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入札制度の問題点は? 2018年「太陽光発電の注目トピック」を振り返る

2018年、日本の太陽光発電業界で注目された、「未稼働案件のルール改正」「入札制度」「出力抑制」。この3つのトピックについて、環境エネルギー政策研究所(ISEP)所長・飯田哲也氏が改めて振り返る。

入札制度は手直しが必須
環境アセスも制度見直しを

2018年の日本の太陽光発電業界を振り返ると、①「未稼働案件のルール改正」、②「入札制度」、③「出力抑制」の3つが注目されました。



①について経済産業省は、昨年10月当初、未稼働案件30GW以上を買取価格の引き下げ対象にしていましたが、12月には2012〜2014年度の運転開始期限のない案件など10数GWに絞り込まれました。そのうち何割かが無くなるでしょう。経産省の関係者は「クレームが結構来た」と言っていました。このルール改正は、発電所の権利だけ売って利益を得た人に遡及しない不公平があり、損失を受けた人からのクレームでしょう。

入札制度については、手直しをすべきです。2017年の第1回は募集容量500MWに対し、保証金を払って認定まで至ったのが41MWにとどまりました。2018年上期の第2回は上限価格が非公表で、札割れを起こしてしまい落札がゼロでした。この原因をしっかり分析しなければいけません。特に第2回から価格を非公表にしたのはナンセンスです。第3回は募集容量を上回り最低価格も14.25円/kWhに下がりました。これは第2回で上限価格が分かっていたからです。つまり入札で上限価格非公表は意味がないのです。

入札制度の他の問題は、第2回保証金が高い上に支払いまでの期間が短すぎることです。落札した事業者が、第2回保証金を支払うまでの時間を充分に取る方が現実に沿っています。資金調達などの各種手続きだけで、3ヶ月くらいはすぐに過ぎてしまいます。

今後は環境アセスメントも入ってきます。環境省では「事業区画面積が100haに相当する出力を第一種事業の規模要件」つまり35MW前後の案件が対象で、条例アセスでもその7〜8割程度の規模(25MW程度)です。そんな大型案件はあまり残っておらず、カバー率が低すぎます。林地開発に環境の網を被せるべきです。同時に、法アセスの硬直性も修正すべきです。他方で、農地のソーラーシェアリングの場合、大規模な案件でも、基本的に環境アセスメント対象外とすべきでしょう。

③については、昨年は九州電力が出力抑制を実施しました。この問題では先陣を切っています。九電の計画では2月、3月の週末はすべて出力抑制の予定です。実際には、直前に需要と発電量予測から決めます。本質論では欧州型の「柔軟性」への移行が必要です。原子力よりも再エネを優先する方が市場的にも資源論的にも正論ですが、今の政治・政策では望めません。当面は「経済的補償」が実現するかが注目されます。

プロフィール

認定NPO法人 環境エネルギー
政策研究所(ISEP)

所長 飯田哲也氏

自然エネルギー政策の革新と実践で国際的な第一人者。持続可能なエネルギー政策の実現を目的とする、政府や産業界から独立した非営利の環境エネルギー政策研究所所長。Twitter:@iidatetsunari


取材・文/大根田康介

SOLAR JOURNAL vol.28(2019年冬号)より転載



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