有資格者の高齢化による人材不足が加速! 電気保安業界を救う「中間報告」とは
2019/12/12
2019年9月から3回にわたって開催されてきた「電気保安人材・技術ワーキンググループ」。有資格者の高齢化や人材の確保、AIやドローンを活用した新たな保安のあり方について議論が進められてきた。11月25日第3回目の会合が開催され、「中間報告」が発表された。
保安人材の確保、急務
30年には2千人以上が不足
11月25日に発表された「中間報告」では、2019年9月から3回にわたって開催された同ワーキンググループのとりまとめとして、保安人材をめぐる課題への対応策がスケジュールとともに明示された。
保安の対象である電気工作物が増加する一方で、有資格者の高齢化や保安業界への入職者数の減少により、将来的な人材不足が見込まれている。同ワーキンググループの資料によると、2030年には、50kV未満の電気工作物の保安ができる第3種電気主任技術者だけでも約2,000人が不足し、全体の1割に及ぶと予測している。50kV以上の保安ができる第1種・第2種電気主任技術者まで含めると、さらに多くの人材不足が予想される。
こうした課題への対策として、今回の「中間報告」では、4つの方針が打ち出されている。「電気保安人材の確保」「電気保安のスマート化」「電気保安における規律の確保」「災害時における電気保安人材を巡る課題と対応」だ。
スマート化で効率的な保安を
国の直接指導による強化も
保安人材の確保策としては、実務経験年数の見直しと入職促進に向けたプロモーション活動が行われる。現在、保安業務を外部受託するのに必要な実務経験年数は3年から5年だ。研修などを通して、技術レベルを維持しながらこの経験年数を短縮し、外部受託できる人材の増加を目指す。また、電気保安業務のさまざまな魅力を盛り込んだWEBサイトを年内に開設する。
さらに、保安のスマート化に資する新技術については、効率化の効果の調査からスタートするとされた。この調査結果次第で、現在の電気主任技術者の業務量を決める「持ち点制度」の見直しが検討される。
外部委託を増やす動きがある一方で、国が受託者を直接指導できるようにする保安の規律の確保についても見通しが示された。現在、国が関与できるのは設備の所有者である委託者だ。国が関与する範囲を、実際に保安業務を行う受託者(電気主任技術者)へも広げることで、保安の質の向上を見込む。なお、今年の台風15号・19号によって顕在化された災害時における保安の課題については、引き続き検討とされた。
こうした対応策や検討の実施を踏まえ、2021年度以降、適宜制度の見直しを進める予定だ。
DATA
文/山下幸恵