「国の導入目標設定が必要」日本における蓄電池事業拡大に向けた5つのポイント|自然エネルギー財団

再生エネルギーが導入されるも不確実性は否めない。その不安定さを補うのが蓄電池だ。今後事業を拡大していくために論点を整理し、課題を解決する必要がある。本シンポジウムでは、(公財)自然エネルギー財団の工藤美香氏が、日本と世界の現状を踏まえて同財団が5月に公表した政策提言を紹介した。記事ではその様子をレポートする。

 

蓄電池への関心は急速に高まっているも
課題は多い

(公財)自然エネルギー財団の工藤美香氏

再生エネルギーの導入と蓄電池は密接に関係している。これまで送電線の需給調整は、火力・水力発電、ディマンドレスポンス、連系線による広域運用や、出力抑制によっていたが、そこに蓄電池を加えることができる。送配電網の混雑を緩和し、送電投資の節約が期待できるほか、周波数制御や電圧維持への寄与、非常用電源やブラックスタートにも対応できる点が魅力だ。

工藤氏は「国際再生可能エネルギー機関によると系統用及び自然エネルギー併設型蓄電池の単年度導入量は世界で拡大傾向にある」と述べた。これは2010年以降EVの普及などによってリチウムイオン蓄電池の価格が大幅に下落し、プロジェクトコストが10分の1まで圧縮していることが影響しており、蓄電池の導入量も倍々で増加し続けているという訳だ。さらに工藤氏は「国際エネルギー機関発表のデータでは2024年の導入量200GWに対し、2035年には1600GWと8倍の見込みとなる」と指摘しており、今後も増加傾向は続く。

しかし、蓄電池にも課題がある。主に定置用蓄電池の共通課題に着目するとコスト、経済安全保障の二面がある。材料費の価格動向への対応や、サプライチェーンの安定化といった課題だ。また騒音や火災の対策も必要だ。そのほか、グリッド・フォーミング(GFM)インバータへの期待や、天候対応等のリスクヘッジを鑑みて、海外では長期エネルギー貯蔵への関心が高まっていることが紹介された。

普及のために
明確な目標設定とアクションを

これら背景を踏まえ、同財団は主に系統用蓄電池を念頭にした政策提言を行った。政策を進めるにあたり、国の目標設定は重要である。現状蓄電池は太陽光発電や風力発電のように明確な国の目標設定がなく、工藤氏は「今後蓄電池事業を推進するにあたり、国の導入目標設定は必要」と語った。また系統用蓄電池及び自然エネルギー併設型蓄電池の最新導入量の情報公表も必要だ。

ここからは事業の詳細に対する提言を紹介していく。まず工藤氏からは系統接続への対応として5つの事項が挙げられた。

①系統接続の申込状況:推奨される立地や容量に関する最新情報の定期的な公表
②系統接続申請に際しての事業用地に関わる権利の厳格化:検討申込費用の増額とデポジット制度化の検討
③系統接続の審査において案件の優先順位を判断する仕組みの検討
④系統接続手続きの一般送配電事業者間の標準化や申込みのデジタル化
⑤順潮流におけるノンファーム型の接続ルールの迅速な導入も求められた。

である。

次に、市場運用・事業収益についても述べており、①市場メカニズムを尊重した予見可能性を損なわない形での需給調整市場の制度設計、②ネガティブプライス導入に向けた早急な検討の2つを提言した。その他、系統用蓄電池の設置や運用における地域配慮ガイドラインの策定やGFMインバータの認証基準、系統連系ルールの策定と、慣性を調達する枠組みの検討なども必要なことだと語った。

政策動向は常に注視
事業者の参加姿勢が求められる

蓄電池は国内で後発の電源であり、対策が後手にある。しかし、今後の自然エネルギーの普及には欠かせない電源だ。今後は政策動向を見守り、関係機関などは強く提言していく必要があるだろう。事業者も自分ごととして動向を注視してほしい。

DATA

【シンポジウム】系統用蓄電池市場の健全な拡大に向けて

問い合わせ

公益財団法人 自然エネルギー財団


取材・文/ソーラージャーナル編集部

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