まるで蓄電池! 米国で注目される電力シェアモデル
2018/07/04
現在米国では、地域で電力を共有・所有する「コミュニティ」モデルが広がっている。その中のひとつ「コミュニティ・エネルギー貯蔵」システムは、「デマンドチャージ」というアメリカの料金システムの影響を抑制し、手軽に電気料金を下げられるという。このシステムは、今後どのように導入拡大されていくのだろうか?
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従来のオペレーションのまま
デマンドチャージを大幅削減
米国では主に非住宅用(商業ビルや工場など)の電力需要家には、「デマンドチャージ」という料金制度が従量料金にプラスされる。
デマンドチャージは「最大kW需要電力」で、ユナイテッド・パワーの場合、15分単位で計量された電力需要のうち月間で最も大きい値がその月の最大需要電力となる。
マリッザ氏によると、現在の同電力会社の非住宅用電力需要家に課されるデマンドチャージはkW当たり$17.5であり、デマンドチャージは同社の非住宅用電力需要家の月々の電力料金の約50%を占めるそうだ。
例えば、工場のモーターなどのように立ち上がりに大きな電力を必要とする機器がスタートすると、電力需要が大きく跳ね上がり、それに対して課金される。工場やビルなどは、蓄電池を組み合わせてデマンドチャージの抑制を図ることができるが、各社で蓄電池を導入するのは経済的に難しい場合がある。
そこでコミュニティ・エネルギー貯蔵のニーズが生まれる。電力需要家は大きな初期投資なしで、kW単位でコミュニティ・エネルギー貯蔵を使用できる。そして、あたかも自社に蓄電池を導入しているかのように、月々の最大需要電力を下げ、電気代を削減できる。
コミュニティ・エネルギー貯蔵を活用した、デマンドチャージ抑制のイメージ
マリッザ氏は、「商業ビルや工場などの電力需要家にとって、ピーク需要を下げるのはそう簡単なことではありません。しかし、コミュニティ・エネルギー貯蔵を使用することで、従来のビジネスオペレーションを変えずに、手軽に電力料金を下げられます。
ビジネスに柔軟性が得られるのです。さらに、我々電力供給事業者にとって、各電力需要家の負荷パターンを管理するより、全体の負荷パターンを管理する方が全く簡単です。」と語った。
コミュニティ・エネルギー貯蔵に電力需要の低い深夜に充電した電力をピーク時に放電することにより 、電力需要家は電気料金削減、そしてユナイテッド・パワーは配電網全体のピーク需要を削ることによって、グリッドの信頼と効率度を高められるだけでなく、電力卸市場からピーク時の電力購入を削減することができる。
コミュニティ・エネルギー貯蔵のように、参加者が所有権と利点をシェアする「参加型モデル」の導入拡大には、蓄電池の多様な機能を正当に価値化できる政策・規制が必要になってくる。
文/モベヤン・ジュンコ
『SOLAR JOURNAL』vol.25より転載