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台風20号で淡路島の風車が倒壊、日本の風車は果たして”危険”か?

この夏、台風により淡路島の風車が倒壊した。根元から折れた姿に衝撃を受けた人も多いだろう。なぜ、あの風車は倒壊してしまったのか? 日本の風車の安全性について考える。

倒壊した古風車は
旧基準で建てられたもの

あの風車が設置されたのは、2002年。強大な台風など、日本の気候風土を考慮した安全基準は設けられていない時代だった。近年散見される風車事故は、同様に、古い基準だけで建てられた古い風車によるものが大半だ。

台風20号によって倒壊した淡路島の風車


出典:経済産業省
設備の概要:発電出力600kW、タワー長37m、回転径45m、最大高さ59.5m
メーカー/三菱重工業
設置者/ほくだん

一方で、いま国内で導入が進んでいる風車は、日本の自然特性を考慮した新しい規格に基づいている。そこには、国際基準よりも厳しい安全性が盛り込まれているという。

風力発電のさらなる導入拡大には、社会との共生が不可欠だ。1つの倒壊事故をもって、誤った認識を広めてはならないだろう。
同時に、新たな安全神話を紡ぎだすわけにもいかない。事実は、どこにあるのか。日本の風力発電の安全性追求の歴史を紐解いてみたい。

台風・乱流・落雷を考慮した
日本型風力発電ガイドライン

日本における風力発電の導入量は1990年代後半から伸びはじめ、2007年度末には累積167万kW、設置基数は約1400基を数えるに至っている。しかし、導入量の増加に伴い、台風(強風)や乱流(風の乱れ)、落雷など、日本ならではの課題も明らかになってきた。

こうした状況を受けて2008年、NEDO(新エネルギー・産業技術総合開発機構)を中心に作成されたのが「日本型風力発電ガイドライン」だ。風力発電設備を設置する事業者を対象に、台風・乱流等の影響評価と風車の選定手法、風車タワーの設計に関する指針などが記されている。落雷に関しても、多様な雷保護対策が示され、日本での風力発電事業には欠かせないマニュアルとして役立てられてきた。

それまでの風車も国際規格を踏まえてはいたが、国際規格は主にヨーロッパの環境に照らしたものであり、日本の自然環境を考慮したものではなかった。淡路島で倒壊事故を起こした風車は、前述の通り2002年に設置されたものであり、「日本型風力発電ガイドライン」ができるより前だった。

経済産業省では「風力発電設備の工事計画審査」についての見直しも図っているが、その作業が行われたのは2016年度のことだ。倒壊した風車も、建築基準法と電気事業法に従っていたというが、今日からみれば緩い基準だったと言わざるを得ない。なお、電気事業法についても、現在、「風力発電設備の技術基準」改定に向けて検討が進められている。

風力発電設備の安全性に関する4つの指示

経済産業省は淡路島の倒壊事故を踏まえ、事業者に対して、風力発電設備の安全性に関する4つの指示を発している。ぜひ、徹底してほしいところだ。

1.改めて技術基準への適合性を確認し、不適合のおそれがある場合には必要な処置を行うとともに、速やかに産業保安監督部に報告する。

2.台風の接近等による影響が見込まれる場合には、安全対策に万全を期す。万一、風車が倒壊した場合に備え、周辺への人の立入りを防止するような対策を講じる。

3.日常点検や定期点検で設備全体の健全性を確認する。基礎と支持物の接合部および基礎の構造については設計図と照らし合わせる。運転開始から10年以上経過した風力発電設備は、とくに慎重に確認する。

4.風力発電設備の設計図書等を確認し、「支持物と基礎の構造」が図1、2、3、その他のいずれに該当するかを、産業保安監督部に速やかに報告する。

風力発電設備の支持物と基礎の構造例

①支持物(タワー)
②アンカーボルトまたはアンカーリング
③基礎(ペデスタル)
④基礎(フーチング)

 


取材・文/廣町公則

SOLAR JOURNAL vol.27(2018年秋号)より転載

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