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大企業も注目! 岐阜県のバッテリーシェアリング 「働こCAR」とは?

「EVレンタカー+ソーラーカーポート+新電力」で出来ること。岐阜県多治見市で始まった「バッテリーシェアリング」という取り組みが、いま全国から注目を集めている。それは若者の地元離れに歯止めをかけ、地域の課題解決にも役立つ、再エネビジネスの新機軸だ。

地域課題の解決を目指す
バッテリーシェアリング

焼き物のまちとして知られる岐阜県多治見市で、電気自動車(EV)を使った地域課題解決への取り組み「働こCAR」プロジェクトが進められている。「土と火に育まれた陶磁器産業には、温室効果ガスを多量に排出するという課題がある」(多治見市環境課談)。また、多治見市は「名古屋市のベッドタウンであり、多くの若者が市外に出て行ってしまうのが悩み」(同産業観光課談)だった。

働こCARが、こうした地域課題を解決する糸口になるというのだ。働こCARは、多治見市のエネファントが、バッテリーシェアリング事業として展開する新ビジネスの愛称。エネファントは、たじみ電力という地域新電力を運営するエネルギーベンチャーだ。多治見市も、市主催の「2019ビジネスプラン コンテスト」で同プロジェクトを表彰するなど、共同で進めていきたい考えを示している。


EVレンタカーで就業支援
カーポートで太陽光発電

ソーラーカーポートに設置されたパナソニックのEV充電器

バッテリーシェアリング「働こCAR」は、「電気自動車(EV)レンタル」+「太陽光発電設備付きカーポート」+「新電力事業」をパッケージにした、これまでにないビジネスモデル。

まず、エネファント(たじみ電力)が、若者を雇う地元企業と、1台月額39800円でEVのレンタカー契約を結ぶ。同時にエネファントは、その企業の駐車場に、太陽光発電設備とEV充電器を備えたソーラーカーポートを無料で設置する。そして企業は、新入社員を対象に、レンタルしたEVを貸与。EVを貸与された新入社員は、そのクルマを通勤や休日に使い、保険料を含むEV使用料として月額19800円を負担する。

ソーラーカーポートで発電した電気は、EVの充電に使われるとともに、たじみ電力の電源として用いられる。また、EVのバッテリーに蓄えられた電気は、状況に応じて、カーポートが設置された企業の電力としても活用される。働こCARは、地元企業、新入社員、地域社会それぞれにメリットをもたらす取り組みとなっているのだ。


若者が住み続けたくなる
活気あるまちづくりを

バッテリーシェアリング「働こCAR」のレンタカーシステム

レンタカー契約を結ぶ地元企業にとっては、若者を採用する際の大きなアピールになる。福利厚生の一環としても魅力的であり、離職率の低下にも結びつくだろう。万一、社員が退職した場合でも、EVはレンタカー扱いなので、無駄なく日割りで返却できる。また、EV充電器を装備したソーラーカーポートが、無料で設置されるというのも嬉しいところ。非常時の電源としても活用することができる。

新入社員にとって、月額19800円だけでクルマに乗り続けられるという金銭的メリットは大きい。EVだからガソリン代はかからないし、会社のソーラーカーポートに駐車しておけば、勤務中に充電しておいてもらえる。会社の通勤に使うことが必須条件だが、休日にプライベートで乗ってもOKだ。クルマでの移動が不可欠な地方都市の若者を、公私ともにサポートするものといえるだろう。

地域社会としては、若者の流出を抑え、地元就職を促すきっかけになる。若者が地元に根付けば、地域活性化の道も開けてくる。「若い人が楽しく生活し、働き、家庭を営むまちをつくるためには、住んでもらうことが大前提。現在の多治見市は、若い人が進学で一度出ていくと二度と帰ってこないまちになりつつある。多治見に住み続ける者として、何か行動を起こさなくてはと考え、このプロジェクトを立ち上げた」とエネファントの磯﨑顕三代表取締役は述べている。もちろん、ソーラーカーポートで発電した電気を、EVや地域の電源として余すところなく使えるので、温暖化対策としても期待できる。

EVへの充電を実演する、エネファントの磯﨑顕三代表取締役。

パナソニックや日産も注目
分散型電源のモデル事業に

元ガソリンスタンドを改装したエネファントの社屋は、地域のEV充電ステーションともなっている。

太陽電池モジュール、パワーコンディショナ、EV充電器にはパナソニック製が使われている。パナソニックとしては、「多治見市での取り組みは分散型電源を目指す都市のモデルになる。ここで実証を積み、次の企画にもつなげていきたい」(コミュニケーション部統合プランニング課・西川弘記氏)という。



レンタルするEVは、中古市場で日産リーフを調達する。エネファントを見学に訪れた日産自動車マーケティング部の渋田聡子主任は、「中古車部門と連係して応援体制を組んでいきたい」と話しており、今後両社の協業も期待される。

10月現在、多治見市内の約30社が「働こCAR」に協賛している。エネファントとしては、近年中に100台規模のレンタカー契約締結を目指していく考えだ。


撮影・取材・文/廣町公則

SOLAR JOURNAL vol.31(2019年秋号)より転載

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