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【CROSS TALK】太陽光は自家消費時代へ── いまパワコンに求められる性能とは?

自家消費型太陽光発電システムの導入が、各地で急速に進んでいる。そこで問われているのが、パワーコンディショナの性能だ。どんな性能を重視すべきなのか? 自家消費システムのパイオニア、Wave Energy(ウェーブエナジー)とエネルギークリエイティブに聞いた。

産業用の完全自家消費型太陽光発電システムの構築にあたり、ファーウェイ製パワコンの評価が高まっている。その理由は、どこにあるのか? EPCとして、3年前から自家消費案件に取り組んでいるエネルギークリエイティブ。パワコンやキュービクルの販売とともに、自社開発の遠隔監視・制御システムなどで知られるウェーブエナジー。それぞれの立場から考える、自家消費システムならではのパワコンの要件とは?

逆潮流を発生を防ぐ

「はじめて自家消費案件を手掛けた頃は、ファーウェイ製ではない他社製のパワコンを採用していました。当時は、自家消費に関する知見が十分でなかったこともあり、パワコンに起因するトラブルにはいろいろと悩まされました」

そう語るのは、エネルギークリエイティブの代表取締役社長・渡邉徹氏だ。そのとき同社が取り組んでいたのは、高圧受電施設への完全自家消費システムの導入。そこには、売電を目的にしたFIT案件にはない自家消費型太陽光ならではの難しさがあったという。


エネルギークリエイティブ株式会社 代表取締役社長 渡邉徹氏

「自家消費システムにおいては、発電した電力が系統側に流れ込む〝逆潮流〟を防がなければなりません。そのためにはRPR(逆電力継電器:Reverse Power Relay)を設置する必要があるわけですが、これが頻繁に逆電力を検知して、発電を止めてしまうことがあったのです。RPRが作動したのに気付かず長時間の発電停止を起こし、本来なら得られていたはずの発電電力量(キロワットアワー)を逃していました。また、発電設備を復旧するにも人の手を要したので、設備管理者の負担ともなっていました」(渡邉氏)

ここにあるのは、RPRとパワコンの制御速度の問題だ。たとえRPRが正しく機能していても、パワコンがそれに対応できなければ、不要な発電停止が生じてしまう。自家消費システムでは、パワコンに対して、より高い性能と対応力が求められているのだ。

エネルギークリエイティブでは、その後、ファーウェイ製パワコンを中核とする自家消費向けソリューションを採用することで問題を解決した。

「RPRの作動による発電停止がなくなり、自家消費率が著しく向上し、お客様の電気代削減に大きく貢献することになりました。大事なのはどれだけ買電量を抑えられるか、キロワットアワーで考えていくということです。単純にキロワット(設備容量)で他社システムと比較すると発電設備の設置費用単価は上がりますが、キロワットアワーで比較すると、投資回収年数が、それまでの他社システムより短くなることも分かりました」(渡邉氏)

発電電力=消費電力を追求

この自家消費向けソリューションを提供したのが、ウェーブエナジーだ。同社の高畑俊樹氏(受配電システム事業本部 技術部 再生可能エネルギー技術室長)はいう。
「弊社では、FITが始まる前から太陽光発電システムの構築に取り組み、自家消費向けソリューションの開発を続けてきました。現在、エネルギークリエイティブ様に提供しているソリューションは、ファーウェイ製のパワコンに弊社独自の機器〝みまもる君〟などを組み合わせたものとなります。みまもる君は、RPRとマルチメーターを一体化した製品で、逆潮流の防止はもちろん、消費電力と発電電力を極限まで近づけることを可能にしています。これにより、消費電力に完璧追従して発電を行なうことができ、自家消費率を大幅に高めることができるようになったのです」(高畑氏)


株式会社Wave Energy 受配電システム事業本部 技術部 再生可能エネルギー技術室長 高畑俊樹氏

一般に、発電電力が消費電力を超えると逆潮流が発生してしまい、RPRが作動して、パワコンの機能をストップし発電を停止させることになる。しかし、これが頻発すると発電量が落ち、投資効率も下がるので、できるだけRPRは作動させたくない。そのため、消費電力の少ない時間帯に合わせて発電電力の上限を設定したり、消費電力に追従するシステムの場合でも追従レベルを80%以内に抑えるなど余裕をもった設定にするのが一般的だった。だが、これは発電量をあえて低めに抑えておくということであり、キロワットアワーを無駄にしていることに変わりはない。

みまもる君は、通常は別々に設置されるマルチメーターとRPRを一体化することで、両機器間の誤差をなくし、高精度な高速処理を可能した。これによって、発電電力を消費電力に高レベルで追従させつつ、RPRによる発電停止をぎりぎりまで回避できるソリューションをつくりあげた。

高畑氏は、このソリューションはファーウェイのパワコンがなければ成り立たなかったとして、次のように話す。
「消費電力と発電電力がイコールになれば、買電する必要がなくなり、自家消費率は100%に近づきます。しかし、これを実現するためには、レスポンスが速く、正しい値で出力してくれるパワコンが不可欠です。変動する消費電力に高レベルで追従させつつ、RPRを作動させないためには、正確な出力制御が高速でできるパワコンでなければならないのです。自家消費向けソリューションを構築するにあたっては、いろいろなメーカーのパワコンで様々な試験を実施させてもらいましたが、ファーウェイの製品が一番でした。もともと通信系が強いメーカーだけあって、弊社の機器との連携にも優れ、抜群に安定した性能を発揮してくれたのです」(高畑氏)

実際、エネルギークリエイティブを通して、このソリューションを導入した店舗では、「99%近い追従ができているところも珍しくない」(渡邉氏)という。

高速追従制御でRPR動作を抑え自家消費率を向上

高速追従制御で発電電力量を最大化(ファーウェイ製パワコンを使用)

待機電力に合わせた設備の場合


逆潮流とならないよう、消費が少ない時間帯に合わせた発電出力の設定が必要。


追従速度が遅いため、余裕を持って、消費電力の70~80%程度の追従制御としている。


負荷が急変して逆潮性が発生する時にRPRが動作して発電が停止する。

 

屋根上設置への配慮

自家消費向けのパワコンに求められる性能は、「高速・高精度な追従」を実現できるということだけではない。見落とされがちだが、重要なポイントとして高畑氏が挙げたのが、「騒音を出さない」という性能だ。

「自家消費システムは、工場やスーパーの屋根上など、人のいる建物に設置されるものです。また、それらの施設は、民家に近いところにある場合も少なくありません。ですから、野立ての太陽光発電設備とは違って、静粛性が求められるのです。通常、騒音の最大の発生源となるのは、冷却ファンです。しかし、ファーウェイ製パワコンは、独自の自然放熱システムによりファンレスを実現しているので、ほとんど音がしません。この静粛性は大きなメリットです」(高畑氏)

一方、EPCとして数々の自家消費案件を手掛けてきた経験から、渡邉氏が指摘するのは、屋根上の面積や形状に合わせて「ストリングが自在に組める」ということだ。

「パワコンの入力回路数が少ないと、太陽光パネルの配列に制約が生じてしまいます。その点、ファーウェイのパワコンは、マルチストリング方式のMPPT(最大電力点追従制御:Maximum Power Point Tracking)の回路数が多く、いろいろな形にストリングを組むことが可能です。レイアウト設計の自由度が高いので、お客様それぞれの屋根上に最適な提案をすることができるのです」(渡邉氏)


大手ホームセンターへ設置。太陽光パネル設置枚数が多くなることで、買電量を抑えることに繋がるほか、パネルの総面積が増えることにより遮熱効果も広く得られる。


大手スーパーマーケットへ設置。消費電力を追従する能力が高いため、他社システムと比較して、太陽光パネルを多く設置できるなど広い屋根を有効活用できる。

 

信頼性とサポート体制

ファーウェイのパワコンは、施工の現場でどう受け止められているのか。太陽光の現場を最前線で見続けてきたエネルギークリエイティブの尾前秀樹氏(企画営業部 O&M管理課主任)は、次のように話す。
「まず第一に、ファーウェイのパワコンでは、不具合に悩まされることがありません。故障率の低さは定評のとおり素晴らしいもので、お客様の建物に設置し、起動させるときにも不具合が発生したということがないのです。これは現場の人間にとって、大変ありがたいことです。連系日当日のスケジュールが狂うことがありませんし、精神的にもラクですね。ここにストレスが生じないということで、最終的には施工品質の向上にもつながっていきます」(尾前氏)


エネルギークリエイティブ株式会社 企画営業部 O&M管理課主任 尾前秀樹氏

また、尾前氏は、ファーウェイのサービス体制について、「日本の会社に引けを取らないどころか、あまりにスピーディーな対応で驚かされることもあります。どんな相談にも、柔軟に、素早く対応してもらえるので助かっています。先日も相談があって電話をしたら、2コールで出てくれ、その場で解決しました」と笑顔を見せる。

不具合や故障の少なさ、アフターサポートやサービス体制の充実ぶりに関しては、渡邉氏も高畑氏も口を揃えて評価する。

究極の自家消費に向けて

最後に、自家消費型太陽光発電市場における両社の今後の取り組みについて聞いた。

「ウェーブエナジーとしては、太陽が沈んだ夕方以降の負荷(消費電力)への対応をテーマに、蓄電池を入れたシステムの実証を自社工場にて進めているところです。また、弊社は、クラウドに発電量のデータを収集しておりますので、それを活かした環境価値への変換など新しいシステムの構築についても考えています」(高畑氏)

「エネルギークリエイティブでは、引き続き、自家消費システム導入のお手伝いをしていくとともに、VPPや自己託送などを視野に入れた、より広範なエネルギーマネジメントに関わっていきたいと思っています。また、私どもも、蓄電池を組み入れたシステムを早期に展開していくことこそ、太陽光の進むべき道だと考えています。蓄電池については、ファーウェイさんにもぜひ頑張っていただきたいところです」(渡邉氏)

両社からの言葉を受けて、ファーウェイの馬伝龍氏(デジタルパワー事業部 チャンネル管理部部長)はいう。


華為技術日本株式会社/ファーウェイ・ジャパン デジタルパワー事業部 チャンネル管理部部長 馬伝龍氏

「弊社も現在、メーカーとして皆さんの期待に応えられるよう、自家消費向けの製品開発に力を注いでいます。蓄電池については、先ごろ住宅用を市場投入したところですが、産業用に関しても開発はすすんでおりますので、ぜひご期待いただければと思います。パワコンについても、今後、より自家消費に適した製品を展開していく計画です。より良い製品、より良いサービスの提供を追求していくことが、これからも変わらない我々の責務だと考えております。パートナー企業の皆様とともに日本の太陽光発電市場の発展をサポートし、ひいてはカーボンニュートラルの実現に向けて貢献していければ幸いです」(馬氏)

自家消費時代の本格的な幕開けに際し、各社の取り組みがどんな成果をもたらすことになるのか、期待は膨らむばかりだ。

DATA

自家消費向けパワコン
SUN2000-20KTL-M3


ファーウェイが3月から販売を開始した200V三相の最新自家消費向けパワコン。太陽光発電システムに起因する火災を未然に防ぐAFCI(アーク故障回路遮断)機能も搭載されている。

問い合わせ

華為技術日本株式会社/ファーウェイ・ジャパン
東京都千代田区大手町1-5-1 大手町
ファーストスクエアウエストタワー12F
TEL:03-6266-8051


取材・文・撮影/廣町公則

SOLAR JOURNAL vol.37(2021年春号)より転載

Sponsored by 華為技術日本株式会社/ファーウェイ・ジャパン

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