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「再エネ主力電源化時代」を先取りして俯瞰する【後編】~あふれる再エネの必要性~

求められる
“溢れんばかりの再エネ”

かくして、国内企業、財界、もちろん、「2050年二酸化炭素排出実質ゼロ宣言」表明が相続く自治体も含め、再エネ電力を求める声がより広く高くなることは間違いない。2020年は新型コロナの年だけでなく、再エネへの転換点として記憶されるであろう。

言葉を選ばずに言えば、再エネ電力は現状から考えてみれば、ありすぎて困ることはない。ドイツの目指す再エネ電力の考え方からつなげてみたい。

再エネ電源が80%となった2050年あたりのドイツでの再エネ施設の発電容量について、著名な研究機関フラウンホーファー研究所は400GWと想定しているという。日本の現状はVRE(太陽光+風力発電)の合計が60GW未満程度である。それでも各地で出力抑制がかかり、「これ以上入らない」が沸き起こっている。

容量市場導入の論理もそうであるが、日本では電力の過不足を発電のオンオフだけで解決しようとする傾向が強すぎる。ドイツの2050年の想定では、年間の余剰電力が80TWh出るという。

一方、天候などの条件下で不足が3.3TWh出るが、瞬間的な不足容量は20GW程度とされる。再エネの容量分のすべてを別建てで用意する必要はないと考えられている。日本の発電施設容量の合計250GWに対して、容量市場の最初の入札で180GW分を求めたことの異様さがわかる。

電力の余剰を
今後どう利用していくのか

電力の過不足の調整は、バックアップ電源だけでなく、蓄電池、DRなどの電力内部の調整に限らず、様々な柔軟性で解決できる。
代表的かつ、今流行りの方法に、「セクターカップリング」がある。電気の余剰を考えたときには、大量に余った電気というエネルギーを熱や交通燃料という別のセクターに変化させて利用することを示す。

例を挙げてみよう。電気が余った時、温水に変えて使ったり貯蔵したりすることが、「電気⇒熱」のセクターカップリングである。発熱させるのに電熱線で水を沸かす単純な方法がドイツで実際に行われている。一方、デンマークでは、風力発電の余剰電力をヒートポンプで熱に変えている工場を視察した。通常、電力を使ったヒートポンプは高すぎると思われるが、ただ同然の風力発電余剰で採算が合うという。

一方、「電気⇒交通」は、そのままEVや水素に変えて燃料電池自動車(FCV)への利用もある。ドイツのあるシュタットヴェルケでは、風力発電の余剰から電気分解で水素を作り、天然ガスラインに混ぜて実際に家庭で使っている。
 
セクターカップリング実現のポイントもデジタル化にある。

複数の電源をあたかも一つの発電所として利用するVPP(バーチャル発電所)は、コントロール手段としてのデジタル化が必須である。セクター間での転換、融通が必要なセクターカップリングはさらに複雑な流れを持ち、その効率性を担保するためのデジタル化を要求する。

溢れんばかりの再エネ電力を持つ社会は、デジタル化をツールとしてより暮らしやすい近未来を形作るに違いない。そのためには、まず旧態依然としたベース電源至上主義から決別し、私たちの頭の中の柔軟性を確立しなければならない。

プロフィール

エネルギージャーナリスト。日本再生可能エネルギー総合研究所(JRRI)代表。

北村和也

エネルギーの存在意義/平等性/平和性という3つのエネルギー理念に基づき、再エネ技術、制度やデータなど最新情報の収集や評価などを行う。
日本再生可能エネルギー総合研究所公式ホームページ

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