住宅用太陽光と蓄電池をどう提案するのか 「停電の夏」から「GX ZEH元年」の今、求められる住宅像とは
2026.11.06
住宅用太陽光と蓄電池の提案は次の段階に入った。初期投資支援スキームの導入から1年が過ぎ、2027年4月には新たなZEH定義「GX ZEH」の適用も始まる。そして相次いだ停電は、非常時に電気を確保できることの価値を改めて示した。蓄電池はもはや「あれば安心」のオプションではなく、太陽光とセットで備えるべき設備になりつつある。
停電時の蓄電池の意義と
非常用電源としての留意点

出典:アメダス
2026年9月、台風25号の豪雨により、千葉県を中心に大規模な停電が起きた。この台風による停電は、東京電力パワーグリッドの管内で最大約6万2700軒に及んだ。
その背景には大雨そのものの増加がある。気象庁によれば、1時間降水量50mm以上の大雨の年間発生回数は、統計を取り始めた1976〜1985年の平均226回から、2015〜2024年は平均334回と、約1.5倍に増えている。豪雨や台風による停電は、いつどこで起きてもおかしくない。
太陽光発電は、停電時でも発電している間は電気を使える。ただし、太陽光単体の自立運転では、給電は専用のコンセントに限られ、使える電力にも上限がある。そして何より、日が落ちれば発電は止まり、雨天や曇天が続けば発電量は大きく落ちる。
蓄電池は、この空白を埋める。昼間に発電した電気をためておけば、夜間も照明や通信機器、冷蔵庫などへの給電を続けられる。停電が長引いても、日中に充電し、夜間に放電するという運用を繰り返せば、最低限の暮らしを維持できる。蓄電池への関心が、改めて高まっている大きな要因だ。
だが、「蓄電池があれば安心」と安易に言うことはできない。蓄電池を備えていても、自立運転への切り替え方が分からず、すぐに電気を使えないことがある。また、特定負荷型では、給電対象外の回路につながるエアコンや洗濯機などは使えない。蓄電池の導入を提案する事業者にとっては、少なくとも次の点を顧客と確認しておくことが重要となる。
●給電の範囲:全負荷型は住宅全体に、特定負荷型はあらかじめ選んだ回路だけに給電する。特定負荷型の場合は、どの部屋のどのコンセントが使えるのかを、図面で示して共有しておく。
●出力の上限と200V対応:蓄えた電力量が十分でも、停電時に同時に使える電力には上限がある。200Vの機器がある場合は、対応しているかも確かめる。
●切り替えの方式:停電時に自動で自立運転に切り替わるのか、ブレーカーや切替スイッチの手動操作が必要なのか。
●非常用の残量設定:平常時の放電下限の設定を低くしすぎると、停電時にすぐ電気を使えない場合がある。災害に備えて常に残しておく容量をどう設定するかを決めておく。
●使える時間の目安:停電時に動かしたい機器の消費電力から、蓄電池の残量で何時間使えるかを試算して示す。
初期投資支援期間中も
売電よりも自家消費

資源エネルギー庁
停電への備えは、蓄電池の価値の一面にすぎない。蓄電池導入の最大の目的は、電力会社から購入する電気を減らし、電気代を削減することとする家庭が多い。当然、太陽光発電設備があることが前提だ。
住宅用太陽光の場合、発電した電気はFIT制度を使って売電するのが一般的だ。FIT制度のもとでは、余剰電力を国が定める調達価格で10年間買い取ってもらえる。その価格は認定を受けた年度ごとに決められ、10年間を通して同額での買取りとされてきた。
2025年度下期からは、この仕組みが大きく変わった。FIT期間の10年間を、運転開始から4年目までと、5〜10年目までの2期に分け、前期の買取価格を高く、後期を安くした。これは「初期投資支援スキーム」と呼ばれ、太陽光を設置する家庭にとっては、投資回収の早期化が期待できる。太陽光の導入を提案するにあたっては、追い風となるものだ。
このスキームにおける買取価格は、前期が24円/kWh、後期が8.3円/kWh。この価格は同スキーム開始時の2025年度下期から変わらず、2027年度も同額の予定だ。前期の24円/kWhは、それまでの価格が15円/kWhだったことを考えると、前期の24円/kWhがいかに高いか分かる。
とはいえ、「売電」と「自家消費」で比較した場合、前期のFIT価格(24円/kWh)であっても売るより使った方がお得だ。例えば、東京電力エナジーパートナーの従量電灯Bでは、最も安い第1段階でも電力量料金は20.80円/kWhで、これに再エネ賦課金(4.16円/kWh)を加えると、買電価格は約25円/kWhになる(2026年10月時点)。これは買取価格より高いので、発電した電力を自家消費して、その分だけ買電量を減らした方がコストメリットは大きい。5年目に売電単価が8.3円/kWhへ下がれば、売らずに使う意味はさらに大きくなる。
とはいえ、太陽光の発電は昼間に限られ、家庭の電力需要は朝夕と夜に厚い。昼間に使い切れない余剰を夜に回せなければ、自家消費率には限界がくる。給湯や家電の運転を昼間に寄せる工夫と並んで、その限界を超える決め手となるのが蓄電池だ。
FITの初期投資支援を生かすことと、自家消費を軸に運用を組み立てることは対立しない。前半の売電収入で初期投資の回収を早めつつ、蓄電池を前提に自家消費率を高める設計を最初から組み込み、5年目を電力収支と運転設定を見直す節目として共有しておく。いずれにしても、蓄電池を提案の視野から外さないことが出発点になる。制度の利用を目的化せず、家ごとの条件に応じて運用を設計することが肝要だ。
蓄電池の導入を支援する
国の補助制度も活用
蓄電池を提案するうえで避けて通れないのが、導入費用の問題だ。太陽光の売電にはFITという支援制度があるが、蓄電池にはそれに当たる制度はない。代わりに検討したいのが、導入時の費用に対する補助だ。
国の代表的な制度が、経済産業省の「家庭用蓄電システム導入支援事業」である。電力の需給調整に活用できる家庭用蓄電システムを新たに導入する個人などを対象に、機器代と工事費を補助する。ただし、2026年は3月24日に公募が始まり、5月20日には申請額が予算に達して終了している。
省エネリフォームでは、国交省と環境省の「みらいエコ住宅2026事業」があり、蓄電池が「エコ住宅設備」の一つとして補助対象になっている。ただし、登録された製品であることに加え、開口部や躯体の断熱改修など、事業が定める工事と併せて行うことが条件で、蓄電池だけを設置する工事は対象にならない。
このほか、自治体のなかにも蓄電池の導入を独自に補助するところがある。国の補助が締め切られた後でも、自治体の補助が使える場合はある。顧客の住む自治体の制度を調べ、国の制度と併用できるかどうかも確かめたうえで、補助を織り込んだ提案を組み立てたい。
来年度に向けては、経済産業省が2027年度予算の概算要求で「再生可能エネルギー導入拡大に向けた分散型エネルギーリソース導入支援等事業」などを提示している。ただし、家庭用蓄電池への補助がどの規模で、いつ公募されるかは、予算の成立を待たなければ分からない。
もっとも、補助金はあくまで上乗せと位置づけたいところだ。提案の土台は、自家消費による電気代の削減と停電への備えに置く。そうしておけば、予算が締め切られた後でも商談は崩れない。
取材・文/廣町公則
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