編集部からのお知らせ

早稲田大、世界初の小売電力市場メカニズムを開発! 送配電網の最適運用へ

太陽光発電や蓄電池の登場によって、送配電ネットワークは複雑さを増している。その最適な運用は、日本だけでなく世界の課題だ。早稲田大学が、この運用をリアルタイムで最適化する画期的なメカニズムを開発したと発表。世界初の快挙に注目が集まる。

複雑化する送配電ネットワーク
小売電気市場の運用方策は世界初

送配電ネットワークでは近年、再生可能エネルギー発電や蓄電池など、分散型電源が急速に増えている。これは、ネットワークが構築された当初には想定されていなかったものだ。加えて、新規の小売電気事業者が参入し取引が活発化することで、電力の取引形態も複雑になっている。

実は、こうした状況は日本だけでなく世界でも問題視されている。分散型電源のような物理的制約を加味した小売電気市場の運用方策は、各国で模索されているところだ。

早稲田大学が5月25日に発表したのは、包括的な小売電力市場メカニズムの枠組み。前述した課題の解決につながる、世界初のシステムだ。複数の地点における電力量の変化や、小売電力市場の参加者の意思などを反映しながら、リアルタイムで最適な電力需給調整が可能となる。

このメカニズムは、経済分野の市場メカニズムと、システム制御分野の分散最適制御の理論を、電力分野に応用したものだ。同大学理工学術院の和佐泰明講師、内田健康名誉教授、米国マサチューセッツ工科大学のアヌラドハ・アナスワミ博士らの研究グループによって開発された。

今回発表された枠組みは、日本だけでなくアメリカの電力市場にも適用可能とされる。複雑化する電力マーケットの解決策として、大いに期待されている。


国内の実送配電データで検討
送配電網の“省エネ”になるか?

世界初とされるこの新技術について特筆すべき点は、実運用に展開しやすいところだ。検討に当たっては、日本に実際にある配電系統モデルを用いた。この配電系統モデルは、2017年に公開されたもので、当時の東京電力パワーグリッド、中部電力、関西電力が運用する実際の配電線データに基づいて構築された(参照:『配電系統モデルに地理情報を追加、早稲田大学が公開』)。

こうした詳細な検討の結果、電力の供給に合わせて需要を変化させるデマンドレスポンスを実施することで、電力消費量を約5%削減できることが明らかになったという。つまり、送配電ネットワークの運用次第で、消費する電力量を低減でき、大きなエネルギーの節約につながるといえる。

今後は、日本の制度により適したメカニズムにするため、実証実験などを通してエビデンスを蓄積する予定だという。国内はもちろん、海外の電力システムにも適応できる画期的なメカニズムへの眼差しは熱い。


DATA

早稲田大学プレスリリース:包括的な小売電力市場メカニズム開発


文:山下幸恵(office SOTO)

関連記事

太陽光関連メーカー一覧

アクセスランキング

  1. 【受付中】9/3(水)開催!注目の系統用蓄電池に特化した、投資家・金融向け「グリーン投資戦略セミナー」...
  2. 積水化学工業がペロブスカイトを量産化! 2030年にはGW級の製造ライン構築を目指す...
  3. 「ANDPAD受発注」の導入で業務を効率化!施工品質のさらなる向上を目指す
  4. 【北村和也さんコラム】全国規模で広がる出力制御 その見通しと対応策を解説する...
  5. ハンファジャパン、「N型バックコンタクト」で新境地を拓く! 日本の屋根に寄り添った「全方位進化」とは?...
  6. 北海道釧路市「ノーモア メガソーラー宣言」 10kW以上の事業用太陽光発電を許可制へ...
  7. 【参加受付中!】2025年9月12日(金)「第35回PVビジネスセミナー」
  8. HUAWEI 新型蓄電システム、3機種を一挙公開 産業用・住宅用ともに「安全性」を徹底追求...
  9. 世界の平均気温が史上最高を記録、目の前に迫る温暖化の危機
  10. 『SOLAR JOURNAL』最新夏号8/1発行!《再エネ 主力電源へ》
広告お問い合わせ 太陽光業界最新ニュース

フリーマガジン

「SOLAR JOURNAL」

vol.54 | ¥0
2025/8/1発行

お詫びと訂正

ソーラー電話帳 SOLAR JOURNAL メディアパートナーズ