個人の電力データ「情報銀行」スキームで管理 防災や事業活動に活用へ
2019/12/10
資源エネルギー庁は11月20日、「持続可能な電力システム構築小委員会」の第2回会合において、個人の電力データを災害対策や商業活動に活用するため方針を固めた。情報管理は、専門性の高い中立的な組織「情報銀行」などで一元的に行う案が出された。個人情報である電力データの取扱いに注目が集まる。
個人情報取扱に新スキーム
「情報銀行」には2社が登録
これまで、資源エネルギー庁の「持続可能な電力システム構築小委員会」等では、災害対策などの社会課題解決のため、スマートメーターを通じて提供される各家庭の電力使用状況のデータ活用について議論が重ねられてきた。
電力使用データをもとに時間帯別の人口動態を把握することで、避難所の設置計画や避難物資の配置計画など、自治体にとっては高度な防災計画が立案可能となる。また民間企業においては、運輸業の運送効率の改善や小売・サービス業の出店企画などへの活用が期待されている。
一方で、電力使用データは個人情報でもあることから、消費者保護のための仕組みが不可欠だ。これまで個人情報保護のスキームとして、先行する「情報銀行」の事例が議論されてきた。
「情報銀行」とは、個人の同意またはあらかじめ指定した条件に基づき、データを他の事業者へ提供する事業だ。 総務省と経済産業省によるガイドライン「情報信託機能の認定に係る指針ver1.0」に基づき、一般社団法人日本IT団体連盟の認定を受けた者が「情報銀行」として登録される。認定にあたっては、損害賠償請求に対応できる法人格であることや法令の遵守、情報セキュリティやプライバシーに関して十分な人的体制があるかなどが要件となる。
2019年12月現在、 三井住友信託銀行株式会社の「『データ信託』サービス(仮称)」と、フェリカポケットマーケティング株式会社の「地域振興プラットフォーム(仮称)」の2社が登録されている。
膨大な個人の電力データ
中立組織が情報管理、監督へ
これまでの日本の電力システムにおいては、エリアごとに存在する複数の送配電事業者による個人の電力データ等の目的外使用は規制されてきた。しかし、個人の電力データは商業活動などに応用できる可能性が高く、イノベーションにつながると期待されている。このため、国は需要家保護と情報の適正利用に十分配慮しながら、個人の電力データを活用していく方針だ。
11月20日に開催された「持続可能な電力システム構築小委員会」の第2回会合においては、個人の電力データの活用についても、この「情報銀行」のように専門性の高い中立的な組織が情報管理を行う方向性が示された。この中立的な組織においては、同意や取り消しのプラットフォームや需要家からの苦情などの受付窓口を提供し、また情報の適正利用の監視やルールの策定を行う予定だ。さらに、国がこの組織の監督を行うとされた。
有人の電力検針から、全国で切り替えが進みつつあるスマートメーター。家庭や事業所等の電力使用データを、ほぼリアルタイムで提供できるため、そのビッグデータの活用こそが存在意義とする見方もある。一方で、電力データは個人情報でもあり、その取扱いには細心の注意が必要だ。中立的な組織と国の監督体制が適切に機能することを期待したい。
DATA
文/山下幸恵