再エネは未来への貯金 再エネ投資を前向きに捉える
2018/03/12
最近、再エネ発電促進賦課金で電気料金が上がっていることについて、国民負担が増えているのではないかという議論がある。再生可能エネルギーと原発にかかるお金について、NPO法人環境エネルギー政策研究所の飯田哲也氏に話を伺った。
空き容量ゼロが招く
過大な連系工事負担金
最近、色々なメディアに系統の空き容量ゼロ問題が取り上げられるようになりました。これは、火力や原子力など既存電源の電気が送配電ネットワーク(系統)の容量を優先的に抑えていることに加え、固定価格買取制度(FIT)で再生可能エネルギーが急速に普及したことで、すでに再エネの電気を系統に入れる余地がないと電力会社が主張している問題です。
きっかけは九州電力の受け入れ保留でした。その後、接続可能量を超えた接続に関しては出力抑制を無制限・無補償にするという系統新ルールが始まり、一気に再エネへの締め付けが厳しくなりました。しかし、京都大学の安田陽教授が東北電力の事例で指摘しているように、実は枠を抑えているだけで実際に使っている容量は少なく、まだ空き容量はあるのです。系統の混雑を調整する想定潮流の合理化など、いわゆる日本版コネクト&マネージも議論されており、解決方法はいくらでもあります。
また、売電するには発電所を電力会社の系統に接続しなければなりません。ただ容量が不足しているため、電力会社が系統増強の負担を事業者に求めています。それで連系工事負担金が高額になっているのも問題です。例えば3億円程度の1メガソーラー事業に対して6億円ものとんでもない負担金を請求するような問題が全国で頻発しています。これに関しては、薄く広く一般負担する「受益者負担原則」に見直すべきなのですが、今は再エネ事業者側に負担が偏る「原因者負担」となっています。
再エネは未来への貯金
原発は過去に向かう負担
最近、再エネ発電促進賦課金で電気料金が上がっていることについて、国民負担が増えているのではないかという議論もたしかにあります。ただ、お金の性質を単に高い、安いで捉えるのではなく、前向きな貯金なのか、それとも後ろ向きな負担なのか、そこに大きな違いがあることを認識しなければなりません。
再エネの中でも特に太陽光発電が普及しましたが、これは未来に向けた貯金です。同じ1円の負担でも、FITの負担は段階的に下がっていきます。15〜20年は負担しますが、例えば太陽光は2012年の開始時点の42円から、5年間で10円台まで下がる見込みです。過去の負担といっても、20年すれば消えていきますし、普及すれば導入コストはもっと安くなり、そうなればもっと太陽光発電が普及して電気料金も下がっていくという、あくまで過渡的な負担です。
どの国も回避可能原価を下回りつつあるくらいで、日本はまだFITは高いですが、ほとんどの国では追加負担はありません。例えば、サウジアラビアでは1kWh当たり約2円になっています。
一方で、原子力発電は、福島第一原発事故による福島県への損害賠償、事故処理負担もみんな電気の託送料金に乗っていることはお気づきでしょうか。あれは過去に向かっての負担でしかなく、使い終わった設備への捨て金なのです。お金の向かっている先が真逆ですし、やはり電気料金が高いか、安いかだけの議論は全くナンセンスなのです。
プロフィール
認定NPO法人 環境エネルギー政策研究所(ISEP) 所長
飯田哲也氏
自然エネルギー政策の革新と実践で国際的な第一人者。持続可能なエネルギー政策の実現を目的とする、政府や産業界から独立した非営利の環境エネルギー政策研究所所長。Twitterアカウント→@iidatetsunari
取材・文/大根田康介
『SOLAR JOURNAL』vol.24より転載