの政治家たちに、太陽電池の研究開発、パイロット運営、そして生産へと時間の過程を要する事実を説明するのは難しいかもしれません。この業界で妥当なマージンを確保するには、お金、時間、そして何らかの方法が必要です」と、米国内のセル生産の拡大を望むものの、数年間で米国が再び製造(供給)拠点となるのは難しいとしている。

再エネ展開の鍵は
前政権の税額控除

一方、需要面ではミンツ氏の見解は明るい。前トランプ政権下では、中国などから安価な太陽電池製品が大量流入したことにより、米国内で生産していた太陽電池メーカーは収益性が悪化し、次々と事業から撤退、または破綻に追い込まれた。そして、前トランプ政権は2018年1月、国内製造業を保護するため、結晶シリコン太陽電池 (CSPV)の輸入製品に対して4年間にわたり関税を課すことを決定した。


2015年北米最大の太陽光発電関連展示会SPI (Solar Power International) で演説をするバイデン米大統領
(出所:Steven Purcell for SPI 2015)(*この時点では副大統領)

ミンツ氏は、この関税がバイデン政権で打ち切られることを勧めている。太陽光発電設置にかかった投資額の30%を税額控除できる「投資税控除(ITC)」は、これまでも米国太陽光発電市場の重要な牽引役として市場拡大に大きく貢献してきた。しかし、この仕組みでは税額控除が2020年に30%から26%に、2021年に22%、そして2022年以後は10%(住宅用は0%)に漸減することになっている。ミンツ氏は、民主党が10年ぶりに支配する新議会のサポートのもと、再エネに対する2つの税額控除である投資税控除(ITC)と生産税控除 (PTC)の恒久的延長を可決することで、バイデン政権下で太陽光、風力、貯蔵の展開を加速することができると期待している。

PROFILE

モベヤン・ジュンコ

太陽光発電電池メーカーで7年間産業経験を積んだ後、2006年から太陽光発電調査会社米ソーラーバズでシニアアナリストとして活躍。2013年よりジャーナリストとして、米国の太陽光発電政策や市場トレンドに関する記事を日欧米のメディアに多数執筆。


文:モベヤン・ジュンコ

SOLAR JOURNAL vol.36(2021年冬号)より転載

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