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農水・経産省が進める「地域内エコシステム」とは?

森林資源について「地域住民や山林所有者など森林関係者に、確実に利益が還元される仕組みでなければなりません」と語るのは、林野庁の玉置氏。木質バイオマスの普及が進む一方で、地域の資源である森林を持続的に活用し続けるための仕組みが必要だと話す。林野庁が描くその仕組とは?

地元に利益を還元する
「地域内エコシステム」

FITによって、間伐材由来の木質バイオマス発電は普及の途についた。一方で、地域の森林資源を持続的に活用していくための仕組みづくりも求められるようになってきている。

これについて農林水産省と経済産業省は、2016年10月に共同で研究会を立ち上げた。地域の森林資源を地域内で有効活用する地産地消型の持続可能なシステムを「地域内エコシステム」と呼び、実証・普及に向けた取組を進めているのだ。

「地域内エコシステムが重視しているのは、地域への利益還元を最大限に確保することです。地域住民や山林所有者など森林関係者に、確実に利益が還元される仕組みでなければなりません」と玉置氏。

ここで想定されているものは、FITによる売電収益だけでなく、より幅広いバイオマス利用にある。たとえば、集落を対象とした小電力の供給システムを開発し、系統接続しないシステムを構築する。あわせて、地域住民が利用する公共施設(温浴施設・福祉施設・公営住宅等)など、熱利用の安定的な需要先を行政が中心となって確保する。そうした取り組みを通して、効率の良い熱利用や熱電併給を推進していく考えだ。

玉置氏も、「熱利用・熱電併給は、小規模な施設であっても80%程度のエネルギー変換効率を実現することが可能であり、初期投資も少なくて済むことから、小さな地域でも導入しやすい形態なのです」と、売電以外の展開に期待をかける。同時に、「地域への利益還元には関係者による十分な検討、体制整備が必要」とのことで、各種支援を講じることにしている。

林野庁は、昨年11月に「木質バイオマス熱利用・熱電併給事例集」を公開した。全国各地の先行事例39件が紹介されているので、参考にすると良いだろう。木質バイオマス利用の多様な可能性を感じることができるに違いない。

熱電併給で地域活性化
群馬県上野村の場合

上野村森林組合や地元業者が低質材をペレット工場へ搬入し、ペレット化。村内の温泉施設のボイラーや、公共施設・住宅のストーブの熱源に。「きのこセンター」に併設されたバイオマス発電施設により、熱電併給も行っている。

林野庁「木質バイオマス熱利用・熱電併給事例集」より

プロフィール

玉置 賢氏

農林水産省林野庁林政部木材利用課長

1994年農林水産省入省(林野庁配属)。水田農業政策、農地政策、畜産政策、消費安全政策、農業の担い手政策等を担当。 また、新潟県川西町(現十日町市)、宮崎県庁等に出向。2016年8月より現職。


取材・文/廣町公則

『SOLAR JOURNAL』 vol.24より転載

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