自治体の電力入札 大手「取戻し」大半、価格重視のあり方が問われる
2019/11/20
パワーシフト運営委員会の「自治体の電力調達の状況に関する調査」報告書によれば、多くの自治体の本庁舎への電力供給が、大手電力に戻りつつあるという。一方で今年8月、東京都庁は再エネ100%電力へ切り替えた。今、価格重視の入札方式のあり方が問われている。
40の自治体・14の都市が
電力入札で大手電力から調達
11月5日、パワーシフト運営委員会は「自治体の電力調達の状況に関する調査」報告書を発表した。パワーシフト運営委員会とは、再生可能エネルギーの普及を後押しするNPOの集合体で、国際環境NGO FoE Japanが事務局団体となっている。この報告書は、一橋大自然資源経済論プロジェクト、朝日新聞、環境エネルギー政策研究所(ISEP)と共同で、各都道府県と政令指定都市の本庁舎への電力供給について調査したものだ。
自治体の電力調達においては、一般競争入札が望ましいとされており、多くの自治体で実施されている。その結果、特に2016年頃までは新電力の落札が多く、入札そのものも活況だった。
しかし、2017年頃から大手電力による落札が増え、報告書によれば約半数に上るという。47都道府県のうち、今年度の本庁舎の電力を大手電力から調達している自治体は40に上る。20政令指定都市においては、14の都市が大手電力から調達を行っている。
「総合評価方式」の導入
求められる価格以外の評価
現在、電力調達の一般競争入札においては、環境配慮契約法の基本方針に基づき、「裾切り方式」が多く採用されている。「裾切り方式」とは、温室効果ガス削減の観点から、入札参加資格を設定し、基準値を満たした事業者の中から価格に基づいて落札者を決定する方法だ。
この基準値が厳しく設定されていれば、温室効果ガス排出の多い小売電気事業者は入札対象から除外される。しかし現状では、入札参加者数が減り入札不調に終わることを避けるため、厳格な基準が設けられている場合は少ない。そのため、最終的な判断基準が価格となるケースが多いという。今後も「裾切り方式」による価格重視の入札が続けば、規模の小さい自治体新電力などは、そのシェアをさらに奪われかねない。
一方で東京都は、今年6月の都庁第一本庁舎の電力入札において、価格以外も考慮する「総合評価方式」による入札を実施した。再生可能エネルギー100%の電力を供給することを評価基準とし、日立造船が落札した。落札価格は約6.3億円で、最安値の事業者よりも2,000万円以上高かったという。
同報告書は「環境配慮や再生可能エネルギー、地域の新電力会社などを考慮した、総合的な観点からの調達が望まれる。自治体新電力の設立も有効な手段であり広がりを期待する」という提言で締めくくられている。
DATA
文/山下幸恵