森林所有者と林業経営者をつなぐ「森林経営管理制度」のメリットは?
2018/10/19
管理が行き届いていない森林について、市町村が仲介役となることで管理体制を保つ新システム「森林経営管理制度」。来春よりスタートするこの制度の狙いとは?
森林所有者・経営者・市町村
それぞれに多様なメリット
森林経営管理制度の導入により、市町村・森林所有者・林業経営者それぞれに多様な効果を期待することができる。
例えば、市町村にとっては、経営管理されずに放置されていた森林が経済ベースで活用され、地域経済が活性化するというメリットが挙げられる。また、荒廃した林の解消や伐採後の再造林が促進され、土砂災害等の発生リスクが減り、地域住民の安全・安心に寄与するとも考えられる。
森林所有者にとっては、市町村が介在してくれることにより、長期的に、安心して所有森林を任せられる。また、意欲と能力のある林業経営者に、所有森林の経営管理を委ねることで、所有森林からの収益の確保が期待できる。
林業経営者にとっては、多数の所有者と長期かつ一括した契約が可能となり、経営規模の拡大や雇用の安定につながる。さらに、これまで手がつけられなかった所有者不明の森林も整備可能になるので、間伐等の施業や、伐採した木を運ぶための林道等の整備も効率的に実施できる。
林業の成長産業化という大目標とともに、ステークホルダーそれぞれに旨味のある新制度といえそうだ。
「森林経営管理制度」の狙いは?
「森林経営管理制度」の狙いは、経営管理が行われていない森林について市町村が仲介役となり、森林所有者と林業経営者をつなぐことだ。
出典:林野庁
疑問と回答
林野庁では、森林経営管理制度に寄せられた疑問と回答を公表している。以下、その一部を要約し紹介する。新しい森林管理システムを理解する糸口にもなるものだ。
Q.これまで経営管理してきた所有者から森林を取り上げるのか?
A. いいえ。現在、経営管理されている森林はこれまでどおり、森林所有者による経営管理を支援することとしており、取り上げる(経営管理権を設定する)ことはありません。新たな制度では、現在経営管理が行われていない森林が対象となります。
Q.市町村の方針に所有者が同意しなければ、強権的に経営管理権が設定される措置なのか?
A. いいえ。森林所有者の意向を無視して、経営管理権を設定するものではありません。所有者が不同意の場合の手続の特例は、森林の経営管理が行われていないにも関わらず、所有者の意思表示がない場合などに限られます。
Q.経営管理実施権は、大企業にしか設定されないのか?
A. いいえ。経営管理実施権の設定を受ける林業経営者は、森林所有者や林業従事者の所得向上につながる高い生産性や収益性を有するなど、効率的かつ安定的な林業経営を行うことを目指す者としており、経営規模の大小は問いません。
取材・文/廣町公則
SOLAR JOURNAL vol.26(2018年夏号)より転載