世界白書が熱・運輸交通分野での再エネ停滞に警告 「化石燃料すべてのロックダウンが必要」
2020/09/08
世界の自然エネルギー普及を目指すREN21が、2020年版「自然エネルギー世界白書」を公表。自然エネルギーの進展は電力分野に偏り、熱・運輸交通分野の遅れを厳しく指摘した。パリ協定の目標を達成するための道のりは、たやすいものではない。
コロナによる排出減は続かない
熱・運輸交通への風当り厳しく
「自然エネルギー世界白書2020」が6月16日に発表された。国際的な自然エネルギー政策ネットワーク組織・REN21が毎年発刊しており、世界で最も包括的で多くの著者による共同著書といわれている。2020年版では350人以上の著者によって執筆された。
「自然エネルギー世界白書2020」は、自然エネルギーの進展がいまだに不十分だと指摘している。世界の最終エネルギー総需要は、2013年から2018年まで毎年1.4%ずつ増加。新型コロナウイルス・パンデミックによる、2020年のCO2排出量の減少は一時的なものと位置づけた。パリ協定の目標を達成するには、最低でも年7.6%の削減を今後10年以上継続しなければならないとしている。
とりわけ、熱分野と運輸交通分野への評価は厳しい。化石燃料による暖房や自動車の使用をやめるべきとし、両分野で自然エネルギーの普及が進まない原因を10年前から変わっていないと指摘した。さらに、化石燃料がもたらす負のコストは、全体で5.2兆米ドル(日本円で約560兆円)に上ると推定。大気汚染や交通渋滞、気候変動など考慮すると膨大な影響があるとした。
「エネルギー主権」がもたらす
費用対効果を高く評価
自然エネルギーによるプラスの影響については、従来型の経済刺激策よりも費用対効果が大きいと評価。CO2排出量や大気汚染の減少だけでなく、雇用の創出につながるとしている。市民や地域がエネルギーに対する権利を取り戻す「エネルギー主権(energy sovereignty)」がコミュニティに自立をもたらすとし、近年広まりを見せる地球規模の気候ストライキを評価した。
REN21とは、2004年にドイツ・ボンで開かれた国際会議を受けて結成された自然エネルギー政策ネットワーク。再生可能エネルギーの開発を支援し、加速させることを目的とする。世界中の再生可能エネルギーに関する情報を収集、統合し、信頼できる情報を発信し続けている。国際エネルギー環境エネルギー政策研究所(ISEP)所長・飯田哲也氏が理事を務める。
DATA
文:山下幸恵(office SOTO)