脱炭素

住宅用太陽光発電システムの搭載率は何%? 戸建と集合住宅では大きな開き

住宅の脱炭素化に欠かせない太陽光発電システム。国内では今、どれくらい普及しているのだろうか。また、さらなる導入の拡大を成功させるためのヒントとは何か。その答えを見つけるために、住宅用太陽光発電システムの搭載率にスポットを当てる。

戸建住宅への搭載率は1割超に
JPEAは新築着工数の影響も懸念

住宅用太陽光発電、中でも、戸建住宅への導入ポテンシャルには相当量が残されているとされる。このことは、環境省が行った再生可能エネルギーの導入ポテンシャル調査で明らかになった。(参考『日本の再エネ導入ポテンシャルは、あとどれくらい残されているのか?』)

一方で、2020年度末時点で全世帯のうち太陽光発電システムを搭載している住宅は6.9%であったという。2022年3月に公表された、環境省の「令和2年度 家庭部門のCO2排出実態統計調査」では下図の通り報告された。

(建て方別太陽光発電システムの使用率。出典:環境省)

住宅の建て方別にみると、戸建住宅では12.3%と1割を超えるが、集合住宅では0.2%に止まっている。換言すれば、戸建住宅においても、8割超の住宅にはまだ太陽光発電システムが搭載されていないことになる。

では、足元の住宅用太陽光発電システムの導入件数はどうなっているのか? JPEAによると、2017〜2020年度の4年間の住宅用太陽光発電システムの導入件数は、年平均14.3万件ほどで推移を続けている。

(出典:太陽光発電協会 経済産業省 第71回 調達価格等算定委員会 資料1)

上図からは、FIT制度が始まった2012年7月〜2014年3月末の27.2万件をピークに、住宅用太陽光発電システムの導入件数が下落しつつあることが見てとれる。JPEAはまた、住宅着工件数が減少傾向にあることを指摘し、これに伴って住宅用太陽光発電システムの導入件数もさらに減っていく可能性があると懸念を示している。

ZEH拡大にも不可欠な太陽光
投資回収の不安払拭がカギに

さて、住宅用太陽光発電システムに関しては、第6次エネルギー基本計画でもZEH(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)の導入拡大を掲げている。ZEHとは、創るエネルギーが使うエネルギーを上回る住宅のことで、創エネを担う太陽光発電システムの設置が大前提だ。

同計画では、2030年度以降に新設される住宅にはZEH基準の省エネ性能を求め、また、2030年に新設される戸建住宅の6割に太陽光発電システムを搭載することも目指すとしている。

しかし、2020年度末時点では、新築の注文戸建住宅に占めるZEHの割合は、全体で24.0%。これに関連して、環境省が行ったアンケート結果が興味深い。

(PVの導入を希望しない理由。出典:経済産業省・環境省)

このアンケートによると、ZEHに不可欠な太陽光発電システムについて、初期投資や投資回収年数の不安を払拭できず、導入に至らなかったという回答が多かったとされた。戸建住宅オーナーのこうした疑問や不安を解消することが、さらなる太陽光発電システムの導入拡大につながるのかもしれない。

DATA

環境省「令和2年度 家庭部門のCO2排出実態統計調査」


文:山下幸恵(office SOTO)

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